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異世界リロード 〜没落貴族ですが、現代FPS知識で戦場を無双します〜  作者: 雪消無
第9章 : 『王国の闇と真実の探求』

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兄弟の対峙

 俺たち四人は、ルシアンが消えた玉座の奥、王家の人間だけが知るという秘密の通路へと足を踏み入れた。


 ひんやりとした石造りの通路は、長く、そしてどこまでも続いているように感じられた。足音だけが、静寂の中で虚しく響く。壁は湿気を含み、触れると冷たい。松明の炎が揺らめくたびに、影が不気味に踊った。


「この通路は、王家の最重要区画、『星読みの間』に繋がっている」


レオンハルトが、壁に灯された魔導ランプの光に照らされながら説明した。彼の声は低く、緊張が滲んでいる。


「代々の国王が、国の未来を占うために使ったとされる、特別な場所だ。兄上は、そこで神の信託を受けようとしているのかもしれない」


「星読みの間……」


リシアが、不安げに呟いた。彼女の手が、俺の服の裾をぎゅっと掴む。


「大丈夫だ、リシア」


俺は妹の頭を撫でた。

セリナは剣を構えたまま、鋭い視線で周囲を警戒している。


「油断するな。いつ襲撃があってもおかしくない」


「ああ」


俺も『軌跡の刃』を握りしめた。


---


通路を抜けた先にあったのは、息を呑むほどに美しい、巨大なドーム状の空間だった。


「……これは」


思わず、言葉を失う。


 天井は一枚の巨大な水晶でできており、そこには王都の夜空が、まるで本物の星々のように煌めいている。星の光が水晶を通して降り注ぎ、床に幻想的な光の模様を描いていた。空気は澄んでいて、どこか神聖な雰囲気が漂っている。


そして、その中央。


星々の光を一身に浴びるように、ルシアンが立っていた。


「兄上!」


 レオンハルトの、悲痛な声がホールに響いた。その声には、怒りよりも悲しみが強く滲んでいる。彼は剣を構えることなく、ゆっくりと兄へと歩み寄る。一歩、また一歩。その足取りは重い。


「もう、おやめください!あなたは、何者かに操られているのです!」


「操られているだと?」


ルシアンは、弟を嘲笑うかのように鼻で笑った。その顔には、狂信者特有の歪んだ確信が浮かんでいる。


「違うな、レオンハルト。私は『導かれて』いるのだ」


彼は両手を広げ、まるで星の光を抱きしめるかのような仕草をした。


「お前のような敗北者には理解できまい。この国を真の繁栄へと導く、唯一の神の御心になど」


その言葉に、レオンハルトは立ち止まり、静かに、しかし力強く首を振った。


「いいえ、兄上」


彼の声は、震えていた。


「あなたはただ、利用されているだけだ。あなたの純粋な愛国心を、その心の隙を、あの黒い影に付け込まれたに過ぎない!」


「黙れ!」


ルシアンの怒声が響いた。


俺は、二人の王子の対話に割って入った。


「ルシアン殿下」


俺は一歩前に出た。


「答えろ。父君であるエドワード国王を殺めたのは、あなた自身の意志か?それとも、その『神』とやらの命令か?」


俺の直接的な問いに、ルシアンの表情が初めて大きく歪んだ。

彼の瞳に、一瞬、深い苦悩と罪悪感の色が浮かぶ。拳が、小刻みに震えている。


「……そうだ」


ルシアンは、絞り出すように言った。


「私が手にかけた」


「兄上……!」


レオンハルトが、苦しげに声を上げた。


「だが」


ルシアンは続けた。その声は、自分に言い聞かせるように強く、そして必死だった。


「それも全ては王国のため!父上は偉大だった。だが、その優しさゆえに、この国を緩やかに滅びへと導いていた!」


彼は拳を握りしめ、天を仰いだ。


「旧態依然とした貴族社会、終わりの見えぬ紛争……それらを断ち切るには、強大な力と、時に非情な決断が必要なのだ!」


「神は、私にその覚悟と力を与えてくださった!」


ルシアンの声が、ホールに響き渡る。


「父上の死は、この国が生まれ変わるための、必要な犠牲だったのだ!」


 彼の告白は、狂信者の戯言でありながら、同時に悲痛なまでに純粋な愛国心に満ちていた。彼は、心の底から国を思い、その未来を憂うが故に、最も重い罪を背負うことを選んだのだ。


