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世界を救うために君を落とします  作者: 月丘 翠
作戦《8》修学旅行で告白せよ!
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修学旅行で告白せよ!②

ロビーの時計を見ると、22時を指している。

21時には消灯だ。

22時にロビーにきてほしいと小春からメッセージに書いてあった。


(一体、どんな面倒を押し付けてくるつもりなんや・・・)


どうせロクでもないことに違いないと奏汰はため息をつきながら、なんとか岡野と藤志朗にバレずに部屋を抜け出した。

ロビーに向かうと小春が外に行こうと指差すので、頷いてついていった。


「藤沢~、夜の海で何すんだよ」


奏汰が揶揄うように声をかけるが、「別に…」とだけ言っていつものような元気さはない。

目線も合わず、こちらを見ようとすらしない。


「おい、体調でも悪いのか?それなら早く部屋に戻って・・・」

「そうじゃない。体調・・・悪いわけじゃない」

「なら、どうしたんだよ?」


小春は黙って、下を向いている。

波の音だけが聞こえている。


「・・・藤沢?」


奏汰がそういうと、小春がバッと奏汰の方を見た。


「市川!」

「は、はい?」


「私・・・私・・・私な、市川のことが好き」


波が打ち寄せる音が夜に響く。


「・・・え?」

思いもかけぬ告白に、言葉が出てこない。


「好き・・?・・・何が?」


「・・・市川のことが、ずっと前から好きだった」


目の前に起きていることが理解できずに、瞬きの回数だけが増えていく。


「えっと、あの、その・・・藤沢は俺のことを男として好きだと?」


「そう言ってるでしょ!何回も言わせるな!」


恥ずかしいのか小春はぷいとそっぽを向いた。


「えーっと、あのその・・・」


奏汰が混乱した頭の中、必死に言葉を探していると、スタッと小春は立ち上がった。


「言いたいことはそれだけだから」

小春はこちらを見ることもなく、小走りで行ってしまった。


「ちょっと、え?ええ?」


混乱した奏汰だけが浜辺に残された。



翌朝、奏汰は目の下を真っ黒にして欠伸をしながら朝食バイキングへ向かった。


「おぅ!奏汰」

誠まことが元気よく声をかけているが、そんなテンションになれない。


「おはよう・・・」

「なんかしんどそうだな。興奮して寝れなかったのか?」

誠のニヤニヤした顔にツッコむことも出来ない。

「興奮とは違うけど寝てないのは事実だな・・・」

奏汰はふらふらと歩いていると、梨央がやってきた。


「おはよう」

「おはよう・・・」

「どうしたの?なんだか顔色が悪いけど大丈夫?」

梨央が心配そうな顔でこちらを見てくる。


「大丈夫、大丈夫。ちょっと寝不足なだけで・・・」

「そう?無理しちゃだめだよ?」

「ありがとう」

そんなことを言っていると、「小春ちゃん」梨央が呼ぶ先には小春が立っていた。


「市川、おはよう」

「お、おはよう」


少し気まずい。

でもそう思っているのは奏汰だけのようで、小春はまるで何もなかったように「早くバイキング食べよ~」と言って会場へ入っていった。

その後の朝食を同じテーブルで囲んでいる間もいつも通りで、昨日のことは夢だったのではないかと思うほどだ。

奏汰だけが不自然に動揺してしまっている。


(夢だな、きっとそういうことだ)


そう思い込むことにして、奏汰もバイキングをたらふく食べた。

食べ過ぎてしんどくなってトイレに行こうと会場を出ると、小春が立っていた。


「ふ、藤沢!」

「市川・・・」


少し下を向きながら、奏汰に近づいてくると小さな声で「昨日のことは秘密にしなさいよね」と言って、「じゃあ」と小走りで朝食会場へ戻っていった。


「やっぱり夢じゃなかった・・」

奏汰は頭を抱えた。


(そもそも、俺は何に悩んでるんだ。俺が好きなのは梨央。それは間違いないのに、藤沢に告白されて動揺するとか・・・よく考えてみろよ、藤沢と付き合う?それはナイ!)


“・・・市川のことが、ずっと前から好きだった”


小春が恥ずかしそうに、でも勇気をもって言ってくれた姿が浮かぶ。


(あれはちょっと・・・かわいかったな)


「俺はどうしたらいいんだよ!」


思わず声にだして言ってしまったようで、みんなの視線が集まっている。

梨央も不思議そうな顔でこちらを見ている。


「バイキングなんだし、好きなの食えよ」


岡野に冷静にそう言われて、「…そうだな」と恥ずかしすぎて下を向いた。



「じゃあ一旦荷物まとめて、ロビーに集合だ」

教師に言われて朝食会場からそれぞれの部屋に荷物をまとめに戻っていく。


「奏汰くん・・」


小さな声で呼びかけられて振り返ると、梨央が不安そうな顔で立っている。

「梨央、どうしたん?」

「あのさ、小春ちゃんと何かあった?」

「え・・、どうして?」

「なんか奏汰君も小春ちゃんも様子がおかしいんだもの」

「いや、別に何もないよ」


動揺で少し声が震えてしまう。

何より大きな瞳で真っすぐ見つめられると動揺しないなんて無理だ。

とはいえ、本当のことを言うわけにもいかない。

どうしたものかと思っていると、「市川―!」と岡野が呼んできた。

「カードキーを持っているのは君だろう」

藤志朗が迷惑そうな顔でこちらを見ている。

「すまん、すぐ行く!梨央ごめん、またあとで」

奏汰はどうにか誤魔化すと、その場を後にした。

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