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世界を救うために君を落とします  作者: 月丘 翠
作戦《8》修学旅行で告白せよ!
38/40

修学旅行で告白せよ!③

「今から自由行動だーーー!」


岡野がバスを降りて嬉しそうに歩き出した。

「迷子にならないでくれよ」と藤志朗がため息をついた。

珍しく同じ気持ちだ。

岡野のマイペースぶりに振り回される予感しかない。

ため息をつきながら、バスを降りた。


「まずは国際通りを見ましょうか」

梨央の案内で国際通りを目指した。

タクシーに乗って周りの景色を見ていると、普段とは違うものがたくさんある。

普通の家に生えている植物だって違っていて、南国という感じだ。


タクシーを降りて、国際通りを歩くと多くの人たちが歩いている。

観光客が多く、日本語以外の言語もたくさん聞こえてくれる。


「まずはシーサー作りにいくよ」

シーサーは沖縄の魔よけの意味をもつ伝説の獣だ。

シーサー作りの体験は小春の希望だ。

店の人に教えてもらいながら、粘土を練ってシーサーの形に成型していく。


「君、それはなんだい?」


藤志朗がバカにしたように、奏汰のシーサーを指差した。

奏汰のシーサーは何とも悲しげな表情で、座ることが出来ずに傾いている。


「梨央さん、僕のシーサーの方がシャープでかっこいいとは思いませんか?」

シーサーにシャープはないだろと思っていると、梨央も困ったように「そうだね」と言っていた。


「なんとなく作った人に似ているね」

出来上がったシーサーが並んでいる。

岡野のシーサーは、コメディタッチの面白い顔をしているし、藤志朗のシーサーはイケメン風だ。小春のシーサーは強そうで、梨央のシーサーは可愛らしい。


「じゃあ俺はこれに似てるのか」

奏汰は不格好な自分のシーサーをつついた。


「愛らしいよ」

梨央がそう言って奏汰の小さなシーサーを指で優しくポンポンとなでた。

「ありがと」

梨央は嬉しそうに笑うと、「そろそろ昼食だね」そう言って有名なハンバーガー屋へ向かった。


「これ食いたかったー!」

アグー豚が入ったパティが大きくて分厚い。

「うまそう~」

岡野は嬉しそうにかぶりついた。

「うまぁ~!」

予想以上に美味しいハンバーガーにみんなでおいしい、おいしいと食べた。

小春とは気まずくなるかと思ったが、だんだんといつもように軽口を叩けるようになってきた。


「次はお土産を色々見に行こ!」

小春がそういうと、買い物に出かけた。

琉球グラスにシーサー、沖縄ならではのお菓子や料理が様々なお土産が売っている。


「これ・・かわいい」

梨央はホタルガラスで作られたイヤリング

を手に取って、ガラスを光にあてて微笑んでいる。


「ホタルガラスって暗闇で光るんだね」

小春も一緒にみるが「あー、結構高いね」と小春はすぐに元の場所に戻した。

すごく高いわけではないが、高校生のお小遣いでは気軽には買えない。

「そうだね」

梨央も残念そうに元に戻した。


そうこうしている内に自由時間も終わり、集合場所に向かうことになった。

「もっと色々見たかったなぁ」

「そうだね」

「本当にあっという間」

岡野はハブのぬいぐるみを首に巻きながらそう言った。

「まだまだ買いたいものあったんだけどな」

小春は手に一杯袋を持っているのにそうぼやいた。

「それ以上何買うんだよ」

奏汰がそういうと、「沖縄なんてそうそう簡単に来れないんだもん、買えるだけ買わないと!」と小春は名残惜しそうに土産屋の方を見ていた。

そしてホテルへ向かいチェックインすると、みんなそれぞれの部屋へ別れていく。


奏汰はベッドに横になると、天井を見上げた。

「市川、お疲れか?」

「おー、ちょっと疲れた」

岡野は何かを察したのか、嫌がる藤志朗を連れて、ホテルの見学してくると部屋を出ていった。


(いよいよ今日の夜、告白か・・・)


奏汰はこれまでのことを思い出した。

最初に出会った時は笑顔もなく、雪女と呼ばれていた梨央。

あんな美人と自分みたいな人間が関わることはないと思っていたのに、世界を救うために彼女を落とせとか言われて、彼女を研究したり、一緒に勉強したり、体育祭で走ったり・・・。

藤志朗が転校してきた時は本当に厄介な奴がきたと思ったが、今ではなんとなく受け入れられている。

夏にはデートして、秋には劇をやって仲良くなってきたと思ったら、距離が出来て、それでも仲直りして、ここまでやってきた。


全ては世界を救うため、そう思っていたのに、途中から本気で梨央を好きになっていた。

困った顔も、嬉しそうに笑う顔も、怒った顔も、悲しそうな顔も全てが愛おしい。

こんな感情になったのは人生で初めてだ。


告白してしまったら、これまでの関係ではいられない。

失敗すればもう一緒に笑ったりできなくなるかもしれない。

それが怖くてたまらない。

でも、進まなければならない、ずっと梨央といたいから。


(小春も・・・同じ気持ちだったのかな)


小春が笑顔でこちらに手を振っている。

奏汰は拳を握った。

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