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第四話

 翌日。

 教室へ入り、自分の席で教科書を出していると、廊下の話し声が急に小さくなった。

 何事かと顔を上げると、開いた扉の前に室井君が立っていた。

 昨日と同じく背筋を伸ばし、手には透明な書類入れを持っている。

 教室へ入ってきただけで、クラス中が静かになった。

 室井君は周囲の視線を気にする様子もなく、まっすぐ俺の席までやってきた。

「相田司さん」

「おはよう。昨日の返事?」

「はい」

 室井君は書類入れから、昨日の入部届を取り出す。

 記入欄はほぼ全て埋まっている。保護者の署名もあった。昨日つけた折り目まで、定規を当てたように真っ直ぐだ。

「昨夜、家族と相談しました」

 室井君は用紙を両手で持ち、神妙な面持ちで俺へ差し出す。

「設立部員として、参加させていただきます」

「そんなにかしこまらなくてもいいと思うけど……」

「自分の名前が部活動の設立に使われます。設立部員として名前を記す以上、軽く考えることはできません」

 一晩経っても、相変わらず全力で真面目だった。

「一応確認だけど、どうして入ろうと思ったんだ? あのポスターじゃ、何するか全く分からなかっただろ」

 何しろ発起人の三人もよく分かってないのだ。怪しい宗教勧誘のようだ。

 室井君は考え込むように天井を見上げ、そして俺を見下ろした。

「大変失礼なのですが、正直に申しますと、稽古に支障が出ないのが好都合だと思いました。しかし入る以上、できる限り誠心誠意、活動に取り組む所存です」

 えらい正直だ。自分に都合が良いから入ると言っているのに、不思議と打算的には聞こえなかった。

 何はともあれ用紙を受け取る。その瞬間、教室の後ろからひそひそ声が聞こえてきた。

「室井が入るのか?」

「あの室井を勧誘したの?」

「え、何の部活? 武道系じゃないの?」

 何だかやたらと驚かれている。

 室井君は聞こえていないのか、気にしていないのか、表情を変えない。

「相田司さん」

「はい、何でしょう」

 室井君は姿勢を正し、俺に向かって頭を下げた。

「改めて、お誘いいただきありがとうございます。部員としての責務を、誠心誠意果たすことを誓います」

 選手宣誓みたいなことをされてしまった。まだ部の名前すら決まっていないのに。


 その日の放課後。

 俺達は室井君の入部届を持って、大竹さんが前から話してた部活動統括担当の先生を訪ねることにした。

「そういえば、部活動統括担当の先生ってなんて先生?」

「伊藤明穂先生ですわ。わたくしたちの担任で、小さくて大変可愛らしい先生です」

「みんなアキちゃん先生って呼んでます」

 大竹さんと紬が説明してくれる。

「へえ。何の教科の先生なの?」

「メインは地理ですが、他に日本史と世界史も担当してますわ」

 なるほど。担任を持ち、部活動統括担当という役職を持ち、複数教科を担当する。話を聞く限り、かなり優秀な先生なのだろう。

 職員室へ入るとコーヒーの匂いが充満していた。この独特の匂いってどこの学校でも変わらないんだな。俺は不意に、東京で卒業した中学校を思い出した。

「アキちゃん先生! 昨日話した新部活動の入部届を持ってまいりましたわ!」

 大竹さんの声で我に返る。そこには、授業や受験の相談で引っ切り無しに生徒が訪れる、放課後の職員室の喧騒があった。

 部活動統括担当の伊藤先生は用紙を受け取り、室井君の名前と保護者の署名を確認する。思っていたより身長が小さい。どこか幼さの残る顔立ちは、大竹さんが言う通り確かに可愛らしかった。

