修学旅行で告白せよ!①
(だから嫌だったんだよ…)
思わずため息をついた。
話し合いをするためにファミレスに来たが、注文が終わると、小春と藤志朗と岡野の3人のどこに行くかの激しい話し合いが始まった。
「だから、国際通りの買い物時間は譲れないって言うてるじゃない?」
「僕はこのおしゃれなカフェでゆっくりお茶をしたいな」
「なんで沖縄でお茶なんだよ!ハブとマングースショーを俺は見たい!」
全く3人とも意見が合わない。
お互い譲らず意見を言い合っているので、梨央と奏汰は黙って見守るしかなかった。
奏汰はため息をつくと、横を見ると梨央は地図を真剣に見ている。
みんなの意見を取り入れられないか考えているようだ。
「梨央は行きたいところないの?」
小さな声で奏汰が聞くと「海が見れたらいいかな」と遠慮がちに言って笑った。
「海、好きなの?」
「うん、好きだよ。海見てると心が落ち着く気がするんだよね」
「沖縄の海はきれいだろうね」
「うん。すごく楽しみ」
キラキラとした笑顔を見せると、すぐにまた地図とにらめっこをしていた。
結局、ハブとマングースショーは今は動物愛護の観点からやっていないとのことで無くなり、その他の意見を取り入れたルートを梨央が考えてくれた。
おかげで教師のチェックも通り、あとは修学旅行の日を待つばかりとなった。
「で、修学旅行で告白するのか?」
学校からの帰り道、突然誠に言われて、驚きのあまり飲んでいた物を吐きそうになる。
「と、突然なんだよ」
「しないのか?」
「いや、なんで告白するって話になるんだよ」
「修学旅行で告白するの定番だろ?」
誠はニヤニヤと笑っている。
「どんな定番だよ」
誤魔化そうとツッコんでみるものの、図星すぎて赤面してしまう。
「で、告白するんか?」
「・・・するっていったらどうなんだよ」
「おもしろいなって思って」
「おい、お前・・・!」
「冗談、冗談。なんかあれば協力してやるから言えよ」
そう言って、誠は奏汰の肩を叩きながらハハハと笑った。
明日はいよいよ修学旅行となり、奏汰は荷物を詰めながら、しおりを開いた。
1日目はお昼に沖縄に着いて、昼食をとって、美ら海水族館。
2日目は国際通りを中心に1日自由行動。
3日目は、午前中にはホテルを出て、飛行機で帰る。
修学旅行の行程はこんな感じだ。
2日目のホテルは海が見えるホテルなので、梨央の好きな海が見えるここが告白にはいいかもしれない。
(1日目に告白して振られたら2日目が地獄だからな)
そんなことを考えて一人で顔が赤くなったり、青くなったりした。
その日は当然眠れず、まさかの当日は遅刻ギリギリで高校へ向かった。
バスに乗り込むと、空港に向かい、飛行機であっという間に沖縄に降り立った。
「沖縄はやっぱり暖かいなぁ」と岡野が調子にのって半袖になっている。
「ほんと楽しみ。梨央も一緒に楽しもうね」
小春もいつもよりテンションが高く見える。
「うん」
梨央も嬉しそうにニコニコしていて、幸先は良さそうだ。
(こいつさえ、いなけれりゃな・・・)
「この旅行がきっと最高の思い出になるよ」と藤志朗が梨央に囁いている。
「ちょっと近すぎ」
小春が間に割って入ると、「嫉妬かい?」とトンチンカンなことを言ってどつかれていた。
昼食はグループごとでソーキそばを食べた。
麺もスープも美味しいが、骨付きの豚肉が美味しい。
「これをソーキって言うらしい」
小春がそういうと、「豚のあばら肉のことを言うんだよ。スペアリブと同じ」梨央がそう言って肉を頬張った。
