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毒毒影分身は最強です~状態異常特化の私はVRMMOを楽しむ~  作者: ゼクスユイ


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第104話 天界と冥界

 去年、本家のリヴァイアサンにやられていたことがあるアイリとユーリはリベンジマッチだと気合を入れて攻撃を放つ。


「まずは先手必勝!風遁・迅雷の太刀!」


「ダークエンチャントからのダークサンダー!」


 水属性に大ダメージを与える雷属性の攻撃を加える二人ではあったが、実力差が大きく、HPゲージは微動だにしない。


「まるで効いてないよ!?」


「でも、戦えるってことは攻略方法があるはず」


「もう、じれったいわね。グガランナやりなさい」


『ブモオオオオオ!!』


 鼻息を荒くしながら、角に黒い電流をためて一気に放つ。高圧に圧縮されたそれはアビスリヴァイアサンの体表を焼いていき、HPも1割ほどは削られていた。


「こっちの攻め手はグガランナによる攻撃しかない」


「ってことは、グガランナさんを守ればいいんだね」


「もしかすると、エレシュキガルも守らないといけないかも!口寄せの術!」


 アビスリヴァイアサンが放った高水圧の水流を大蛞蝓が吸収し、身体を巨大化させる。体の大きさだけを見れば互角といったところだ。のっそりとした動きだが、その巨躯を利用してアビスリヴァイアサンにぶつかっていく。


『なめなめ~』


「よし、そのまま押し倒して!」


 ユーリの大蛞蝓が湖に入るとさらに肥大化していく。巨体同士のぶつかり合い、じわじわと押されていくアビスリヴァイアサンは高水圧のウォーターカッターで大蛞蝓を切り刻んでいく。切り刻まれた大蛞蝓の肉片の隙間から、アイリが【固定砲台】をはじめとするスキルの効果を乗せたカースインフェルノを放った。焼かれていくリヴァイアサンに対し、グガランナの電撃がさく裂し、追い打ちをかける。


「スキルもいろいろと使ったのに私たちだけだとあまり削れていないよ」


「でも、順調に削れているからよし。次、攻撃来るよ」


「みんな集まって!ダークフラッシュからのシャドーダイブ!」


 泥水をまとって突進してきたリヴァイアサンを影に潜ることで回避する。だが、くるりと旋回し、クールタイムに入ったところを狙ってくる。


「今度は私の番!土遁・砂隠れの術!」


 土の中へと潜ったユーリは2撃目も回避する。そして、グガランナの3発目の電撃がさく裂し、リヴァイアサンのHPを削る。


「よし、クリティカル!残り半分が見えてきた」


「油断せずに行こう」


 今度は空中に魔法陣が描かれ、鋭い口を持った小魚の魚群がミサイルのようにアイリたちに襲い掛かる。


「ブラッディミラージュからのカースバリア!」


「口寄せの術・大ガマガエル!」


 分身を利用して幾重にも張られていく黒いバリアが魚群の突進を防いでいき、その横からユーリが呼び出したカエルが魚たちを一飲みで捕食していく。時間を稼いでいる間にグガランナの雷撃によってリヴァイアサンのHPが半分を切ると、湖にある泥を全身にまといはじめ、黒い鎧姿へと変貌していく。


「うわ~、強そう」


「第二形態って感じかな」


 鎧から生えているトゲがホーミングミサイルのように空を飛んでいるアイリを追跡していく。MP消費の低いカースやポイズンショットでそれらを打ち落としていくも、大きく口を開けたアビスリヴァイアサンからのブレス攻撃が襲い掛かる。


「守れ、口寄せの術・大蛇!」


 ユーリが呼び出した大蛇がアイリの体を中心にとぐろを巻き、アビスリヴァイアサンのブレスから身を挺して守る。


「ユーリちゃん、炎攻撃!」


「OK!火遁・葬送業火の術!」


 髑髏状の炎がアビスリヴァイアサンに襲い掛かり、鎧が溶けるのではないかと思うほどの熱量を周りにまき散らす。だが、それほどの火力でもアビスリヴァイアサンには傷一つ負わせることができない。だが、熱せられた鎧に対してアイリがダークブリザードで急速冷凍するとあっさりと砕け散っていく。


「グガランナ、今よ!」


 エレシュキガルがグガランナにバフをかけて、素肌が露出した箇所に電撃を加えて削っていく。あと2,3回ほど攻撃を与えればいいというところで、今度はアビスリヴァイアサンが黒い雨を降らしていく。


「分身が消えたし、HPも減っていくよ!? 毒とかは受けないはずなのに」


「雨が攻撃判定みたい。厄介にもほどがあるでしょ」


 継続ダメージが入るようになったことで長期戦は不利。自分らのHPの減少量を見るとグガランナの攻撃は1発が限度といったところだ。クリティカルお祈りしても、アビスリヴァイアサンのHPが削りきれるかは怪しい。

 どうやって倒そうかと作戦を立てている彼女たちをあざ笑いながら、アビスリヴァイアサンは雨のしずくを集めだして、無数の槍を作り出し、飛ばしていく。


「形を変えようとも水は水。重量の影響は受けるはず!ハイグラビティ!」


 目の前にある槍を重力で押しつぶしていく。そして、解除した瞬間にユーリが雷をまとった忍者刀で切りつけると、先ほどとは違い傷を負わせることができた。グガランナの度重なる攻撃で皮膚が弱まっていたのかもしれない。とはいっても、その巨体から見れば切り傷のようなものだが、それを見たユーリがアイリに話しかけたのち、再び飛びかかる。アビスリヴァイアサンは意に介さないかのようにユーリに向かって水の刃を放ち、迎撃を狙う。


