新王の戴冠と、旅立ちの朝
王都に、夜明けが訪れようとしていた。東の空が白み始め、中央広場の鐘が、新しい時代の到来を告げるかのように、厳かに鳴り響く。新たな王が今日、即位式をもって正式に誕生するのだ。
新たな王であるレオンハルト・フォン・アークライトの即位式は、簡素ながらも、荘厳な雰囲気の中で執り行われた。玉座の前で、彼は民と、そして天に向かって誓いを立てる。
「私は、このアークライト王国を、力ではなく、民一人一人の心で繋がる国とすることを誓う。二度と、偽りの神の言葉に惑わされることなく、この国の真の平和と繁栄のために、我が身を捧げる」
「そして我々は違いを乗り越え、手を取り合わねばならない。融和こそが我々の力となる!」
その言葉に、広場を埋め尽くした民衆から、割れんばかりの歓声が上がった。それは、圧政からの解放を喜ぶ声であり、新たな王への期待に満ちた声だった。俺は、その光景を城壁の上から静かに見守っていた。ようやく、この国にも本当の平和が訪れようとしている。
即位式には無実が証明され監禁を解かれたレンの父、アルベルト男爵と兄達の姿もあった。そして、その姿をみたリシアは俺の隣で安堵の涙を流していた。
式の後、新国王となったレオンハルトは、旅立ちの準備を進める俺たちの元へやってきた。その顔には、王としての威厳と、友としての親しみが同居していた。
「レナード、そして皆。本当に、感謝している。君たちがいなければ、この国の未来はなかっただろう」
彼は、俺たち一人一人に深く頭を下げた。
「この旅は、もはや個人的な戦いではない。この世界の秩序を乱す最大の脅威を排除し、真の世界平和を確立するための、極めて重要な任務だ。アークライト王国は、その任務を全面的に支援することを約束する」
彼の瞳には、俺たちの帰還と、その先にある新たな「完璧な秩序」の確立を静かに待つ、強い意志が宿っていた。
玉座の間では、囚人服に身を包んだルシアンが、弟である新王の補佐として、黙々と政務に取り組んでいた。彼の顔に、かつての傲慢さはない。ただ、自らの罪を償うため、王国の再建に尽力することを誓った男の、静かな決意だけがそこにはあった。
ストームウィングの作戦室で、俺たちは最終的な打ち合わせを行っていた。テーブルの上には、砂漠連合の広大な地図が広げられている。
「砂漠連合は、大小様々な部族国家の集合体だ。一筋縄ではいかないだろうな」
セリナが、腕を組んで地図を睨む。
「ええ。特に、黒幕の目的地である『沈黙の谷』は、古来より聖地とされ、外部の者の立ち入りを固く禁じている場所。まずは、連合内で最も力を持つ部族と接触し、交渉する必要があるでしょう」
エレノアが、収集した情報を冷静に分析する。彼女の言葉通り、力ずくで進むのは得策ではない。
「交渉、ねぇ…。面倒なこった」
セレスティアが、愛用の工具を手入れしながらぼやく。
「だが、その間にこいつの最終調整を済ませておける。砂漠の暑さと砂嵐にも耐えられるように、冷却システムと防塵フィルターを強化しておいた。いつでも飛ばせるぜ」
「ありがとう、セレスティア。助かる」
俺が礼を言うと、リシアが心配そうに口を開いた。
「お兄様、砂漠は水や食料も貴重だと聞きました。回復薬だけでなく、保存食も多めに準備しておきますね」
妹の気遣いが、荒んだ心を温めてくれる。
その時、レオンハルトが作戦室に入ってきた。彼の手には、一通の封蝋された書簡があった。
「レナード、これを持って行け。私の情報網を駆使して手に入れた、砂漠連合に関する最新の情報と、連合の有力者への紹介状だ」
彼は、俺の予測不能な行動が、自身の完璧な情報収集能力を補完し、より確実な結果をもたらすと信じていた。
「だが、情報だけでは測れないのが人間だ。そこから先は、お前のやり方で道を切り開いてくれ」
俺は、レオンハルトから書簡を受け取り、固く頷いた。
(黒幕の『ゲーム』を終わらせる…)
そのために、俺は俺の全てを懸ける。この異世界で得た仲間との絆、そして、俺が唯一奴を上回れる可能性のある、FPSの知識と経験。それらを最大限に活用する覚悟を、改めて固めた。
砂漠連合。そこは、俺がまだ知らない、古代文明の謎が眠る場所。そして、黒幕が次のステージとして選んだ戦場だ。奴は、そこで何をしようとしているのか。「古の門」と、その地にはどんな関係があるのか。新たな戦いの予感が、俺の肌をピリつかせる。
レオンハルトは、そんな俺の心を見透かすように言った。
「黒幕は、世界の秩序を乱す、予測不能な異端者のような存在だ。そして、その異端者に対抗できるのは、奴の論理を超えた、お前のような存在だけだ。お前の持つ人間的な直感、仲間との絆…それら全てが、奴の『歪んだ完璧』を打ち破り、この世界に真の『完璧な秩序』をもたらすための、不可欠な力となるだろう」
彼の言葉は、俺への最大の信頼の証だった。
出発の朝。
王都から少し離れた森の開けた場所に俺たちはいた。
国を救った英雄の旅立ちには相応しくないひっそりとしたものだったが、ストームウイングを公にすることは出来ないため隠れて出発するしかなかった。
だが、レン達は晴れやかな気持ちでストームウィングのタラップを上がった。祖国を救うことができたのだ!
見送りに来たレオンハルトと、固い握手を交わす。
「行ってくる」
「ああ、待っている。友よ」
ストームウイングが離陸態勢に入る直前、レオンハルトが叫んだ。
「レナード!」
「必ず、生きて帰ってこい!そして、お前が帰る頃には、この国を、世界一の国にしてみせる!」
その言葉に、俺は拳を突き上げて応えた。
ストームウィングは、新たなる王への期待に沸く王都の歓声を背に、蒼穹へと舞い上がった。俺たちの胸には、黒幕の正体と「古の門」の真実を解き明かすという、燃えるような決意が宿っていた。
目指すは、灼熱の砂漠。そして、そこで待ち受ける、因縁の敵。
(待ってろ、必ずお前の正体を暴いてその計画を止めてやる!)
読んでいただきありがとうございますm(__)m
今回の話で第9章が終わり、第10章に入ります。
入院の関係で更新がのびてしまい申し訳ありませんでした。
ゆっくりとではありますが完結まで書いていけたらと思います。
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