繁華街のホストとホステス
能力者が公になっても何時もと変わらぬ夜の繁華街。その中では一際賑わいを見せるホストクラブ、クラブライム。薄暗い店内をライムカラーのライトが照らし出す中、No.1ホストのハイドは美女を両隣に侍らせながら下っ端ホスト達に酒を呑ませていた。
「イイ呑みっぷりじゃーん☆」
「お姫様、ハイドさん、ごちそうさまです!!」
「イーッ、ヨイショー!!」
楽しく呑んでいると黒服が背後から近付き耳打ちをする。
「ハイドさん、ヤツが……」
「あー……オッケー☆」
ハイドは両隣の美女にそれぞれ口付けをすると立ち上がり――
「ごめーん☆ちょっと席外すわー☆」
「え〜!!早く帰ってきてよ〜?」
「おけおけー☆」
明るく裏へと捌けていく。
裏は明るく、店内の大音量のBGMの重低音だけが身体を震わせる。更に奥の部屋、重い扉を黒服が開ける。ハイドが入り、黒服も共に中へ。扉を閉めた瞬間、BGMは完全に聴こえなくなった……。
この完全防音の部屋の中には殴られたのか、顔が腫れ前歯が無くなっている金髪の男。
「お前、本気で俺等から飛べると思ってたん?」
男の目の前に屈むと、先程までとは違う、低い声でハイドが睨み付ける。
「ま、待って下さいハイドさん……俺は……」
「言い訳なんか要らねぇんだよ。裏切り者は口を塞ぐしかねぇんだ」
「ッ!!チャ、チャンスを――」
「一度裏切ったヤツを如何やって信用すんだよ」
「待っ――」
ハイドが男の口を塞ぐように顔を鷲掴みにする。男は何をされるのか知っていた。知っていたからこそ逃げ出した。裏切り、そう言われたらそうかもしれない。しかし恐怖には勝てなかった、抗えなかった。
「死ね」
男の皮膚と肉、臓器、髪の毛、血液が一瞬で灰へと変わり、火葬したかのように白骨死体へと成り果てた。
「骨は『アイツ』にくれてやれ」
「はっ」
黒服は骨の後片付けを始める。ハイドは煙草を取り出し一服する。
煙草の先からゆらゆら揺れる副流煙が、男への手向けのように見えた。
同じ繁華街に有るキャバクラ、クラブオリーブ。No.1のハイネはNo.1用の個別休憩室で電話をしていた。
「貴女から私に電話をしてくるなんて珍しいじゃない?何の用かしら、警視正さん?」
「あら、別に、珍しくなんてありませんよ?必要があれば電話くらい、何回でもしてさしあげます♡」
「権力を手に入れた途端に、随分と余裕なのね?」
「そんな事ないですよ?ワタクシも忙しくて大変なんです……。そこでハイネさん、ワタクシと取り引きをしませんか?」
「……内容次第ね」
「ふふ♡これまで通り、ハイネさんのお店とハイドくんのお店は見逃してあげるので、お客様に能力者が居たら報告して欲しいんです♡」
「お客様の情報は渡せないわね。……というかそもそも能力の話になんてならないわ」
「無理に聞く必要はないですよ、見聞きした際に必ず報告して下されば♡どうです?悪い話では無いと思うんですけど……。無理なら……ハイドくんのお店にお邪魔しないといけません……彼、また『火葬』の力で白骨死体を作っちゃったみたいなんです……」
ハイネは目を瞑り間を空ける。答えはもう決まっていても、即答なんてする訳にはいかない。
「……分かったわ、もしお客様から話をしてきたら、ね」
「ありがとうございます♡それでは失礼しますね♡」
電話が切れた。ハイドの情報が漏れている……店の内部に内通者がいるんだろう。知らせたところで別の内通者が作られるだけ、夜職の人間を脅す手札は緋雫には山のようにあるだろう。
「……このままじゃいつか私達は潰される。黒神を討たないと……」
苛立ちと焦りでライターを何回もカチカチしてやっとの思いで細い煙草に火を付ける。無意識に噛み、折れた煙草は甘いチョコの匂いが漂っていた。
設定
ハイド
灰色の髪を控え目に盛っている。高級感は有るが派手な感じではないスーツ。能力は『火葬』。火や熱は伴わない。人体に強く触れ念じると火葬後の状態になる。
ハイネ
灰色の髪を頭の上でお団子に、盛っていて髪飾りも派手。服は鮮やかなドレス。煙草は細く甘い系統。
緋雫の電話
緋雫は護衛は付けているが裏工作等は自分で行う。本来であればリスクでしかないが自分で行う事で失敗が減り結果的にリスクを減らせる。