「これで四人ですわ!」

 大竹さんが設立申請書の名簿を先生へ見せた。

「確かに四人になった。だがな、四人になったくらいでいちいち見せに来るな。時間の無駄だ」

 前言撤回。見た目に反し、なかなか口の悪い先生のようだ。

「嬉しいんですもの、報告しなければなりませんわ!」

 大竹さんはめげない。

 伊藤先生はため息をつくと、室井君へ視線を向けた。

「室井。活動内容については説明を受けているか?」

 伊藤先生は室井君に尋ねる。稽古で忙しいというのも、ある程度知っているのかもしれない。

「はい。これから全員で決めると伺っています」

「それは説明を受けたって言わないんだよ」

 先生は呆れている。俺達に10のダメージ。

「自分は、納得した上で参加を希望しました」

 まだ何も決まっていないことに納得しているらしい。室井君、無理するな。

「新しい部活なんですもの、活動内容は、これから決めますわ!」

「その言葉、便利だね」

 思わず突っ込んでしまった。

 先生は俺を一瞥した後、設立申請書を大竹さんへ戻した。

「少なくとも、部の名前と活動目的、年間計画がなければ申請は受け取れないぞ」

「では、すぐに話し合いますわ。部室を一つお借りできますでしょうか?」

「はあ? 部を作るために?」

「はい!」

「部を作る前から?」

「はい!」

「順番がおかしいとは思わないか?」

 ごもっともなご指摘。紬がしょんぼりと設立申請書を見る。

「でも、話し合う場所がありません」

「それはそうだな……」

 先生は机の端に置かれていた校内図を広げ、数秒確認した後、本館三階の西端を指した。

「生徒談話室なら誰でも使える。放課後は利用者も少ないから、話し合うだけなら問題ない」

「正式な部活動になれば、部室を頂けるのですか?」

 大竹さんが期待に満ちた顔で尋ねる。

「空いている教室の利用申請は出せる。認められるかどうかは、活動内容次第だ」

「承知しましたわ! それまでは、談話室を仮本部といたします!」

「共用の場所だからな」

「分かっておりますわ!」

「本当かぁ?」

「もちろんです!」

 大竹さんの返事を信用していいのか、先生は最後まで迷っていた。

「あーそこの男子、ちょっと残れ」

 職員室を出る間際、伊藤先生に呼び止められた。なんだろう、何も悪いことしてないぞ。

 再び先生の前へ立つと、先生は生徒名簿を確認している。

「相田兄妹の兄の方だな。噂は聞いてるぞ」

 何の噂だろう。妹大好きシティボーイという噂でも流れているのだろうか?

「お前ら昨日の勧誘で大活躍だったそうだな」

 違った。スマートシティボーイの噂じゃなかった。昨日の案内所のことらしい。

「いつの間にか巻き込まれただけです」

「大竹の暴走を止めるのは大変だっただろ」

 先生はクツクツと小さく笑っている。本当ですよ。大変なんてもんじゃない。

「そこでお前に相談がある。もし本当に部活を作るなら、部長はお前がやれ」

 まさかのご指名だった。

「面倒なの嫌なんですけど」

「私だって嫌だ。だから、一番まともそうなお前を指名する」

 ずいぶんと個人的な理由での指名だった。まあ、あのメンバーならそうなるか。

「じゃあその代わり、部活になったら顧問やってください」

「ほう。私に取引を持ち掛けるとは。今年の一年生は生意気だな」

 少女のような見た目の先生に凄まれた。うわー。こわいよー。

「なんか態度が気に食わんが、まあいいだろう。活動内容と計画をまともに埋めてきたら、顧問欄に名前を書いてやる。なるべく早く申請書を持ってこい」

「ありがとうございます」

 先生は用事は済んだとばかりに、机に向き直った。手はシッシと俺を追い払ってる。なんて教師だ。

 こうして俺達は、顧問候補を確保したのだった。

 職員室を出ると、皆が扉の前で待っていた。

「兄さん、先生の用事はなんだったんですか?」

「ああ、部長は俺がやれって」

「えええ! そんな……」

 大竹さんが大袈裟にショックを受けている。どうした?

