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番外編SS メンタルマップの検証

「メンタルマップの検証をしましょう」

 雪白さんがおもむろに提案する。

 生徒会長選挙と部室の奪還で有耶無耶になっていた活動だ。すっかり忘れていた。

「も、もっちのろーん!」

 俺は古いギャグで誤魔化した。

 伊藤先生を交え、それぞれ描いたマップを比べる。師曰く、メンタルマップには深層心理が反映されるので、今回の実験では事前マップと事後マップを見比べることで、その人が関心を持つ事柄が分かるらしい。それぞれの地図の歪みや強調された表現が、トポフィリア、つまり特定の場所に対する愛着や偏愛を読み取る手掛かりにもなるとかなんとか。何も見ずに描けと言っていたのはこのためか。

 同じ場所を描いたのだから、同じような内容になるだろうと高を括っていたが、意外や意外、全員綺麗に内容が違った。ここまで違うとは面白い。

「大竹のは最初グルメマップだったが、後の地図はそれに加えて相田兄と雪白の反応マップになったな」

「わたくしの前でウジウジモジモジ鬱陶しかったので、それだけが印象に残りましたの」

「せんせー、大竹さんが真面目にやってませーん」

 俺は告げ口してやった。こいつのマップではまともな検証にならん。

「そうとも限らんぞ。グルメマップは大竹の欲求に忠実なメンタルマップだったが、誰かと一緒に過ごしたことで、その出来事で頭がいっぱいになった。つまりトポフィリアには、人との交流が深く関わるということを示唆する結果ともいえる」

 チッ、大竹のくせに役に立ちやがって。しゃらくせぇ!

「では私のマップはどうでしょう。これも何かに当てはまるのでしょうか?」

 今度は湯田さんがふわりと二枚のマップを見せて来た。

 一枚目の事前マップは、大まかな道と神社の位置が記されていた。

 二枚目は……何だこれ? 道が多少詳しく描かれたのに加え、黒いモジャモジャやフワフワした何かが描かれている。

「湯田さん、これは……何?」

「神様です」

「……!」

「正確には、この世のものでは表現できないお姿をしておられますので、この描き方も間違っているのですけれども……。皆様、とても穏やかな方々でした」

 一同、何も言えずに固まってしまった。星君だけがハイテンションで答えている。

「あー、ここら辺は標高が低いから淀みやすいんだよね。この黒もじゃはあんまりよくないお方だったんじゃない?」

「はい。こちらの方は、山御杜の神様に敗れて、ここに縛り付けられていると仰っていました」

 ……ほ、ほーん。神様ね……。んえ!? 神様!?

「じゃあこっちのフワフワは……」

 俺は恐る恐る尋ねてみた。

「こちらの方は、妖怪ですね。私には白いキツネに見えましたけど、他の方には違って見えるかもしれませんので、フワフワにしてみました」

 なんと、妖怪までいるのか。……何だか俄然、湯田さんの見えているものに興味が湧いてきた。

「で、では、こちらのキラキラは何でしょう」

 室井君もノリノリで聞いている。男の子は、いつまでも少年の心を忘れないのだ!

「こちらは血しぶきですね。昔ここで辻斬りに遭った方の血しぶきが、いつまでも残っているのだと思われます。よっぽど悔しかったのですね」

「……」

 少年の心は一気に萎んだ。俺、もうこの道、怖くて通れないかも……。


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