第105話 三大天使降臨(Part1)
その日の晩、二人はネルガルからいくつかあるクエストを受注する。それによれば、冥界で育つ野菜や果物を探し出して、畑を作ってほしいとのことだ。他にも、武器や防具を作る素材集めなども一緒に受注している。
「集めるアイテム多いね」
「でも、地上や魔界で集めるアイテムはクランの倉庫に入っているから、それを使えば問題なさそう」
「となると、天界産のアイテムが問題だね」
「だから、まずは植物が生えていそうな北を目指そう!」
ネルガルからのクエストは少しずつ進めるとして、二人が目指す場所も決まる。とはいえ、冥界の時とみたいに特殊な技能を要するわけでもなく、二人だけでは心もとないので、ユーリが集めてきた4人がパーティーに入る。背の高い騎士の男子と祭司の女子、中学生くらいの男子二人がそれぞれ黒と白のローブを着ていた。
「ユーリとは何回か一緒にクエストをしたけど、アイリはこっちだと初めましてだな。アークだ」
「ミレイよ。よろしくね」
「あっ、同じクラスの! アイリです、よろしくお願いします」
「魔王様って意外と謙虚なんだな。俺は黒魔導士のクロウだ。よろしく頼む」
「白魔導士のシロウです、よろしくお願いします」
「というわけで今回は元も含め【リベリオン】のフレと一緒にやることにしたわ」
「それは良いけど、2ヒラ編成で火力足りる?」
「ああ、北のボスモンスターはめちゃんこ強いって聞いたぞ」
「大丈夫。情報筋から攻略方法は聞いているから。それに今回は採取メインでいくから祭司系のスキルを使える人員を増やした方が手っ取り早い」
「なるほどね。こういうパーティーにした理由もわかったし、レア職業が3人。こんな豪華なパーティー、そうそうお目にかかれるものでは無いわ」
「だよな。ある意味、ドリームチームだ」
「いや~、それほどでも~」
「クロウ、調子に乗らない」
クロウがひっぱたかれたところで、一行は北へと進んでいく。その道中、以前にも出会ったことのある雲形のモンスター、クラウドが現れてアイリたちに襲い掛かってくる。
「クラウドの突進は引き付けて……【加速】して躱す!」
「通り過ぎたところをアースニードル!」
勢い余ったクラウドが針に突き刺さって消滅していく。幅広く属性攻撃を吸収できるクラウドも、吸収できない属性攻撃には弱いようだ。それを見たアイリも負けじと純粋な闇属性攻撃であるカースを放ち、クラウドを倒していく。
「こうも苦戦しないと回復のしがいが無いわ」
「そういうなって。楽に越したことはないんだからよ。さてと、こっちはクールタイム減少魔法をかけておくか。ヘイスト」
シロウのかけた魔法により、魔法の回転率がよくなった魔導士の二人はクラウドをあっという間に葬り去っていく。
(やっぱ魔導士2人パテだと楽ね~)
一番最初はHPを大きく削られた雑魚敵も、事前の情報集め、最適パテの研究が進んだことで大番狂わせもなく順調に倒していく。もはや彼女たちを止める手段もないモンスターたちは草原の奥深くまで侵入を許すのであった。
「さてと、ここが最奥部一個手前のエリアね」
「手分けして採取する前にボス情報を共有した方がいいんじゃねえか」
「わかった。ここにいるボスはキングクラウド。名前からわかるようにクラウドの上位種よ。普通のクラウドと違って、こちらから属性攻撃をしなくても各種形態に変化。攻撃範囲も広いから、回避スキルの使い時を誤ると痛い目に合う相手よ」
「攻略法は?」
「水・風属性で攻撃してわざとタイフーンにして固定化。雨や雹による継続ダメージをミレイとシロウの回復結界を交互に張って実質無効化。本体からの攻撃パターンは単調だからメインタンクアーク、サブタンク私で惹きつける。あとはアタッカーのアイリとクロウに任せる」
「OK。それで行こう」
「採取は2時間くらいでどうかしら」
「それだけあればこの場所にある素材を回収できるだろうし、早く集まるようなら切り上げてボス戦に挑もう」
手分けしてアイリたちは草原に生えているアイテムを採取し始めた。小川に沿って何かしらの植物が生えているのではないかと考えたアイリはじっくりと素材となりそうな植物を見て、手に取ってみる。
「やっぱり、この苺みたいなのクエストアイテムだったんだ。ラッキー」
「こっちはインゲンみたいなの見つかったよ」
「確かソラマメインゲンだっけ」
「そうそう。どっちよりかで気になったやつ。そっちのはソライチゴだっけ」
「うん。この水色の苺。実が熟しているのかがよくわからないよ」
「ほんと。ほかにも生えているみたいだし、頑張って探そう」
「うん!」
二人がミレイとシロウのアイテムが近隣にまだ残っているかわかるスキルを使って、見落としがないかを確認しながら採取すること1時間くらいが過ぎたあたりで大方のアイテムを拾い終わる。
「あとはリポップ待ちね」
「周りのプレイヤーも採取しているから早く終わったな」
「そこは仕方がない。それじゃあ、お待ちかねのボス攻略タ~イム!」
「いよ、待ってました」
ユーリたちが足を踏み入れていくと、そこには噴水のように水が噴き出ている泉があった。そして本来ならば、天界の水源を壊そうとするキングクラウドが現れるはずだが、今回は違っていた。泉の前には事前情報にはなかったいかつい男の天使がいたからだ。
「えっ、こんなイベント……私、知らない」
「貴様らは何者だ」
「俺はクロウ。おっさんこそ何者だよ」
「おっさん……私は大天使ラファエル。この泉エリアの管理者だ」
(おいおい、こんなイベント、ライチョウさんの動画にあったか?)