「わたくし、部長になって紬さんやお兄様に山府のあれこれをお教えするつもりでしたのに……」

「部長じゃなくてもできるのではないですか?」

 室井君がもっともなことを言った。

「ではよろしいですわ。さあ部長さん、参りますわよ!」

 大竹さんは立ち直りが早かった。いや、別に俺は部長をやりたいわけじゃないんだけどね。


 俺達は本館の三階へ向かった。放課後の校舎は授業中よりも騒がしい。開いた窓から運動部の掛け声が入り、廊下を楽器の音が流れていく。

 その中を、大竹さんが先頭に立ってズンズン歩く。傍から見れば、「大竹さんと愉快な仲間たち」状態だ。

 生徒談話室は、階段から一番遠い場所にあった。

 軽くノックをして扉を開けると、中には四人掛けのテーブルがいくつか並んでいた。

 談話室の名の通り、本来は生徒同士で話すための部屋なのだろうが、今は図書館よりも静かだった。利用者は、窓際で本を読んでいる女子生徒一人だけだ。

 長い黒髪を耳にかけ、静かな視線を本に落とす、雪のように白い肌を持つ美少女。俺と同じクラスの雪白六花さんだ。

 休み時間も自分の席で本を読んでいることが多い。まだ一度も話したことはない。いや、正確に言うと、俺はクラスの誰とも話したことがない。……悲しい。

 雪白さんは俺達に一度だけ視線を向け、すぐに本に戻した。

「本日より、ここをわたくしたちの仮本部といたしますわ!」

 大竹さんがそれはそれは大きな声で宣言する。

「しないで」

 窓際から静かな声が飛んできた。

「まあ、六花さん! いらしたのですね!」

「最初からいたわ」

 大竹さんは今になって気付いたらしい。

 室井君が雪白さんに頭を下げる。

「ご無沙汰しております、雪白さん」

「ええ」

 室井君まで顔見知りだった。山府義塾に入学して四日目の俺達兄妹だけが、人間関係の途中に放り込まれている。

「ここは生徒談話室よ。あなたたちの仮本部とやらではないわ」

「伊藤先生から、使ってよいと許可を頂いております!」

「おそらくだけど、話し合いに使ってよいと言われただけでしょう」

 冷徹な口調で返された。名前も相まって、ずいぶん冷たい印象を受けた。

「もちろん、皆さんと譲り合って使用いたしますわ!」

 大竹さんは元気にそう答え、雪白さんから最も離れたテーブルへ向かった。

 距離を取れば問題ないと思ったのだろう。

 大竹さんの声に、距離がどれほど役立つかは疑問だった。声、大きいからね。

 俺達はテーブルを囲み、設立申請書と年間活動計画書を広げた。

 設立部員の欄には、俺、紬、大竹さん、室井君の名前が並んでいる。その下には、あと一人分の空欄が残っていた。

 紬が空欄を見たあと、窓際の雪白さんを見た。

「紬。人を空欄の形で見るのはやめなさい」

「見ていません」

 否定するわりには、視線を戻すのが少し遅かった。お兄ちゃんにはお見通しです。

「では、部活動の名前から決めましょう!」

 大竹さんが申請書の一番上を指す。

「その前に、一つ伺ってもよろしいでしょうか」

 室井君が姿勢を正した。

「ポスターに書かれていた『トポる』とは何でしょうか」

「トポフィリアを得ることです」

「その『トポフィリア』とは?」

「人と場所との間に生まれる情緒的な結び付きです」

 紬が答えると、室井君はその言葉を確かめるようにゆっくり頷いた。

「つまりトポるとは、ポスターにも書いてあった通り、山府を好きになり、愛着をもつようになるという意味なのですね」

 大竹さんも隣で頷いている。

「なるほど。そういう意味でしたのね!」

「意味を知らずに勧誘してたのか」

「必要なのは熱意ですわ!」

「説明も必要だよ……」

 室井君は申請書に目を落とした。

「では、その結び付きを得るために、どのような活動を行うのでしょうか」

「分かりません」

 紬が即答した。

 室井君の動きが止まる。

「獲得する方法を調べる部活動、ということでしょうか」

「違います。方法を知りたいのではありません」

 紬は少し考えてから続けた。

「私は、山府でその結び付きを得たいのです」

「目的は理解しました。では、そのための活動は?」

「それをこれから決めます」

 一周して戻ってきた。

 室井君はしばらく黙っていたが、やがて納得したように頷いた。

「なるほど、自分が活動内容を理解できていなかったのではなく、まだ活動内容そのものが存在していなかったのですね」

 そうだよ、室井君。今更気が付いたのかね。

「そういうことですわ!」

 大竹さんが胸を張る。威張れることではないぞ。

「とにかく、名前を先に決めよう」

 このままでは、説明だけで放課後が終わる。

「トポ部」

 紬が即答した。

「却下」

「まだ説明していません」

「説明が必要な名前だから却下だ」

「短くて覚えやすいです」

「意味が分からないから、忘れられない名前ではあるな。却下」

『一緒にトポりたい人、募集』と書かれた昨日のポスターでも、誰にも意味が通じなかった。

「では、山府愛好部はいかがでしょう!」

 大竹さんは、天啓を得たかのごとく目を輝かせた。

「私は、まだ山府を愛好していません」

「そうでしたわ!」

 目的を達成した後なら使える名前かもね。大竹さん、ナイストライ!

