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銀髪の猫はなにを願う  作者: 熊猫
第二部

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第六十三章:選んだ未来

挿絵(By みてみん)

ギルドの重厚な木の扉をノックする音が廊下に響く。

中から返事もないまま、静かに軋む音を立てて扉が開く。

 

中は薄暗く、分厚い書類や地図が散乱した机の奥に、ギルド長が座っていた。

重い視線が、入ってきた6人を無言で切り取るように見据える。

 

ファナは一度喉を鳴らし、小さく深呼吸した。

メルが隣で微かに息を吐く音を聞き取る。

ギルド長がゆっくりと書類を閉じ、低く、抑えた声を落とす。

「……二人パーティー、四人パーティー。

 それぞれで動くという話は聞いている。

 だが、人手が足りない時はどうする。」

 

一瞬の沈黙。

 

メルが短く視線を上げる。

「その時は組む。」

ファナも真剣な目を向けた。

「……必要な時は、六人でアライアンスを組みます。」

 

ギルド長は視線を横に流し、四人パーティーを鋭く見やる。

「お前らも、それでいいのか。」

 

ラゼルはわずかに頷き、声を低く落とした。

「問題ない。必要な時は連携する。」

セナが軽く微笑む。

「もちろん。そのつもりだよ。」

リクトは眉間に皺を寄せながらも吐き捨てるように。

「……分かってるよ。」

バルクは短く、しかしはっきりと。

「了解。」

 

ギルド長は再び机に視線を落とし、指先で書類を叩く。

「……で、リーダーは誰だ。」

空気が張り詰める。

 

メルがわずかにファナを横目で見たが、何も言わない。

ギルド長は何も促さず、ただ無言で圧をかける。

 

メルが短く息を吐き、低く呟くように言った。

「……俺だ。俺がリーダーをやる。」

ファナが頬を赤く染めつつ、目を逸らさずに小さく頷く。

「……うん。」

 

今度はギルド長の目が四人に向く。

「お前らは?」

 

ラゼルが一歩前に出て、声を落ち着けた。

「俺だ。俺がまとめる。」

リクトが渋い顔をして鼻を鳴らす。

「……まあ、いいけどな。」

セナが穏やかに笑いを含む。

「そのつもりだったよ。」

バルクは変わらぬ低音で短く。

「……了解。」

 

ギルド長は再び書類をゆっくりと閉じた。

「……いいだろう。二人パーティー、四人パーティー、正式に登録する。」

「ただし、必要な時は合同で動け。それがアライアンスだ。」

 

ギルド長が、低く呟く。

「……お前ら、もう遊びじゃない。

仲間を守りたければ、強くなれ。それだけだ。」

静かな威圧が満ちる。

だが、全員が同時に頷いた。

 

扉を開けて廊下に出る。

途端に空気が少し軽くなる。

 

リクトが大きく肩を回し、思わず吐き出すように。

「……ふぅ、終わったな。」

セナが横で苦笑を浮かべる。

「怖かったね、あれ。」

バルクは短く。

「当然だ。」

ラゼルが視線を前に向けて。

「これで決まりだ。

 あとは、やるだけだ。」

 

ファナは少し遅れてメルの隣に並ぶ。

ぎこちなく視線を交わすと、ファナが小さく微笑む。

「……緊張した。

 でも、ちゃんと言えたね。」

メルが口元を緩め、目を逸らすように。

「ああ。……お前もだ。」

 

ファナがふわりと笑い、頬を赤らめたまま。

「これから、よろしくね……リーダーさん。」

メルが小さく息を吐き、諦めたように肩を竦める。

「ああ。任せろ。」

 

そして、そっと手を伸ばし、ファナの手を取った。

指を絡め、しっかりと恋人繋ぎ。

ファナが目を見開き、真っ赤になる。

だが、逃げずにゆっくり微笑む。

「……ありがとう。」

「……離れない。」

メルも耳まで赤くしながら、短く。

「ああ。俺もだ。」

 

ファナは少し視線を落としながら、胸の奥でそっと思った。

(私はもう一人じゃない。)

(私が選んだ、大切な人と、仲間たちと進む。)

(でも――これで終わりじゃない。)

(これからが、本当の冒険だ。)

 

その頃。

ギルド長は一人、静まり返った執務室に残っていた。

机に肘をつき、指先で書類を軽く叩きながら目を細める。

「……戻ってくるか。

面倒な連中が。」

 

街外れの道。

まだ朝の光が柔らかく差し込む中、数人分の影がゆっくりと街を見下ろしていた。

旅装をまとい、荷を背負い、陽を見上げる姿。

そのうちの一人が、小さく息を吐き出すように呟いた。

「……やっと帰って来れた。」

風が草を揺らし、まだ名も姿もはっきりしないままに、彼らを包む。

 

――第二部 完


挿絵(By みてみん)

第二部完までありがとうございました。

区切りのご挨拶と少しお知らせを活動報告に書いています。

よければそちらものぞいてみてください。

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