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(21)新たなる敵!? 白い三角錐

静寂─。


まるで世界ごと音を失ったみたいだ。

この地底湖は、この間来た時もひんやりしていて神秘的だと思ったけど、今日はそんなことを感じる前に目を見張った。

水面が、ありえないくらい低くなっていたのだ。


オレは、ヘッデンで照らしながら独り言をもらす。

「・・・水位、こんなに低かったっけ?」


横を見ると、ちくがじいっと湖面を見つめている。

目がまるで、“あの時”のように、うっすら光ってる気がした。


「ちく、また何か感じてる?」

ちくはぴくりと耳を動かし、湖の奥へと向かって歩き出す。


その先は、この前までは完全に水没していたのに、今日は、底がむき出しになり、沈みこんだ岩肌が見えている。


─その時。


何かが浮かび上がってくる感じで、ぽこぽこと湖面が泡立ってきた。


「「かみかぜ」だ、ちくの言った通り!」

オレはちくを見ながら、懐かしいメンバーに会える喜びで顔がほころんでいた。


やがて、水の中からゆっくり浮かび上がってきたのは巨大な白い物体だった。


「え・・・「かみかぜ」じゃない!? 三角形の・・・え、これ何・・・?」


未知の、三角錐の形をした、白い小型潜水艦。いや、潜水艦と言っていいのかどうかわからない。


表面はフルメタルで真っ白。しかし、金属の光沢というより、石や氷のような冷たく硬い質感があり、表面には謎めいた古代文字のような刻印がびっしりと刻まれている。

まるで時間そのものを閉じ込めたかのようだ。


その時、ちくの背中の毛が逆立ち、尻尾がぶわっとゴンぶとに膨らみ、

「ぅにゃああああ・・・!」

と何かを警戒するように、普段とは違う大声で鳴いた。


オレも息を呑む。

「なんなんだよ・・・これ・・・」


白い三角錐は、まるで呼吸するように微かに動いていて、その振動で湖面には小さな波が絶えず生まれていた。

やがて三角錐は、オレたちの方を向くかのようにゆっくりと回転を始め、水辺ぎりぎりまで近づき、そして止まった。


「え、オレたちを認識してる?」

試しに、左に少し動いてみると、三角錐もその一片をオレたちの正面に向け、追うように回転してくる。


「なんだ・・・これ・・・」

オレはそう声に出していい、大きく息を吐いた。

ちくが、三角錐へと静かに歩み寄る。


「おいおい、ちくちくちく!」

例によって、オレの声などお構いなしにずんずん進み、水辺ぎりぎりでこちらを向いている三角錐の一辺をスンスンし始めた。


「ちょっと、ちく戻っておいで!」

とオレが声を掛けた時、文字のような刻印がパラパラと部分的に光り、小刻みに振動を始めた。

ちくがなおもスンスンを続けていると、パラパラの光は徐々に早くなり、振動も大きくなる! さざ波がちくの足元にも届くほど、三角錐が大きく揺れだした。


「ヤバい、ヤバい、ヤバいよ、ちく!一回戻って来いって!」


オレは、ちくのところまで走っていき、そのまま宇宙飛行士のヘルメット型ケージに押し込んだ。

にゃあん、と恋人から無理やり離されて悲しむような鳴き声を上げたけど、ここはとりあえず離れなくちゃダメだ! オレの本能がそう言っていた。

そして、山で熊に出会った時のように、背を見せずに、ゆっくりと、ゆっくりと後退した。


三角錐と距離を取ると、パラパラの光はゆっくりになり、振動も収まっていった。さらに離れると光も振動も完全に止まった。


そして、密室のはずの湖に、風が起こる。

「いや、風吹かないだろ、ここ・・・」


オレは、真っすぐに三角錐を見据えたまま、コの字型階段まで戻り、ゆっくりと登り始めた。三角錐は、常にオレたちを正面に捉えるように回転はするけど、地底湖から上がってくることはなかった。


コの字型階段を必死で登りながら考える。

「どうする? 大泉さんに知らせるにもここじゃ電波が無い。地上に戻るか。いや、いや、いや、ボルデメだ、まずボルデメに行こう!」


そしてボルデメ目指して、逃げるように階段を登り続けた。


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