第四話 歴史の余白と未来の新聞
ここから本当の謎や秘密に迫ってきます。黒田は結局何を残したかったのか?古新聞好きだという点を除いてごくごく普通の高校生の主人公はこの謎や秘密に惹き込まれていきます。
黒田誠一の不気味な手紙が頭から離れないまま
翌週、高校で公共の授業があった。
先生は黒板に「国家の発展」と書いた。
「国家が発展するためには、何が必要だと思いますか?」
クラスメートたちは、経済成長、技術革新、教育、外交など、思いついた言葉を挙げた。
先生は満足そうにうなずいた。
「そうですね。どれも大切です。
では、国家が衰退するのは、どんなときでしょう?」
今度は、なかなか手が挙がらなかった。
僕は、黒田の手紙を思い出した。 「失敗を認められなくなったとき、
ですかね」
先生がこちらを向いた。 「どういう意味ですか?」
「例えば、政府が失敗した政策を成功したことにして、
次の政策を考えたら、現実と計画がずれていきますよね。
そうなると、どれだけ優秀な人がいても、間違った前提で判断することになるんじゃないですか」 教室が静かになった。
先生は少し考えてから答えた。
「興味深い考え方ですね。ただ、国家の衰退にはさまざまな要因があります。単純化しすぎないようにしましょう」
「はい」
僕はそれ以上、何も言わなかった。 授業が終わると、佐々木が近づいてきた。
「お前、急にどうしたんだよ」
「何が?」
「授業で変なこと言ってたじゃん」
「変なことってなんだよ」
「失敗を認められなくなると国が衰退する、みたいな」
「別に変じゃないだろ」
「いや、そういう話をしてると、先生に面倒くさい奴だと思われるぞ」
佐々木は笑いながら言った。 僕も笑った。 「そうかもな」
「で、また古新聞?」
「まあな」
「飽きないねえ」
「飽きたら趣味じゃないだろ」 佐々木は肩をすくめて去っていった。
僕は教室の窓から、校庭を眺めた。 何も変わらない日常だった。
先生は授業をし、生徒は宿題を忘れ、購買のパンは昼休みには売り切れる。
それでも、僕には少しだけ違って見えた。
新聞に書かれていることだけが歴史なのではない。
新聞に書かれなかったことも、歴史の一部なのだ。
そして、僕たちが今していることも、いつか誰かの古新聞になる。
そのとき、未来の誰かは、僕たちの時代をどう読むのだろう。
優秀な時代だったと笑うのか。
愚かな時代だったと呆れるのか。 それとも、何も気づかずに読み飛ばすのか。
鞄の中のノートに手を置いた。
黒田誠一の手紙は、まだそこに入っている。
彼が残した言葉を思い出した。
『どうか、私の文章を読んでほしい。そして、私の文章も疑ってほしい。』
僕はうなずいた。 わかったよ、黒田さん。
あなたの言葉も、疑ってみる。
そして、あなたが隠したものを、最後まで読み尽くしてみる。
そのとき、僕はまだ知らなかった。
黒田が残した新聞は、これで全部ではないということを。
そして、次に見つける新聞には、僕自身の名前が載っているということを。
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