三十話
「眠ったか」
「はい」
レインはサランが頷くのをみて、トウィンカの髪を慈しむように撫でていた。
「かわいそうに」
レインはぽつりと呟いた。
かわいそう、とう言葉にどんな意味が含まれているのだろうか。ホープは状況をただ見守っていた。ラゼルと繋がりが深い、レインとサラン。その二人の真ん中でトウィンカは眠っている。二人の気持ちは誰が見てもわかるぐらいに、トウィンカを大事にしている。レインから見れば親友の忘れ形見である娘。サランから見れば、たった一人の姪。
その姿を見るたびにずき、と胸が痛む。
(なんで、胸が痛いんだ)
尊敬の眼差しを若いドラゴンから受ける二人が、大事にしているトウィンカというハーフドラゴン。トウィンカに嫉妬しているのだろうか。こんな状況なのに、とホープは自分を罵ってしまいたくなった。
胸の痛みに気づかないフリをして、三人に近づく。
「ホープ。ウィンを安全なところまで運ぶ。俺はここに残ってやることがあるから、二人の護衛を頼んでもいいか?」
護衛といっても、名ばかりのものだろう。トウィンカを抱いているとはいえ、サランは強いし、魔法も使える。レインは怪我が治ったばかりのホープを気遣ってくれているのだ。
「わかりました」
レインは瓦礫の山となった元部屋の向こう側へと歩いていった。
「では、いきましょう」
「はい」
サランに声をかけられ、ホープたちは瓦礫の山となった部屋をあとにした。