 室井君も真剣に考える。

「山府市郷土探究会という名称はいかがでしょうか」

 さすが室井君。ずいぶん堅い案を出す。

「自分達は、まだ正式な部活動ではありません。現時点では、会とするのが適切かと」

「部になったら改名するのか?」

「必要であれば」

「設立前から変更届を増やすのはやめよう」

 三人の視線が俺に集まる。

「俺に振るなよ。そもそも、山府で何をするかわからないんだろ。それなら――」

「山府研究部でいいでしょう」

 少し離れたところから声がした。

 雪白さんは、本に視線を落としたままだった。

「それですわ!」

 大竹さんが申請書を引き寄せる。

『山府研究部』

 迷いなく書き込んだ。

 雪白さんが顔を上げる。

「今のは独り言よ」

「採用された時点で、立派なご意見ですわ!」

「私は部員ではないわ」

「分かっておりますわ!」

 本当に分かっている人間は、入部していない人の案で部名を決めない。

 紬が申請書を見ながら考える。

「山府で何をするか決まっていなくても、使える名前です」

「採用理由が後ろ向きだな」

「ですが、間違ってはいませんわ!」

 室井君からも異論は出なかった。

「次は、活動目的ですわね」

「活動目的なら、決まっています」

 紬が申請書を自分の方へ引き寄せた。

「山府で様々なことを体験し、人と場所との間に生まれる情緒的な結び付きを得ることです」

「先ほどの説明とほとんど同じですわね」

 大竹さんはそう言いながら、そのまま活動目的の欄へ書き込む。

「部まで作って、そこまでして欲しいものなの?」

 窓際から雪白さんが尋ねた。純粋に興味があるらしい。

 紬は申請書を持って立ち上がると、雪白さんの向かいに座った。

「どうしてこちらへ来るの?」

「離れていると話しづらいので」

 大竹さんも筆記用具を持って移動した。室井君は俺の分の椅子まで運んでしまった。やれやれ。俺は年間活動計画書を持って後に続いた。

 静かに本を読んでいた雪白さんは、ものの数秒で四人に包囲されていた。

「私は話し合いに加わっていないのだけれど」

「でも、さっきから混ざりたそうにしています」

「独り言が多いだけよ」

「とりあえず、質問に答えます」

 紬はそう断ってから、山府との結び付きを得たい理由を説明した。引っ越してきたこと、嘘みたいに東京に未練がないこと。その一方で、山府に希望もないこと……。

「私も、場所のことで寂しくなったり、嬉しくなったりしてみたいです」

「寂しくなることまで欲しいの?」

「はい。たぶん」

 雪白さんは視線を上げ、何かを考え込んでいた。

 視線の冷たさは変わらなかった。しかし、紬の話を笑うことも、本に視線を戻すこともしなかった。

「次は年間活動計画ですわ!」

 突然、大竹さんが雪白さんの本の隣に用紙を広げた。

「なぜ私の前に置くの?」

「全員から見える位置ですので!」

「私は全員に含まれていないわ」

 雪白さんの抗議も虚しく、話し合いが始まる。分かるよ、雪白さん。俺もこうやって巻き込まれたんだ。

 年間活動計画書には、四月から三月まで十二か月分の記入欄が並んでいる。