「空蝉の術!」


「ユーリちゃん、大丈夫!」


「大丈夫。ちゃんと役目は果たしたよ」


「それじゃあ、いくよ!急成長!エナジードレイン!」


 ユーリに傷口にまいてもらった種が成長し、アビスリヴァイアサンの体内へと向かっていく。いくら堅牢な体皮をもっていたとしても、中身まではカバーしきれない。はびこっていく根はアビスリヴァイアサンの筋肉や脂肪を栄養源にしながら、さらに成長を加速させていく。

 その原因を取り除こうとアビスリヴァイアサンが自傷してくり抜くも、アイリが渡したのは雑草の種。根が少しでも残っていれば生えてくる厄介なものだ。いくら自傷しても取り除けないそれは、エナジードレインの組み合わせで着実にアビスリヴァイアサンを弱らせる。


「グガランナ、やっつけなさい!」


 グガランナがアビスリヴァイアサンに飛び移り、電撃をまとった拳でタコ殴りにし始める。MPを吸い取られているアビスリヴァイアサンは必死になってグガランナに水の刃を向けるも、無数のクナイがそれらを迎撃していく。


「私がいるのお忘れなくってね」


 今度は最大攻撃と思われる水のブレス。だが、その攻撃はアイリのダークストームで打ち消されてしまう。


「このままじっとしてもらうよ」


「グガランナ、フィニッシュよ!」


 エレシュキガルのバフを受けたグガランナが巨大化した拳でアビスリヴァイアサンを殴りつけ、ようやくHPを0にするのであった。



「これで湖の汚染もなくなって、飲み水として利用できるわ」


「えっ、この墨汁みたいなのを……」


「そうよ。ミネラル満点、栄養満点。コップ一杯飲めば、その日は何も口をしなくても過ごせるの」


「……効果すごいけど、もしかして町の人にもそれ飲ませている?」


「ええ、もちろん。これさえあれば死ななくて済むもの」


「それしか飲ませてないなんてことは……」


「これだけよ。それ以外に何が必要っていうの?」


 きょとんとしているエレシュキガルに対し、二人は大きくため息をつく。人が消費するのは生きていくためというという一面もあるが、生活の質を上げるための趣味や娯楽、言い換えれば無駄というものがなければ経済は回らないのである。もし、食だけでなく他も必要最低限のものしか与えられていないのであれば、街の住人に活気がないのは当然であった。そのことをエレシュキガルに話すと、彼女の顔が青ざめた。


「マジ?」


「マジよ、マジ。水だけで暮らせますと言われても、肉や魚、野菜に果物だって食べたくなるのが普通よ」


「キャロリーメイトだけで暮らせるって言われても、断るかなぁ」


「……なんてこと。冥界みたいなやせっぽちな土地じゃあ、何も農作物は育たないのに~」


「そこは考えるとして、今はネルガルさんのところに行こう」


 気になることはあるが、アイリたちはエレシュキガルを連れて神殿へと向かいネルガルにこれまでのことを伝える。


「事情は分かった。我が妻を救い出したことに褒美をくれてやりたいところだが、あいにく我が力を継承できる者はいないようだ」


「残念。そういうこともあるか」


「だが、ケチと思われるのも癪だ。我が宝物の一部だが、受け取るがよい」


 いくつかの装備やアクセサリーが表示され、その中から1つ選ぶようだ。アイリはLIZに作ってもらったお気に入りの装備とはいえ、装備してからおよそ一年となる。上位互換が手に入り、お役御免となった首装備のアクセサリーを選び、新たに手に入れたアクセサリーを装着する。


『冥界の女主人を探して』クリア

 スキルポイント40ポイント付与

 冥界の首飾り(HP、MP含む全ステータス+20、夜・闇状態だと上昇値が倍になる)を手に入れた

 高難易度エリアの初クリアボーナスとして選択スクロールを送付しました。



「選択スクロールが手に入ったから、いろいろと強い魔法覚えられるね」


「うん。ライチョウさんも言っていた通り力押しで勝てなくなっているから、しばらくはいろんなところ回ってみるのもアリかな」


「その様子だと気に入ったようだな」


「ありがとうございます、ネルガルさん」


「一つ聞いてもいいですか?」


「よかろう。黒装束の娘よ」


「私がもらった装備に冥界って書いていますが、ここは天界ですよね」


「フハハハ、ここはエレシュキガルが管理する冥界を我が力で結んだ場所。天界でもあるが、冥界でもある。ゆえに冥界のルール(HPの回復量50%ダウン)も同時に適用される」


 一撃喰らえば、タンク職でもない限りは即死するようなところで、HP回復量減のデメリットは果たしてあるのかと思いながら、ユーリはおとなしくネルガルの話を続けて聞こうとしたとき、今度はアイリが手をあげる。


「どうしてネルガルさんは天界と冥界をつなげようと?」


「天界で人間狩りが始まったからだ。我は太陽神、人々に生と死、恵みと災いを齎す者。地上に死を呼び災いをもたらす太陽があるのであれば、天には生を与え恵みをもたらす太陽があるのは至極当然よ。今は事情があって堕天使の身に墜ちているが、人間の一部を冥界に導く程度はできよう」


「といっても、本当の冥界にいると死者になってしまうから、冥界であって冥界でない場所を作る必要があったわけ」


「天使どももバカではない。いずれこの地に攻め込む日が来るであろう。そのためにも、兵糧をはじめ備えを用意せねばならん。そのために、いくつかのクエストを言い渡す」


「貴方たちにも用意があるでしょうから、用意ができたら話しかけてね」


 そして彼らが話し終わると、地下からテレポーターがせり出してきていつでも町と往復することができるようになる。今日の目的を果たせたところで、二人はログアウトし、夜にまた落ち合うことにするのであった。

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