第12話 不良!?
昼休みになるとすぐに、私は購買に駆け込む。
しかし、授業が長引いたせいか、目当ての焼きそばパンは売り切れてしまっていた。
今日は何もないところでこけそうになったし、それを市之瀬君に見られたりもした。ついていない日だ。
「大丈夫か、神崎」
「あー。まあ、うん」
教室へ戻る途中、廊下で市之瀬君に遭遇した。これから美術室に向かうところか。
「なんだかしょぼくれた顔をしているな。これやるから元気出せよ」
市之瀬君が、手に持っていたチラシを一枚くれる。
個展の案内。
ただし、今回は市之瀬君のものではない。
「この人、俺の知り合いなんだ。俺の絵が好きならきっと気に入ると思う」
「へぇ……」
確かに、チラシのデザインから感じ取れる雰囲気が、どことなく市之瀬君の作風と似ている。
これまで彼以外の個展に行ったことはなかったが、たまには別の人の作品に触れるのもいいかもしれない。
「それで、だな。せっかくだから一緒に――」
「うーん。じゃあまた安井に付き合ってもらおうかな」
「……」
「ん、今何か言った?」
「いや……」
何か言いたげだった市之瀬君だが、結局あきらめたように去っていった。その後ろ姿には哀愁が漂っている。いったいどうしたのだろう。
疑問は残ったが、気を取り直して手元のチラシを確認する。
ええっと、この時期の安井の勤務日は――
その時、開け放たれていた窓から強い風が吹き込んだ。
「あ!?」
運が悪いことに、もらったばかりのチラシが風に乗って飛ばされてしまう。
すぐに下をのぞき込むと、チラシは裏庭の木に引っかかっていた。
「どうしよう……」
今日はとことんついていないな。
私に木登りの経験はない。しかし、せっかく市之瀬君からもらったものだ。
……やはり取りに行くしかないだろう。
◇◇◇
裏庭には先客がいた。
木にもたれかかるようにして、一人の男子生徒が座り込んでいる。
学校の裏庭は日当たりが悪く、生徒たちからは人気がない。だから彼のことが妙に気になってしまった。
「……」
思わず物陰に隠れてしまったのは、彼の様子が普通とは違うものだったからだ。
まず目を引くのが、ド派手な髪の色だ。明らかに校則違反の、キンキンの金髪。ワイシャツの襟元からは真っ赤なTシャツがのぞいている。
ネクタイをしていないため学年はわからないが、今まで見たことのない顔だし、もしかすると一年生なのかも。
……えっ、入学したばかりでこれ?
そして、胸ポケットに入っているのは――ひょっとしてタバコ!?
つまり、彼は不良だった。
――もしかしてうちの学校、治安悪いの?
双葉さんへのいじめといい、私に絡んできた女子三人組といい、今後の学園生活が不安になってくる。
最悪なことに、男子生徒がもたれかかっている場所こそが、チラシの引っかかっている木だった。
いくら待っても、彼は全く移動する気配がない。
ヤンキーものの漫画を読むことはあるが、さすがに本物の不良には関わりたくない。せっかく市之瀬君がくれたものだけど、今回は涙を呑んであきらめるべきか。
「……あれ?」
ふと、違和感を覚える。
先程から気だるげな様子で座り込んでいる男子生徒。
彼は動かないんじゃなくて、「動けない」のかもしれない。
なぜなら――




