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毒毒影分身は最強です~状態異常特化の私はVRMMOを楽しむ~  作者: ゼクスユイ


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第106話 現実でのひと時

 ヴァルハラでパーティーを解散したアイリとユーリは一度、冥界にアイテムや素材を納品していた。たんまりと溜まったアイテムの山にエレシュキガルはやんまりとした笑みを浮かべ、住民と一緒に畑づくりをし始めた。


「明日になったら、成果を見せてあげるわ」


「お昼までには時間がはやいけど、どうしようか?」


「そうだ。少し遠出してこの間新装開店したカフェに行ってみない? ログアウトしたらしばらくはログインできないんだし、待っていたらいい時間になるでしょ」


「いいね。確かメニューに猫の~ってついているのが有名なところだよね」


「そうそう。少し高めだけどね」


 エレシュキガルが農作業に戻ったのを見届けた二人は現実世界へと戻り、『猫の目』と書かれた喫茶店へと向かう。行列で並んでいる間、暇なのでスマホをいじっていたユーリが何かの動画をアイリに見せる。


「ん? どうしたの?」


「この間のラファエル戦の動画、ミレイがあげていたんだけどもう10万再生超えている。他の動画だと良いところ数千再生くらいなのに」


「すごいね。みんな、1回くらい見ているんじゃない?」


「パズっているみたいだし、それくらい行ってもおかしくないかも。ついているコメントは……」


 コメント欄を表示させて、二人はその中身を見ていく。


『マッチョ天使降臨』

『狩場にしているけどこんなイベント知らねえんだけど…』

『同行者の私にわかりません』

『この子、優遇されすぎじゃね。運営垢とかじゃねえーのwww』

『誹謗中傷のコメントをするなら通報します』

『してみろよwwwああ、ということは図星かwww糞ゲーの糞ゲーマーwww』


「あちゃー、炎上目的で暴れている人がいるね。あっ、今、この人のコメント消された。愛理ってSMSやっていたっけ?」


「やってないよ」


「なら、日常生活には差し支えないかな。こういう正義マンって、勝手に人のアカウントや住所をばらして炎上させようとするから気を付けないと」


「怖いね」


「当分は身内、【桜花】メンバーでクエストを受注した方がいいかも。一応、私も鍵付きにしておいたし、炎上は防いでおかないとね」


 これで一安心しながら、店内には猫耳を付けたウェイトレスに混じって男性のウェイターもちらほらいる。案内された席についてメニュー表を見ながら、二人は話をする。


「ずいぶんと……変わったお店だね」


「この前来たときは普通の恰好だったんだけどなぁ。マスターの趣味かも」


「マスターってどの人?」


「えっ~と、他の人と違って尻尾をつけている人。あっ、こっちに来た」


「ちょうどいいや。すみません、注文良いですか?」


「大丈夫だにゃ」


「Aランチでアイスレモンティー」


「私はBランチ。飲み物はアイスコーヒー。砂糖ミルク付きで」


「了解にゃ。Aランチのアイスレモンティー、Bランチのアイスコーヒーにゃ」


「あいよ!」


 厨房から元気のいい男性の声が聞こえ、マスターがメニュー表を持っていく。店の一部には猫が買われているゲージが置かれ、料理ができるまでの間、その様子をじっくりと眺めることができるようだ。


「どの子もかわいいね」


「この白いのがねこにゃん、黒いのがにゃんすけ、一番大きいのがにゃん蔵……」


「私、聞いたことあるんだけど。その名前の猫」


「それにこのネーミングセンス……まさか……ね」


 さきほど接客していたマスターをじっくりと眺める。眼鏡をかけていることや軽い化粧をしているせいで受ける印象はまるで違い、彼女とにゃんぞうを同一人物だとは思わないが、ゲーム内の身体補正をめいいっぱい使用すれば、可能かもしれないほどには似てはいる。

 子猫のねこにゃんとにゃんすけがボールで遊んでいるのを眺めた後、席に戻ると飲み物がすでに置かれていた。


「それにしても、今月末にはもう期末テストか~」


「その次の週には修学旅行があるんだから、頑張らないと」


「北海道といえば新鮮な海の幸!」


「うん。自由行動先の希望調査、小樽受かってよかったよね」


「こういうときに限って外すから最後までドキドキした~」


「悠里ちゃんって運がないときはトコトン外すよね」


「天井まで回したことが何回あるか……っていやなこと思い出させないでよ」


「ごめんごめん」


「お待たせしました。Aランチでお待ちのお客様」


「私です」


(ん? あの顔、どこかで……ま、女子高生の知り合いなんているわけねえか)


 ウェイターの男性が彼女たちの前に料理をおいて去っていくとき、なにやら思うようなことがあるような顔をしたが、そんなことを気にせずに愛理たちは食べ始めた。



 その日の晩。

 アイリとユーリの二人はもしかしてと思ったことをにゃんぞうに個人チャットを送ると返事がすぐさま送られてきた。


「リアルバレするとは思わなかったにゃ」


「同じ名前の猫がいた時点でバレバレだと思うよ」


「にゃんだとぉ」


「あっ、でも猫さんは可愛かったですbyアイリ」


「それはよかったにゃ。どしどし来てくれにゃ」


「ちょっと値段がね……」


「リアル猫の餌代はかかる。辛いにゃ」


 その後もにゃんぞうの愚痴を聞いた後、二人が冥界へと向かうとそこには一面緑色の畑が広が……っていることはなく、しなびれた茶色い畑が広がっていた。


「ん~、育つには育つけど、とても食べさせられたものじゃないわ」


「どうしたんですか、エレシュキガルさん」


「良いところに来たわね。実はアビスリヴァイアサンの影響でこのあたりの土壌が汚染されているみたい。私の力である程度は取り除いていたんだけど、どうも残った微量分まで作物に影響したみたい。こうなると土を入れ替えた方が手っ取り早いわね」


「土を入れ替えても周りから汚染されるんじゃあ……」


「片手間に汚染防止の結界くらいは張れるわよ。というわけで天界の土を持ってきてくれないかしら」


「となると浮島方面だね」


「エレシュキガルさん、わかりました」


 エレシュキガルの頼みを聞いた二人はログインしている【桜花】メンバーに連絡を入れた後、ヴァルハラから西、浮島諸島へと向かっていくのであった。





 とある一室。彼がいつものように公務をしていると部下から、報告が上がる。その報告内容を見た後、証拠を残さないように燃やしていく。


「Xデーまでもう少しか……」


 ゆらゆらと揺れる炎を見ながらひとり愚痴る。彼がやろうとしていることがばれたら、即座に自身の存在は間違いなく消される。それゆえにたとえ、世界を創った神であろうともばれないようにしなければならない。

 これから、彼がやろうとしていることは現実を虚構に、虚構を現実にする。神への反逆ともいえることだ。


「もう立ち止まるわけにはいかない」


 彼は振り返ることなく、部屋を出ていく。与えられた役割を演じながら……

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