俺の胸が、痛んだ。


 レオンハルトは、その言葉に深く目を閉じた。

失望、憐憫、そして兄弟としての愛情。様々な感情が入り混じった、複雑な表情を浮かべて。


「兄上……」


彼は静かに目を開けた。


「あなたは、やはり何も変わっていない」


「何?」


「かつての私と、同じだ」


レオンハルトは、一歩前に出た。


「完璧な論理、完璧な答えを求め、そのために最も大切なものを見失っている」


「黙れ!」


「父上が守ろうとしたのは、国の形だけではない」


レオンハルトの声は、力強かった。


「そこに生きる民の、ささやかな幸福そのものだった。それを犠牲にして手に入れた繁栄に、一体何の意味があるというのですか!」


ルシアンは、レオンハルトの言葉に激しく反論した。


「黙れ!民の幸福だと?」


彼の顔が、怒りで真っ赤に染まる。


「目先の幸福に惑わされ、大局を見誤るのが、お前たちの限界だ!神の視点から見れば、全ては些細なこと!私には、この国の数百年先まで見通す、神の知恵が授けられているのだ!」


だが、その言葉とは裏腹に、彼の瞳にはわずかな動揺が走っていた。


 民衆を率いて現れたレオンハルトの姿、そして次々と寝返っていく兵士たちの姿が、彼の信じる「完璧な計画」に亀裂を生じさせていた。


 彼は、黒幕の真の目的も、その全体像も、何一つ理解してはいなかった。ただ、与えられた「神の知恵」が絶対であると信じ込まされているだけなのだ。


「神の知恵、ですか」


レオンハルトは冷ややかに言った。


「では兄上、その神とやらに問うてみてはいかがです?なぜ、あなたの計画はこうも容易く崩れたのか、と。なぜ、民はあなたではなく、この私を選んだのか、と」


彼は一歩前に出た。


「あなたの信じる『神の信託』は、あまりに不完全だ。それは、人の心を計算に入れていない。仲間との絆という、論理を超えた力を理解していない」


レオンハルトは、まっすぐにルシアンを見つめた。


「それは、かつて私がレナードに敗れた理由そのものだ。あなたの神は、私と同じ過ちを犯している。そんな不完全なものが、どうして神であるものか!」


レオンハルトの言葉は、鋭い刃のように、ルシアンの信仰の根幹を突き刺した。


「だ、黙れええええっ!」


論理的な反論ができないと悟ったルシアンは、獣のような雄叫びを上げた。


 彼はもはや、俺やレオンハルトの言葉に耳を貸そうとはしなかった。自らの信じる正義が揺らぐことを恐れるように、剣を握りしめる。その手は、激しく震えていた。


「神を疑う者、秩序を乱す者、全てが我が敵だ!」


ルシアンの声が、狂気を帯びて響く。


「ここで、まとめて粛清してくれる!」


対話は決裂した。


ルシアンは、黒幕の力をその身に宿し、暴走を始める。彼の体から、黒いオーラが溢れ出した。


俺は、暴走するルシアンを見据え、覚悟を決めた。

彼を救うためにも、その背後にいる黒幕を、この場で必ず討つ。


「セリナ、リシア」


「ああ」


「はい、お兄様」


レオンハルトもまた、静かに剣を抜いた。その瞳には、兄への悲しみと、王国の未来への責任が宿っていた。


「レナード、行くぞ」


彼は剣を構えた。


「兄上を止める。それが、私がこの国に築くべき、新たな『秩序』の第一歩だ」


二人の王子と、異世界から来た英雄。それぞれの決意が交錯する中、星見の間は、運命を決する最後の戦いの舞台となった。

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