 大竹さんは四月の欄に『創部準備』と書いた。問題はその先だった。

「五月は『山府を知る』。六月は『山府をもっと知る』。七月は『山府を深く知る』でいかがでしょう!」

 大竹さんが山府三段活用を唱える。

「三月には山府と一体化していそうね」

 雪白さんがぼそっと呟いた。

「素晴らしいですわ! それを最終目標にしましょう!」

「皮肉よ」

 雪白さんは大竹さんからペンを取り、書きかけた『山府を知る』を二重線で消した。

 危うく山府に侵食される年間計画を提出するところだった。こわやこわや。

「具体的な活動でしたら、市内の名所を巡るのはいかがでしょう。武尊さんの稽古場にも伺えますわ!」

 大竹さんが改めて提案する。

 室井君も、天山流は長く山府で受け継がれているため、土地との関わりを知るには役立つかもしれないと付け加えた。

「どちらも行ってみたいです。でもまだ何もしていないので、それだけを一年間の活動にしていいのかは分かりません」

 紬が答えると、雪白さんは二つの案を年間活動計画書の余白に書いた。

「決定できないなら、候補として残しておけばいいでしょう。何も書かずに同じ話を続けるよりはましよ」

「六花さん、見事な書記ぶりですわ!」

「書記ではないわ」

 雪白さんはすぐにペンを返した。

「でも、今のは一緒に考えたことになります」

 紬に指摘され、雪白さんが黙る。

 大竹さんは返されたペンを受け取ると、入れ替わりに予備の入部届を差し出した。

「どうぞ!」

「いらない」

 勧誘が手品になっていた。種も仕掛けもわからない。……地味に凄い。

「雪白さんは、入る部活動はもう決めましたか?」

「決めていないけれど、何をするかも分からない部へ入るつもりはないわ」

 紬の質問に答えながら、雪白さんは入部届を大竹さんへ押し返した。

「目的には、少し興味がある。でも、それと入部は別でしょう」

 紬と大竹さんが反応するより早く、雪白さんは本を手に取り、顔の前に広げた。これ以上は聞かないという意思表示なのだろう。

 ただし、本は逆さまだった。雪白さんは慌てて上下を直す。……ちょっと可愛い。

「本日はここまでにいたしましょう!」

 話し合いがこれ以上進まないと判断した大竹さんが、高らかに宣言する。申請書と年間活動計画書を重ね、片付け始めた。

「活動内容は明日また考えます。五人目の勧誘方法についても話し合わなければなりませんわ!」

 雪白さんが本から顔を上げた。

「明日もここで?」

「もちろんですわ! 五人目が決まって部室を得るまでは、仮本部として毎日使用いたします!」

「仮本部ではないと言ったでしょう」

 雪白さんの視線が、設立申請書の部員欄へ向いた。

「……私が入れば、五人目を探さなくていいのね」

「はい」

「なら、入るわ。早くここから出ていって」

 雪白さんは入部届を手にした。

 しかし残念なことに、五人集まっただけでは部室は与えられない。そして雪白さんはそのことに気付いていない。……俺は黙っていることにした。


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