表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/47

(20)後日談

「かみかぜ」の活躍によって東亜共和国による舞鶴湾沖EEZ内のレアアース鉱脈強奪を守ったことで、日本海防衛の重要性が国民に広く知られ、舞鶴基地にも潜水艦部隊が新設されることとなった。それに伴い、専用のドックも建設されることになったようで、ニュースによれば呉基地と横須賀基地から最新型潜水艦が1隻ずつ、計2隻が配属されるそうだ。


舞鶴海道や原潜「かみかぜ」の話はちっともニュースにならないので、相変わらず極秘のままなのだろう。


第7艦隊が鹵獲した東亜共和国艦隊5隻は、結局、沖縄の米軍基地に曳航されたそうだ。乗員は一通り日米合同の取り調べを受け、東亜共和国へ強制送還となったとニュースが言っていた。


駆逐艦の何とかいう艦長は米国への亡命を希望したらしいが、あっさりと拒否されたらしい。2隻の駆逐艦と2隻の潜水艦は、東亜共和国との折り合いがつかず基地に停泊したままになっているようだから、今頃は臨検で最新鋭艦の秘密も機密も全て丸裸にされてしまっていることだろう。返して欲しかったら頭を下げに来い、と日本の政治家には強気に出てもらいたいものだ。


大泉さんや中野艦長、ボルデメビューティペアに会って、舞鶴海道がどうなったのか、あの大空洞はどうなったのかなど、聞いてみたい気持ちもあったけど、任務に忙しい人たちだ。そんなことで連絡をするわけにはいかない。でもきっと元気にやっているに決まってる!


大冒険からしばらくしたある日、オレは久しぶりにちくを連れて吉田山に登ってみた。


BGMに選んだのは、昭和の名曲、ビューティペアの「駆け巡る青春」だ。足取りが軽やかになった気がしたし、ポップでなかなかいい曲だった。でも、その後しばらく「ビューティ、ビューティ~、ビューティペア~」のメロディが頭の中で無限再生されて大変だったけれども。


例の吉田山の廃屋はきれいに撤去されて、代わりに大泉さんの言った通り、一見、携帯かテレビの中継基地に見えるアンテナのようなものを備えたコンクリート製の建物が立っていた。


ドアはついていたが、周りがフェンスで囲まれているため近づくことはできなかったので、中の地下道が埋め立てられてしまったかどうかはわからなかった。一瞬フェンスを乗り越えて、とも思ったが、ちゃんと監視カメラもついていたので止めておいた。


「このカメラの映像もボルデメビューティペアが見てるのかな」

と、ちくに聞いてみたが、ちくはバッタか何かを追い掛けるのに夢中だった。ま、この方が猫らしくていいか!


小1時間もちくを遊ばせてから家に帰ったら、ちょうど宅配便屋さんがうちの前に停まった。

何か注文してたっけかな、と思ったら、なんとなんと、海自からちゅーる1年分、そして防衛省からもちゅーる2年分の配達だった!

国家予算を使えるとは思えないし・・・え!外交機密費!? ちくのために外交機密費! まさかな。どういうお金で調達したのかは知らないけど、二人とも律儀な人だ。


オレは吉田山の方を向いて、深々と頭を下げた。でもちくにちゅーるは厳禁なので、猫カフェにでも寄付するとしよう。


ちゅーるの段ボールを開けたら、「八瀬 健太郎様」と書かれた封筒があって、中には写真が一枚入っていた。

あの日、下船前に「かみかぜ」の上でみんなで撮った写真だった。


ついこの間のことなのに、なんだかとても懐かしく感じた。エアドロップでももらったのにわざわざ印刷して送ってくれるなんてありがたい、と思ってまじまじと見たら、写真の右上に、卒業アルバムでありがちな「当日の欠席者」的な扱いでボルデメビューティぺアが縁どられていて、ちょっと笑ってしまった。


「い~、これ「かみかぜ」の艦橋も写ってるからなぁ、やっぱSNSはマズイな」

ちょっと心配になったけど、まぁ誰かに見せたりしなければ問題ないだろう。


懐かしく、しばらく眺めていたらあることに気が付いた・・・。


写真に写っているちくの目が光っているのだ!

中野艦長と大泉さんの足元に座るちくわの目が、あの時のように光っていた。

「え、ちく、これって一体・・・」

何か能力を発揮しているときに光るちくの目。この時、あの空洞でちくは何を見ていたのだろう・・・と思って、ちくをみると、玄関先の土間でのどかに日向ぼっこ中だった。一体・・・


ちくがフツーの猫に戻ってしまってから数日経ったある日の夜明け近く、健太郎起きて、と声がした。


誰かが腹の上を踏み踏みする。ちくだ。するともう一度、健太郎起きて、と。

間違いなくちくだと思い、オレは飛び起きて、腹の上のちくを見つめる。

「聞こえるんだね、健太郎」

「へ? また喋るようになった!?」

「行くよ」

「え?」

「あの洞窟。地下の大空洞だよ。今日は彼らの船が来るよ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