表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀髪の猫はなにを願う  作者: 熊猫
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

112/143

第四十八章:語られる不安、受け止める手

挿絵(By みてみん)

朝の光が宿屋の小さな部屋に差し込み、窓辺のカーテン越しに柔らかく揺れていた。

 

ファナはベッドの上で座り込んでいた。

膝を抱え、小さく身体を丸める。

猫耳が少し伏せ気味に垂れ、黒い尻尾がゆっくりと揺れていた。

 

レリアはそっと隣に腰を下ろし、静かに肩に手を置く。

ファナが顔を上げると、優しい瞳がそこにあった。

「昨日、話したいって言ってたね。」

 

ファナは小さく頷いた。

胸の奥がきゅっと縮こまる感覚。

でも、逃げたくない。

 

少し間を置いて、ファナは震える声を絞り出した。

「昨日、メルさんと話してて……。」

 

喉が詰まって、深く息を吐く。

言わなきゃ。

 

「顔、真っ赤になってるって、リクトに言われたの。」

「自分では気づかなかったのに……恥ずかしくて。」

 

猫耳が小さく震える。

視線を落とし、言葉を選ぶ。

 

「でも……たぶん、ドキドキしてたからだって思う。」

「あれも、好きってことなのかなって……。」

 

レリアはファナをじっと見つめた。

その瞳は優しさで満ちていた。

そして、ゆっくりと微笑む。

 

「うん、それは“好き”のひとつの形だと思うよ。」

「大事なのは、ファナがどう感じたか。」

「恥ずかしいって思ったのも、ドキドキしたのも、嘘じゃないよね。」

 

ファナは目を潤ませながら、こくんと頷いた。

でも、すぐにその瞳が揺れて、不安が滲み出す。

 

「……でも、怖い。」

「もし好きになっても、誰かを傷つけるかもしれない。」

「私が傷つくのも、怖い……。」

 

声が震え、最後はほとんど息になった。

目から涙がこぼれそうになり、必死に俯く。

 

その時、後ろで衣擦れの音がした。

ファナが小さく肩を震わせた瞬間、大きな手がそっと頭に置かれる。

 

暖かくて、少し重たくて、でも安心する手。

ファナは驚いたように顔を上げた。

 

そこにはカイルがいた。

無言のまま、少し視線を逸らしながら低い声を落とす。

「……傷つくことを、怖がらなくていい。」

ファナの瞳が揺れ、また涙がにじむ。

カイルはそのまま手を動かし、猫耳を包むようにぽんぽんと撫でた。

 

「傷ついたら……俺たちがいる。」

ファナの喉が詰まり、小さく震える声が零れた。

「……うん、ありがとう。おとーさん。」

 

レリアは優しく微笑んで、ファナの肩を抱き寄せた。

細くて柔らかい腕が、そっと包む。

 

「誰かを大事に思うって、怖いことだよ。」

「でも、ちゃんと向き合おうとしてるファナは、すごいって思う。」

「私たちも、ずっと味方だからね。」

 

ファナは目をぎゅっと閉じて、溢れる涙を止めようとした。

でも堪えきれず、ぽろりとこぼれる。

 

「……うん……。」

震える声で返事をし、袖で涙を拭った。

 

(好きって……怖い気持ちもある。)

(でも、ドキドキしたり、あったかくなったり。)

(そういう全部を大事にしたい。)

(おとーさん、おかーさん……ありがとう。)

(私、ちゃんと考える。誰が好きなのか、じゃなくて。私がどうしたいのかを。)

 

ファナは最後に、落ち着いた小さな笑顔を浮かべて二人を見上げた。

 

カイルは無言のまま腕を組んで頷く。

その瞳が優しく光る。

レリアはそっとファナの髪を撫でながら、柔らかく微笑む。

 

「じゃあ、またいっぱい話そうね。」

ファナも小さく微笑み返した。

「うん。」

 

朝の光が少しだけ強く差し込み、部屋を温かく包んだ。

家族のように寄り添う三人の時間が、そこにはあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