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銀髪の猫はなにを願う  作者: 熊猫
第二部

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第四十七章:揺れる気持ち、確かな変化

挿絵(By みてみん)

朝の冷たい空気が街を包む。

ギルド前の広場には吐く息が白く揺れ、石畳を照らす光はまだ弱かった。

 

ファナは猫耳をぴんと立てて、銀灰色の髪を風に揺らしながら、リクト、セナと並んで歩いていた。

尻尾が緊張気味にゆっくり揺れる。

 

セナが微笑んで問いかける。

「昨日はちゃんと休めた?」

ファナは少し頬を緩め、でも真面目な顔で頷いた。

「うん、レリアおかーさんと、いろいろ話したんだ。」

リクトが目を伏せて、ぼそっと呟く。

「……そういうの、いいな。」

ファナは少し驚いたようにリクトを見つめた。

けれど、すぐに優しく笑って「うん」と小さく頷いた。

セナもそれを見て、穏やかに笑った。

「良いことだね。」

 

ギルドの扉を開けると、中は暖かい空気で満たされていた。

受付のミリアが明るい声で出迎える。

「“銀月の風”さん、おはよう。最近、本当に雰囲気が柔らかくなったね。」

ファナは頬を赤くし、少し恥ずかしそうに視線を落とす。

「……はい。」

ミリアは満足そうに頷き、口元を緩めた。

「うん、いい返事。」

 

掲示板の前で三人が顔を寄せる。

いくつもの紙が貼られた中から、今日の仕事を相談する。

 

セナが指先で軽く触れながら言った。

「探索補助の方が経験になると思う。」

リクトは腕を組み、少し難しい顔。

「護衛の方が稼げるけどな。」

ファナは少し考え込んでから、そっと言った。

 

「じゃあ、まず受付で詳しく聞いてみよう?」

その声に二人も頷いた。

「おう。」

「いいね。」

 

三人で受付に戻ろうとしたところで、不意に声がかかった。

「おや、リーダーさん。真剣な顔だね。」

 

振り返ったファナは、驚いたように目を見開いた。

猫耳がぴくりと動く。

「メルさん……」

頬がほんのり赤くなり、視線を上げる。

 

セナが軽く肩をすくめる。

「また来たね。」

リクトはむすっとした顔で眉をひそめた。

「邪魔すんな。」

 

メルは両手を軽く広げて肩をすくめた。

「心外だなあ。挨拶だよ、挨拶。」

そしてファナに向き直ると、少し目を細め、口元に柔らかい笑みを浮かべる。

「でも、そういう真面目な顔も似合うね。」

 

(メルさんと話すと……胸がドキドキして、熱くなる。)

(これって……好き、なのかな。)

(……でも、嬉しいって思っちゃう。)

(……もっと、ちゃんと考えなきゃ。)

 

ファナは思わず視線を逸らし、指先をそわそわと絡める。

「えっと……今日は、依頼の相談をしてたんです。」

 

メルは微笑んだまま、少し首を傾げて目を細めた。

「お仕事モードだね。真面目な君も好きだけど、無理はしないようにね。」

ファナは頬をさらに赤くして、少し俯き加減で。

「……はい。」

 

セナが優しく促す。

「行こう、ファナ。」

リクトも軽く腕を引く。

「こっちだ。あいつに構うな。」

ファナは慌てて「うん」と頷き、でも振り返って小さく会釈をした。

メルはにやりと笑いながら手を振る。

ファナも、こっそりと小さく手を振り返した。

 

ギルドを出た後、まだ朝の冷たい風が頬を撫でた。

三人は並んで歩きながら、静かになった空気の中でリクトがぼそっと呟く。

「お前さ、あいつと話すとき、顔真っ赤だぞ。」

 

ファナはきょとんとした顔をして、猫耳が小さく動いた。

「……え? 真っ赤……?」

リクトは少しむっとしたように眉を寄せた。

「ああ、すぐわかる。バレバレだ。」

 

ファナは一瞬固まった。

それから、慌てて自分の頬を両手で押さえる。

「……う、うそ……赤くなるって……そんなの……知らなかった……。」

声が小さく震え、目を泳がせる。

「……そんな……恥ずかしい……。」

頬がさらに赤くなり、伏し目がちに。

「や、やだ……見ないで……。」

 

セナが小さく吹き出し、でも優しく声をかけた。

「ふふ、ほらリクト、言い方がちょっときついんだよ。」

そしてファナに向き直って、柔らかい声。

「でも、ファナ、気づけてよかったじゃない。」

 

ファナは俯いたまま、声を震わせて。

「……も、もう……やめて……。」

 

リクトは視線を外しながらも、不器用な声で。

「……別に怒ってるわけじゃねぇ。

ただ、ちゃんと自覚しとけってだけだ。」

セナがにこっと笑って、安心させるように。

「大丈夫だよ、ファナ。

そうやって気にできるようになるの、大事だから。」

 

ファナはしばらく黙ったまま、顔を赤くしたまま小さく。

「……うん。」

 

帰り道、宿屋へ向かう途中。

ファナは少し後ろを歩きながら、空を見上げた。

秋の高い空に、小さく深呼吸をする。

 

(……好きって、こういう気持ちなのかな。)

(ドキドキして、熱くなって……。)

(まだよくわからないけど……でも、ちゃんと考えたい。)

 

宿屋の扉を開けると、カイルが迎えた。

大きな手で荷物を受け取りながら、短く声をかける。

「今日は大丈夫か。」

ファナは頷いた。

「うん。」

 

けれど、少し黙ってから、ゆっくりとレリアを見つめた。

頬を赤くしながらも、勇気を出して言葉を絞り出す。

「……おかーさん、また……話、聞いてくれる?」

レリアは少し目を丸くしたが、すぐに柔らかく微笑んだ。

「もちろんよ。」

ファナも安心したように、小さく笑った。

 

秋風が宿の窓を優しく鳴らし、静かな夕暮れの気配が部屋を包み込んでいった。

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