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世界を救うために君を落とします  作者: 月丘 翠
作戦《6》文化祭で彼女との距離を縮めよ!
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文化祭で彼女との距離を縮めよ②

「藤沢、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」


授業が終わり、掃除の時間となり、それぞれがバラバラと担当のところへ別れていく。

少し人が減ったところで、奏汰は箒で床を掃きながら、さり気なく小春に近づいた。


「何?」

「藤沢が脚本兼演出監督やったよな?」

「そうだよ。一回やってみたかったんだよね~」

「その脚本なんだけど、オーロラ姫ってさ、王子様の、その、あれで目覚めるだろ?」


「キスのことかい?」


今1番聞きたくない声が聞こえる。

「藤志朗」

藤志朗がカッコつけて立っている。


「もちろん、キスシーンはあるよね?」

「そりゃ、目覚めのシーンだからね」

藤志朗が勝ち誇った顔でこちらを見てくる。


「当たり前やけど、フリだからね。本当にしたら、私の拳が黙ってないよ」

小春の発言に藤志朗はぶるっと震えた。

腰が引けながらも「まぁでも事故ってこともあるからね」と藤志朗はフッと笑って去っていった。


(藤志朗のやろう。あれは何かす気だな)


怒りに身を任せそうになるのを堪えて、奏汰は箒を必死に振り続けた。



それからしばらくして本格的な練習が開始された。

「じゃまずは台本持ったままでいいから始めるよ」

小春の一言で練習が始まった。


そこからは焼きそば以上の地獄が待っていた。


梨央はさすがというべきか、一度やれば頭に入っていくようで、1週間も経てば立派な王子となっていた。

そして腹立たしいことに藤志朗もその辺りは上手い。


(それに比べて・・・)


「市川!もう練習始めて一週間なのに、何でセリフが言えないのよ!」

「そう言われても…これでも割と頑張ってるんだけど」

奏汰にとってセリフを覚え、演じるなんて経験のないことで、台本を読むだけで精一杯だ。

梨央は心配そうな顔をしてくれているが、藤志朗はバカにしたような顔でこちらを見ている。


(あいつ・・・)


「市川!居残りで練習ね。他の皆は大丈夫。また明日」

お疲れ、とみんなが帰って行く。

梨央は何か言いたそうに、こちらに来ようとしたが、藤志朗に促されて、帰って行った。


「どうなんだ?マレフィセントは」

「・・・最悪」

部活終わりの誠まことは笑いながら、「まぁ頑張れ」と肩を叩いてくる。

「俺らのクラスみたいに展示だったら良かったのにな」

「ほんと、それ。演技より何よりイヤなのは藤志朗にバカにされることだけどな」

藤志朗のバカにしたような嫌味な笑顔が浮かぶ。


「しかも居残り練習もあるし」

「マジで?それは大変だな」

「監督が藤沢だからな」

「それはご愁傷様」

「最優秀賞をとるって張り切ってるよ」

「まぁそれはそれとして、本気で取り組まないとやばいんじゃないか?ダサいとこばかり見せてたら、藤志朗にとられてしまうぞ」

「とられてしまうって、梨央は別に」

「梨央?お前らそんな関係なのか」

誠がにやにやした顔で見てくる。

「ち、ちげーよ!大久保は別に俺のもんじゃねーし」

「ほーう、そうですか。まぁいいけど、このまま藤志朗のペースになったら最悪だぞ。キスシーンも防がないといけないしな」


「キスシーン・・・」

王子様役の梨央とオーロラ姫役の藤志朗のキスシーンが思い浮かんで、ムカムカしてくる。

「とにかく上手くやれよ」

誠に言われて、もう何回目かわからないため息をついた。


正直、劇なんてどうでもいい。

形になればいいと思ってはいるが、藤志朗に負けっぱなしもなんだか悔しい。

「俺は梨央みたいに天才型じゃないからな・・・」


翌朝、奏汰は早起きをして、台本を片手に愛犬のきなこと散歩に出た。


「きなこ、付き合ってくれるか?」


きなこは嬉しそうに尻尾を振っている。

ベンチに紐を括り付けると、きなこを座らせる。

家で練習したいところだが、家だと間違いなく寝てしまいそうなので、公園でセリフを覚えるだけでもしようとやってきた。

朝も早いので、誰もいない。

スーッと息を吸うと、腹を決めてセリフを読み始める。


「16歳の誕生日の日没前に?・・・針で指を付き、永遠に・・この世から消えてしまうだろう・・・」

「これで永遠の眠りについた。ハハハハハ」


きなこはきょとんとした顔でこちらを見ている。


「俺の役、相当性格悪いな・・・」


「そうだね」


後ろから聞いたことある声がする。

振り返ると、梨央が立っていた。

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