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世界を救うために君を落とします  作者: 月丘 翠
作戦《7》ピンチ!彼女の心を取り戻せ!
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ピンチ!彼女の心を取り戻せ!①

梨央は、その後一週間も学校を休んだ。

心配でメッセージを送ったが、既読もつかない。

体調不良でそれどころではないのかもしれない・・・

でもやはり文化祭の時のことを思い出すと、何かあったのではないかと心配になる。

あの怯えた目は尋常じゃない。


「大久保、一週間も休んでるらしいな」

「あぁ」

何となく学校に行く足取りも思い気がする。

「風邪か?」

「・・・さぁな。俺にはわからんよ」

何も知らないことを再確認されているようでほんの少しイラッとしてしまう。

誠は気づいていないようで、「ふーん」と言ったまま特にその後は会話はなかった。

誠と別れて、教室に入ると梨央が席に座っていた。

いつものように本を読んでいる。


(良かった・・・)

梨央に声をかけようと歩き出すと、小春に呼び止められた。


「何?」

「ちょっとこっちに来て」

「ったく、なんだよ…」

小春に強引に廊下に連れ出されると、梨央の様子がおかしいと聞かされた。

「おかしいってどういう風に?」

「挨拶してもちょっと頭を下げるだけで笑いもしないし、体調どう?って聞いたら、大丈夫ですって敬語で答えて、すぐまた本を読み始めてさ…どう考えても変でしょ」

廊下から梨央の様子をみると、いつものように本を読んでるだけに見える。

「何であんな風になっちゃったのかな…」


文化祭であった派手な女子高生の顔が蘇る。


“これからもよろしくね。大久保梨央ちゃん”


(間違いなく、あの女のせいだ)


梨央は水族館デートに行った時に、人間関係が上手くいかなかったと言っていた。

その時にあの女もいたのだろう。


「ねぇ、奏汰、聞いてる?」

「おぅ。聞いてる」

「とりあえず今は、しばらくそっとしておいてあげるしかないよね」

そういって小春はため息をつきながら教室へ戻っていった。


放課後になって、奏汰は図書室へ向かった。

図書室の一番奥の人がいないところに梨央は座っていた。


いつもと同じなはずなのに、空気が違う。

少し近よると、目に光がない気がする。


少し前まではただ本を読んでいるだけでも物語を楽しんでいるような、そんな目をしていた。

でも今はただ眺めているように見える。


「梨央?」

奏汰が声をかけると、梨央はそっと顔を上げた。


「あのさ、今度きなこの散歩に付き合ってくれないか?きなこも梨央に会いたがってるし…」


空気を変えるように明るく話してみるが、話してる途中で、梨央は何も言わず本に視線を落としている。

まるで何も聞こえてないようだ。


「梨央、どうした?」

隣に座ってみるが、こちらを見ようともしない。


「梨央、あのこの前の文化祭で会った奴のせい・・」

話し終わらない内にスクッと梨央は立ち上がると、「ほっといてください」とはっきりとした声で言って、鞄を持つと図書室を出ていった。

「梨央・・・」


家に帰ると、またパソコンが動き出している。

「次はなんだよ、もう勘弁してくれ」

英人はパソコンの画面を見ずにベッドに横になった。

梨央の冷たい顔が蘇る。


「世界の崩壊なんてしるか、バカやろう」

そう言ってパソコンの画面を見ることなく、奏汰は枕に顔をうずめた。


翌日も梨央の態度は変わらず、クラスのみんなも文化祭で打ち解けた雰囲気だったのに、完全に元に戻ってしまったようだった。

今日もただ本を読んでいる。

藤志朗も話しかけにいくが、無視されてあえなく撃沈している。


「おい、どうなってるんだよ」

お弁当の卵焼きをかじっていると、誠がぐいっと椅子を寄せてやってきた。

「何が?」

「大久保だよ。あれじゃ雪女どころか氷の女だぞ」

「それは俺に言われても」

「お前なんかしたんじゃねーか?」

「してねーよ!」

思わず大きな声が出る。

周りが驚いてこっちを見ている。

「おい、大きい声出すなよ」

「お前がしょうもないこというからだろ」

何か出来るほど関われてない。

会話すらできないのだ。

「そうイライラするなよ。原因さえわかれば解決の糸口が見つかるだろ」

「原因?」

「突然ここまで変わるなんてなんかきっかけがあるだろ?普通」


それはなんとなくわかってはいる。


「そのきっかけになったことを解消してやればいいんだけどな」

「きっかけを解消・・・」


奏汰は人間関係が上手くいかず、人間不信になったようなことを話していた梨央を思いだした。


「その上で、お前ができることをしてあげたらいいんじゃないか?」

「俺ができることか・・・」

「そう。よく考えろよ」

誠はそう言いながら、奏汰のからあげをさっと奪い取った。


梨央に冷たくされるようになって1週間ほどが経った。


(世界の崩壊は止めれないかもな)


奏汰はため息をついた。

なんでこんなに悲しいのだろう。

陰キャで狭いコミュニティで生きてきた奏汰にとって、梨央がいなくなっても生活に支障はない。

ただ前の生活に戻るだけだ。

今までの生活に不満があったわけではない。


(じゃあなんで?世界が崩壊するから?)


奏汰はもう一度ため息をつくと、スマホをいじった。

水族館デートの時の写真が出てくる。

梨央がジンベエザメのぬいぐるみを持って、嬉しそうに笑っている。


(もう一回笑顔見たいな・・・)

あぁそうか、どうして悲しいのか自分の気持ちが理解できた気がした。


「俺、梨央が好きなんだ」

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