表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀髪の猫はなにを願う  作者: 熊猫
第三部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

135/143

幕間『デート後の余韻』

挿絵(By みてみん)

帰り道:ファナ

 

街の石畳を歩くたびに、ブーツの音がカツンって響く。

メルがすぐ横を歩いてて、少し前を見てる。

私も、前を向くしかなくて。

でも頭の中は、さっきのことでいっぱい。

 

フィオナさんが言った。

「髪も尻尾も整えろ」って。

「可愛いって言われた」って。

なんであんなこと、平気で言えるんだろう。

なんであんな風に、何でも見透かしたみたいに言えるんだろう。

恥ずかしかった。

でも、嬉しかった。

 

だって、私――

獣人で、耳も尻尾も動いちゃって、

感情がバレバレで、

いつも恥ずかしくて、

人間みたいに隠せなくて。

「可愛いげは大事」なんて。

そんなの、知らなかった。

 

歩きながら、尻尾が少しだけ揺れる。

気をつけても、止まってくれない。

きっと、メルにはバレてるんだろうな。

 

さっき、メルが「尻尾飾り、探そうか」って言った。

本気で言ったのかな。

からかっただけ、じゃない気がした。

あの人、いつも冗談みたいに言うけど、

本当に優しいところ、見せてくるから。

 

横目でメルを見る。

少しだけ背が高くて、肩が頼りなくて、でも真っ直ぐな人。

……顔が熱くなる。

バレないように、また前を向く。

 

「……私、ちゃんとしなきゃ。」

「尻尾も、髪も。」

「気持ちも。」

フィオナさんが言ったみたいに、

“可愛げ”だって、大事かもしれない。

だって、みんなと一緒に生き残るんだもん。

置いてかれたくないし、守りたいし、笑いたい。

 

今日、歩けてよかった。

怖いのも、恥ずかしいのも、ぜんぶ、ちゃんと感じられた。

 

「……ありがとう。」

心の中で、小さく呟く。

メルに。

フィオナさんに。

みんなに。

そして、もう一度だけ横を見て、

ちゃんと前を向いて歩いた。

 

帰り道:メル

 

石畳の上を並んで歩く音。

ファナのブーツの音が、自分のより少し軽い。

耳と尻尾を気にしてるのが横目でも分かる。

さっきから、何度目だろう。

あいつが顔を赤くして、視線を逸らして。

分かりやすいにも程がある。

 

……フィオナ、やっぱり抜け目ない。

あんなにからかって、あんなに真剣に面倒見て。

「姉貴ポジ」って、あれは本音だな。

本当に見てる。

ちゃんとファナのことを。

仲間として、後輩として、同族として。

ちょっとだけ、悔しい。

でも、ありがたい。

 

ファナの髪が、さっきより綺麗に揺れてる。

尻尾も、さっきフィオナが整えたばっかりなのに、

もうバレバレに動いてる。

可愛いな、って。

思わないわけないだろ。

 

でも言うと怒る。

「やめて」って顔真っ赤にして。

だから今は、黙っておく。

 

あいつ、たぶん分かってないんだろうな。

自分がどれだけ真っ直ぐで、分かりやすくて、

どれだけこっちの目を惹くのか。

守りたくなるし、

からかいたくもなるし、

でも、傷つけたくはない。

 

……尻尾飾り、探してやるか。

別に義理じゃない。

買ってやりたいだけだ。

あいつに似合いそうなの、真面目に選んでやる。

あの時「了解」って答えたのは、

フィオナへの返事でもあるけど、

……ファナへの約束でもある。

 

ふと、隣を歩くファナがこっちを見た。

目が合う。

すぐ逸らす。

耳が伏せて、尻尾が揺れる。

ああもう。

本当に分かりやすい。

 

俺はちょっと笑って、前を向く。

声をかけたら怒るから、黙って歩く。

でも、ちゃんと隣にいる。

これくらいの距離感が、今はいい。

でも、そのうち――

 

「……尻尾飾り、選ぶ時はちゃんと見せろよ。」

心の中でだけ、言ってみる。

そして歩幅を合わせて歩き続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