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世界を救うために君を落とします  作者: 月丘 翠
作戦《6》文化祭で彼女との距離を縮めよ!
30/40

文化祭で彼女との距離を縮めよ⑤

(眩しい…)


突然出てきたマレフィセントに注目が集まる。


「マレフィセント!君がこんなことをやったのか?」


梨央は台本と違うことに全く動揺することなく、少し笑みすら浮かべている。

こうなれば、合わせるしかない。


「え・・あぁ、そうだよ!私が呪いをかけてやった」


「なぜそんなことをしたんだ!」

「な、なぜ?え?それは、オーロラ姫が憎かったから?」


「この美しいオーロラ姫に嫉妬し、自分のものにしたかったからだな」

「え?自分の?あ、いや、そうよ!」


王子様(莉央)がまっすぐにこっちを見ている。

合わせろと言われているから、合わせてはいるが、この後の展開が読めない。


「君はオーロラ姫を誰にも渡したくない、それほどまでに愛しているんだ」

「は?」

「さぁ、来い!」

ぐっと王子に手を引かれて、オーロラ姫(藤志朗)が寝ているベッドの前に立たされる。


「目覚めのキスを」


(嘘だろ・・・)


梨央の方を見るが、にこっと笑っている。



ためらうマレフィセント(奏汰)に王子様がトンっと背中を押し、倒れそうになってオーロラ姫の顔が近づいてくる。


なんとか藤志朗の顔の横に両手をついて、キスをすることを避けることができた、はずだった。


それがまさかの藤志朗が目を閉じたまま、首を起こし・・・。


「きゃ~」と会場から歓声が聞こえる。

そこからの奏汰の記憶はない。



「そんなに怒らなくてもいいじゃない。ほら、たこ焼きおごってあげたでしょ?」

「こんなもんで、俺の繊細な心の傷が癒されるわけないだろ!」

プリプリしながら奏汰は、小春が差し出すたこ焼きにかぶりついた。

「ごめんね。奏汰君には了承得たって小春ちゃんから聞いてたから」

「藤沢!お前…」

「仕方ないでしょ。梨央ちゃんを藤志朗から守る必要があったし、事前に言ったら嫌がるって思ったしさ。でもおかげで評判上々よ」

「俺は良かったと思うぞ」

「誠、他人事だと思って…」

「まぁまぁいいじゃねぇか。過ぎたことだしな」

「そうそう」

「お前ら・・・!」

「じゃあ、俺と藤沢で焼きそばでも買ってくるから、待っといてくれ。ほら、行くぞ、藤沢」

そう言って誠と小春が焼きそばを買いにいった。


「本当にごめんね」

「いいよ、梨央のせいじゃないし。そもそも藤堂が無理やりキスしようと考えていたのが悪いしな」

あの後、藤堂はショックのあまり保健室に運ばれていったが、自業自得だ。


休憩所でたこ焼きを食べながら、周りを見ていると楽しそうに友達同士やカップルで店を回っている様子が見える。


「楽しそうだね」

梨央が羨ましそうに周りを見ている。


「・・・見に行く?」

「え?」

「一緒に回ろうって誘ってくれてだろ?」

「いや、でも、篠崎君と藤沢さんに悪いよ」

「いいよ、あいつらは。俺を馬鹿にしたバツとしてほっていく」

「行こう」

奏汰が立ち上がると、梨央は嬉しそうに後ろをついてきた。


「どこみたい?」

「えっとね、この展示とここのカフェに行きたいなって」

「了解」

奏汰と梨央が歩いていると、なんとなく視線を感じる。

梨央が美人だから当然だ。

なんとなく梨央と二人で歩いていることが誇らしい。

展示を見たり、カフェでケーキ食べたり、写真を撮ったりしている内に、あっという間に夕方になっていた。


「そろそろ、体育館行かないとな」

「最優秀賞が発表されるんだっけ?」

「そうそう。17時集合だからそろそろ向かわないと間に合わないな」

「そうだね」と歩き出した途端に梨央が歩みを止めた。


「あれ?大久保さん?」

派手めな女子高生が声をかけてくる。

制服的にここの学生ではないようだ。

梨央を見てみると、驚いた顔をして少し震えているようだ。

「転校してここの高校にいたんだね~。実は私も引っ越してこの辺に住んでるんだよ」

梨央がうつむいて、奏汰の影に隠れるようにして下がった。


「何々?また男たぶらかしてんの?」


(なんだ、コイツ)

梨央の手を握ると、「行こう」と背を向けて歩き出した。

こういう人は相手にしないのが1番だ。


「その子といると不幸になるよ?」


「それってどういう意味だよ」

自分でも驚くほど低く、怒りに満ちた声が出た。

また梨央が袖口をぐっと引っ張った。


「まぁいいわ。これからもよろしくね。大久保梨央ちゃん」

そう言って、女子高生は立ち去っていった。


「なんなんだ、あいつ。梨央、大丈夫か?」

梨央を見ると、ガクガクと小さく震えている。


「だ、大丈夫」

小さな声で返事をしているが、明らかに大丈夫そうな声ではない。


「いや、大丈夫じゃないだろ?あいつは何者?」

「中学の・・・中学の同級生・・・どうして・・どうしてここに」

奏汰は、震える梨央の肩を手で優しく包んだ。

「梨央、落ち着いて」


奏汰の声は梨央には届いていないようで、梨央はずっとぶつぶつつぶやいている。

「でもでも・・・どうして・・どうして・・・」

梨央はその場にしゃがみこんでしまった。


その後、なんとか体育館に向かったが、何も話さずぼんやりしている様子だった。

「最優秀賞は、眠れる森の美女!」

校長から発表され、クラスの面々は盛り上がっていたが、梨央の瞳には何も映っていないようだった。

初めて梨央を見かけた時と同じように笑顔はなく、奏汰は雪女に戻ったように見えた。

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