(いいえ、まったく。でも、そのおかげで私のチャンネルの視聴者が一気に増えそう)
ミレイは新情報を売り込むチャンスだと思い、先ほどから録画機能がきちんと動いているか入念にチェックしている。そんなことを知らずに、ラファエルらは会話を続ける。
「貴様らからは堕天使のにおいがする」
(あちゃ~、これってネルガルと会ったかどうかでイベント分岐があるタイプかぁ)
「その様子だとあったようだな。貴様たちこそがルシフェルが言っていたスパイ!ここで成敗してくれる」
「話し合いで解決できる雰囲気じゃない。戦闘準備!」
「おうよ!」
騎士であるアークが前に出てラファエルの気を引き付けつつ、突進する。自身に防御バフをかけており、一撃では倒されないという自負もあった。だが、ラファエルはそんな安っぽいプライドを打ち砕くかのように彼の盾に拳を叩き込むと、盾は砕け散り、身体を吹き飛ばす。
「うぐっ……シールドブレイクの能力持ちかよ。こいつ喰らうと戦闘が終わるまで壊れたままだからめんどくさい。魔法とか使いやがれ!」
「悪党の貴様らを倒すのに御業を使う必要はない。この身体1つで十分だ」
「へえ~、だったら!」
今度はユーリがラファエルの前へと切り込んでいく。ラファエルが自慢の拳を叩き込もうとするも、それをすんで避けながら、クナイで切りつける。ラファエルがラッシュを叩き込むも、その動きに慣れているかのように避ける。避ける!
「貴様、慣れているな!」
「この距離の戦闘は体に叩き込まれたからね!」
対人における経験値は積んできたユーリにとって拳だけで戦おうとするラファエルはまだ組みやすい相手だ。拳だけではらちが明かないと思ったのか蹴りも織り交ぜ、クナイの射程範囲外かつ自身の攻撃範囲内に収めれる距離を取ろうとする。
(硬い筋肉に阻まれて刃は通らないし、ポジショニングも上手い。さてと、どうしようかな)
「避けてばかりでは勝てんぞ!」
「ご忠告どーも、アイリ!」
「シャドーロック!」
「むっ!?」
こっそりと背後に回ったアイリがラファエルの動きを一瞬だけ封じる。そのわずかな猶予の間に忍者刀に切り替えたユーリと攻撃の機会を伺っていたアークが左右から同時に襲い掛かる。
「迅雷の太刀!」
「セイクリッドソード!」
「その程度の攻撃で我が鍛えられた肉体を貫けると思うな!」
シャドーロックによる拘束を力づくで解いたラファエルは彼女たちの剣を片手で受け止める。いや、受け止めさせた。これでラファエルは両手が塞がれた状態で、次の攻撃を受けなければならない。
「クロウ、アイリ、バフはしこたま乗せたぜ!」
「行くぜ、ダークフレイム!」
「こっちも闇の炎でカースインフェルノ!」
前後から襲い掛かる闇の炎がラファエルに襲い掛かる。いくら呪いや火傷にならない天界といえどもダメージは通る。特にアスタロトでさえ高い評価をするアイリのカースインフェルノはラファエルと言えども手傷を負わせる程度には十分な火力である。それゆえにユーリとアークを弾き飛ばした彼はとっさに光のバリアを張って自身の身を守った。
「魔法、使いましたよね」
「……ああ、今回は大人しく引こう。だが、悪ではないとはいえ、堕天使に与するというのであれば次は容赦はしない。肝に銘じておくのだな」
ラファエルはそう言い残して、どこかへと飛び去っていく。ひとまずは一件落着ということで、ボスエリアから退去した6人はリポップした素材を集めつつ、ヴァルハラへと戻っていくのであった。