ソーキを食べるバケモノのようになる人が多い中、梨央は肉を食べる姿すら可愛い。
「美味しいね」
こっちをみて微笑んでくる。
「うまいな」
奏汰は憂鬱だと思っていた修学旅行が薔薇色のように感じる。
「この後は美ら海水族館かー!楽しみ」
小春は嬉しそうにしおりをみている。
「展示の魚を食べるなよ」
奏汰がからかうと、「バカ」と小春は怒るふりをしてまた嬉しそうにしおりを眺めている。
「夫婦喧嘩はやめろよー」と、岡野がからかう。
「そうだよ、僕たちのように仲のいい夫婦にならなければね」
藤志朗は梨央の肩を寄せようとしたが、梨央はさっと避けて不機嫌そうな顔で、ぷいっと藤志朗から顔をそむけた。
そして、奏汰も梨央と目があったが、機嫌が悪いのかなぜか目を背けられた。
「なんで?」
その疑問も解消できないまま、バスへ誘導されて、次の目的地である美ら海水族館に向かった。
「すごーーーい!」
小春は梨央の手を引いて、水槽の前まで駆けていく。
目の前には巨大な水槽があり、その中をジンベエザメやマンタなどが悠々と泳いでいる。
「まるで海の中にいるみたいだな」
岡野も感嘆の声を上げた。
確かにまるで海の中にいるようだ。
綺麗な青色の水槽が反射してキラキラ光っている。
梨央や小春は嬉しそうに魚やジンベエザメを撮影している。
(藤志朗は・・?)
どうしているのだろうと藤志朗の方を見てみると、何枚も自撮りショットを撮っている。
「あいつはほんと・・・」
奏汰があきれていると、「市川―!」と呼ばれて、振り返ると小春と梨央が手を振っている。
「市川、一緒に写真撮ろ?」
梨央、小春、奏汰、岡野と並ぶ。
藤志朗も一緒に並ぼうとしたら、小春は「あんたまで並んだら誰が撮るのよ」といって無理やり自分のスマホを押し付ける。
「僕がカメラマンかい?それは・・・」
「いいから、早く撮らないと周りの人に迷惑だから」そう強く小春に言われて、渋々藤志朗はシャッターボタンを押した。
サンゴの海や熱帯の海では、色とりどりの魚が泳いでいる。
「かわいい」
梨央がそう言いながら、ひたすらに撮影をしている。
「こんなにかわいいのに、海が汚されて数が減っちゃってるんだよね・・・」
梨央はふと寂し気な顔をして、小さく息を吐いた。
「梨央は優しいな」
奏汰がそういうと、梨央は「そんなことない」と照れた顔をして、微笑んだ。
(天使かよ・・・)
奏汰はドキドキした心がバレないように目をそらすと、次の水槽に目を向けた。
イルカショーは可愛らしいイルカたちがダイナミックに飛び跳ねていく。
カッコよく飛び跳ねたかと思うと、可愛らしく手を振ったり、見ていて飽きない。
「すごい」「かわいい」
観客たちのそんな声が聞こえてくる。
当然梨央も目を丸くさせながら、撮影したり、拍手したりと終始楽しそうに過ごしていた。
「ジンベエソフト~!」
みんなでソフトクリームで乾杯して食べる。
「美味しい~」
「なかなかいけるね」
藤志朗のグルメっぽい話し方が鼻につくが、梨央のはじける笑顔に免じて忘れること子にした。
そうしてあっという間に美ら海水族館を見終わった。
梨央はお土産に前に二人で出かけた時に買ったジンベエザメのぬいぐるみのじんたの相方にとイルカの小さめの縫いぐるみを買っていた。
「1日目が終わった・・・」
奏汰はベッドに飛び込んだ。
1日目はこれで問題なく終わるはずだった。
奏汰にとっては明日こそ決戦日なのだから、今日はゆっくり寝たい。
そう思っていたのだが、スマホが震えた。
“藤沢小春”と表示されていた。




