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(27)振動する三角錐

〇第2空洞内

第2空洞は、雨上がりの草地のような匂いがしていた。決して不快な匂いではないが、何かが起こりそうな、心をぞわぞわさせるような匂いだと、木下は思った。


特調メンバーはゆっくりと、四方にあらゆるセンサーを向けながら慎重に進んで行く。

メンバーの一人が巨大なリングの前で立ち止まる。

「これって、金属・・・だよな?」

誰かがセンサーを向ける。

「ほぼ鉄だぞ、これ!でも少しも錆びてない。どういうことだ!」

「水があった時の塩分濃度は1%未満だとは言ってたが、それにしても少しも錆びてないって・・・」


木下は壁面のサンスクリット語をずっと見ている。

「三角錐だけじゃなく壁の文字もでたらめだ・・・全然意味をなしてない。一体これは・・・」


その時、メンバーのイヤフォンに大泉の声が響いた。

「木下! 特調チーム一旦撤収してくれ! 三角錐が振動している! 何かおかしい!」


切迫したような声に、メンバーが木下を振り返る。木下は頷きながら、

「いったん、空洞を出よう」

と言い、第2空洞を後にした。


〇大津ボルデメ管制室内

ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ・・・ッ

ボルデメに重低音が響き渡る。


「な、何この音・・・?」

思わず身をすくめためぐるに、かけるが素早くコンソールを確認して言った。

「ボルデメ側の負荷が跳ね上がってる・・・ログインしたあの人たち、相当な処理を走らせてるみたいね」


モニタの中では、大泉たちが暗い半円状の穴の手前で器材を展開し、三角のセンサーみたいなものを地面に並べていた。


「かける、これから追加のマッピングを開始するからもう一段負荷が増えるぞ」

との大泉の連絡に、

「また?」

と眉間にしわを寄せてめぐるが返事をする。


「地底湖の水位、その下の地下水脈の流れ、空洞内の気圧、断層の動きを検知する超高性能地震計をセットして、AIに地脈の動きを計算させるんだ。多分だが、水位が下がったのもこの地脈が関係している」

と手際よく機材を並べながら、大泉が説明する。


その時、モニタの映像が一瞬揺れた。

ボルデメの内部まで微かに震えが伝わる。

「い、今のは?」

「地震?」


〇大空洞へ続くコの字階段

オレはちくを入れたケージを背負いながら、一心不乱に階段を降りていた。その時、少し揺れが来た。

「おぉ、今揺れたな、ちく。また地震か」

オレはコの字階段を降りながら、

「もうすぐ着くよ」


〇大空洞内の上陸地

地底に降り立つと、大泉さんたちが三角形の機器を並べながら、慌ただしく作業をしていた。


「大泉さん!」

そう叫んで駆け寄ると、

「おぉ、八瀬君到着したか。今これを・・・」

と説明しだした大泉さんを遮るように、モニタを見ていた隊員の一人が声を上げた。

「大泉さん、数値が・・・異常な速度で変動しています!」


大泉さんは、

「どうした?」

といいながら隊員の元へ駆け寄った。


「このAIの解析結果見てください! 地脈の流れが・・・何て言えばいいのか・・・「吸われて」います! 明らかに自然現象とは思えません。あれは・・・」

隊員がちらりと白い三角錐の方を見る。

「──あの物体が起点です」


「吸われて? ちょっと待てよ・・・そんなの、アリか?」

大泉さんがモニタを覗きこむ。


ちくが短く「・・・にゃ」と鳴いた。

ケージから出て、じっと白い三角錐を見つめる。

「ちく・・・また何か見えるのか?」


その時、三角錐の表面の文字が一文字一文字、パラパラと光りだし、細かく振動を始めた!

「ヤバい、さっきと同じだ!」

ちくの目が光りだし、それに呼応するように点滅がだんだん早くなる!


第2空洞から出てきた木下さんたちが大泉さんの元へ駆け寄ってきた。

視線の先には三角錐に近づくちくがいる。

「あれが、大泉の話していた猫か?」

「あぁ。あの猫が三角錐に近づいたら細かな振動を始めて、刻印の文字が一文字ずつ光りだしたんだよ!」

と大泉さんが説明する。


三角錐に近づく猫と、光りだした刻印の文字を見つめて、木下さんが言う。

「三角錐の置かれていた場所が結節点で、三角錐が要石だとしたら、表面に掘られているのは陰陽師の呪文だと思ったんだ。地脈にわずかでも乱れが生じたら、それを元に戻すような呪文が、それこそ経典のように書いてあるかと思ったんだ。だけど、そうなっていないんだよ。「かみかぜ」のブリッジでも言ったが、本当に文字を適当に三角錐の表面にばらまいているとしか思えないんだ」

そう言って悔しそうに、ミラーボールのように、一文字ずつ光る三角錐を凝視する木下さん。


しかししばらくすると、目をぱちぱち瞬いて、何かを呟きながらその文字を拾っていく。そして、

「おぉ!! 大泉っ! わかったぞ、順番だ!」

大泉さんが、木下さんを振り返る。木下さんは三角錐をみつめたまま、興奮したように続ける。


「文字の光る順番だよ!光った文字を、順に繋げていくと文章になる!」

「なんて言ってる!」

「中・・・入る・・・急、急、如、律、令・・・!! 中に入れ、直ちに実行しろ、だ! この文字が繰り返し光ってる!」

「ちくわちゃんに三角錐の中に入れ、と言うことか!」


ちくは、三角錐にどんどん近づき、鼻が触れそうな距離にまで来た。三角錐の振動はより速くなり、文字の点滅も早くなる。

オレが不安そうに大泉さんを見ると、大泉さんも何かを言おうと、口を開いた瞬間、


ドンッッ・・・!!


湖底のどこか深くで、鈍い鼓動のような衝撃が伝わってきた。

モニタの中で、「かみかぜ」のクルーも特調の隊員も一瞬動きを止める。


という衝撃が空洞内に広がった。まるで音速を超えた瞬間の衝撃波を体全体で受けたような感じだ! その場にいた全員がしゃがみ込み、何人かは耳も塞いでいる。微かに耳がキーンとする。大泉さんが、オレに手で合図をしながら、

「ちくわちゃんを戻せ!」

と叫んでいるのがかすかに聞こえた。


オレは、ケージを抱えてちくの元に駆け寄る。三角錐の小刻みな高速振動で水がパシャパシャちくにもオレにも飛び散ってくる。オレは有無を言わさず後ろからちくを抱え、そのままケージに入れ、大泉さんたちの方へ向かって全力で走った。


わずか15mか20mなのに、何百mもあるかのように感じた。でも大泉さんたちの元に辿り着いた時、三角錐は振動も、光ることもやめ、沈黙した。


「止まった・・・?」

オレはゆっくりと三角錐を振り返った。


「やはり、ちくわちゃんだな」

大泉さんは木下さんと二言、三言話をして、かけるさん達とと「かみかぜ」を呼んだ。


「ボルデメ、大泉だ。今のデータ、取れてるな?」

「ばっちりですよ、大泉さん」

「「かみかぜ」中野艦長も聞いてくれ」

「聞いてる」

「ちょっと、作戦会議だ!」


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