第9話 属性過剰ハイスペック少女
新しく友達になったマリアは、早速私に相談したいことがあるらしい。
「せっかくだからあなたの意見を聞かせてもらいたいのだけれど、もっと周囲の人と打ち解けるにはどうすればいいかしら」
「うーん……」
完全に人選ミスだ。今までろくに友達がいなかった私に、ろくなアドバイスなんてできるわけがない。マリアの力になってあげたいが……。
ない頭を総動員して考える。
マリアが周囲の人から遠巻きにされる理由――やっぱり、彼女があまりにもキラキラしすぎているから、テレビの中のアイドルみたいに見えるのだろう。
「完璧すぎて近寄りがたい、というのはあるかな。少し『隙』を晒した方がいいかも」
マリアはピンとこない様子で首をひねる。
「隙? 弱点ってことかしら。たとえば私の場合、病弱、みたいな。実はもう克服しているのだけれど」
「いや、病弱は親しみやすさとは程遠いから。むしろ心配になる」
「そう……難しいわね」
眉間にしわを寄せる姿すらマリアは麗しい。
ちょうどその時、追加で注文した飲み物が運ばれてきた。
私はカフェオレ、マリアは普通のブラックコーヒーだ。
マリアはスティックシュガーを手に取る。ブラック派なのかと思ったら、そうでもないらしい。
彼女が紙の端を破ると、勢いよく中身が飛び散った。
「やだ、私ったら。よくやるのよね」
「そうなの?」
マリアは恥ずかしそうに笑うと、ウェットティッシュでテーブルを拭く。
普段クールに見える彼女の、意外な一面だ。
――これはちょっとかわいいかも。
「……ドジっ子というのはありだと思う」
「そ、そう? 人前で落ち着きのない姿を見せないよう気をつけていたけれど、親しみやすさを与えることもあるのね。わかった、少し考えてみる」
ふむふむ、と頷きながらマリアはメモを取る。そんな真面目に考えることでもないと思うが……。
◇◇◇
一週間後。
マリアはなぜか自信満々な様子で、テストの答案を見せびらかしてきた。英語の授業で実施した小テストの結果だ。
「どうかしら?」
「……」
見間違いかと思い、目をこする。だが、何度見ても結果は変わらなかった。
マリアの答案用紙には、大きく赤字で0点、と書かれている。
「……どうしたの、これ」
「途中で解答欄がずれていることに気づいたの。始めは直そうかと思ったけれど、これってすごくドジっ子っぽかったから、そのままにしたわ。どう? 少しは親しみやすさを感じる?」
「いや、全然! 逆に心配になるわ!」
「そう……」
マリアは残念そうに眉を下げる。どうしてこうもやることが極端なのか。
……もしかしてこの人、おもしれー女属性もお持ちで?
属性が過剰すぎるよこんなの!!
市之瀬君といい、マリアといい、やはり天才はどこか変わっている。
「いきなりこんな点取って、先生から何か言われたりしてない?」
「今日の放課後に職員室へ来い、と言われているわ」
「ほらぁ!」
私は頭を抱えた。余計なアドバイスをした身として、責任を感じてしまう。
「……ねえ。確かあなた特待生じゃなかった? 学費免除の」
「今は違うわ。お父さんが勝った宝くじが当選して、それを元手に私が株でもうけたの。学費はちゃんと払えるから安心して」
「株ぅ!?」
どんな女子高生だよ。ほんとなんでもできるなこの子。
「とにかく、もうこんなことしちゃダメ。親しみやすさのためとはいえ、成績とか、大切なものを犠牲にするのは違うから!」
「ふふふ、私のことを心配してくれているのね。ありがとう」
「……」
私の言いたいことが伝わったのか不安になるが、マリアの笑顔を見ていると、それ以上何も言えなくなってしまう。
……友達の笑顔って、こんなにもうれしいものなのか。
もう、調子狂うなあ。




