繁華街の終幕と『虹』
クラブオリーブの店内は血で染まっていた。能力者、非能力者、ハイネに協力していた者、ハイネが能力者だとすら知らなかった無関係な従業員、一人残らずの死体が身体を切断され無惨に転がっている。
「残りはハイネさんだけですね♡」
これだけの惨状に返り血一つ浴びていない緋雫は、美しくも不気味な微笑みをハイネに向けていた。
「……ッ!!口封じのつもり!?アンタ分かってるの!?アタシらのバックには――」
「『虹』、ですよね?」
「!!知ってて――」
「ハイネさんはご存知じゃないんですか?総理の爆発……。アレ、青碧組の方なんですよ?我々も『虹』の後ろ盾を持っているんです♡」
「なッ……!?なら、尚更……!!『虹』同士の抗争に発展するわよ!?青碧組の奴等は知ってんの!?」
「知らないに決まってるじゃないですか♡『虹』が身内で殺し合ってくれるなら、警察としては万々歳ですから♡」
「コイツ……」
『虹』。能力が発現した4月1日から一ヶ月も経過していない4月27日。それまで存在していた暴力団が壊滅する。一時的な協力関係を結んでいた七名の能力者。それら七名が其々に新しい組を立ち上げる。その七つの暴力団組織を『虹』と呼称している。今の日本を裏で操る存在。
「……でも、アンタは此処で終わりよ、黒神ィィィ!!無駄話をし過ぎたのがアンタの運の尽き!!」
「……?これは……」
緋雫は突然の目眩で片膝を付く。視界がぼやけて焦点が合わない。
「アンタの負けさ」
ハイネの能力は『煙毒』。自身の身体から透明な煙を出して相手の身体を侵す。
「……さっさと殺して弟の……ッ」
弟の死は既に察していた。愛していたからこそ、離れていても、確認等しなくても、喪失感に苛まれていた。
「じゃあな、黒神……!!」
拳銃を向けようとした――腕が無かった。
「……は?」
緋雫の影から出てきた『人影』の日本刀によって切断されていたのだ。
「〜〜〜〜〜ッッッ!!?」
声にならない悲鳴。鮮血がビチャビチャ飛び散る。
「美影ちゃんはせっかちですわね♡ワタクシは平気ですよ♡」
ハイネは目を見開く。『煙毒』に侵されている筈の緋雫が普通に立っていた。
緋雫の姿を確認すると美影は無言で一礼し、緋雫の影へと沈んでいく。
「ふふ、『毒の効果』を『切断』しました♡本当なら片膝を付く前に『切断』も出来たんですけど♡『灰』の力を知りたかったのと、此方の方がハイネさんの絶望する顔を見れるかと思いまして♡」
「……黒神ィ……」
「あの世とやらで弟さんに会える事を願っています♡」
嫌いな、忌々しい、弟の間接的な仇のクソ女、そのクソ女の、恍惚の笑みが、アタシの最期の光景だなんて――――
緋雫は車に乗り込む。影が運転席へと伸び、美影がハンドルを握り車が出発する。
「『虹』が如何いう動きを見せるのか、楽しみですね♡」
彼女の頭の中には既にハイネの事など微塵も無かった。
無関係の人間をも虐殺したこの事件。しかし死体の能力の有無は立証出来ない。有り余る権力を使い、死者全てを能力者であり反逆者と発表。遺族は罪に問わないとし、この事件は数日で忘れ去られる事になる。
この事件で、警察外の組織からは黒神警視正ら、緋色の警察官を警戒する動きが見られるようになる。
設定
『虹』。能力が発現の4月1日の同月27日に暴力団が壊滅。一時的に協力関係を結んでいた実行犯の能力者七名。それらが其々立ち上げた新しい七つの暴力団組織の呼称。今の日本を裏で操る存在。
青碧組
『虹』の一角。総理爆破事件に関わっていたニット帽の男が組の構成員。
鉄黒 美影
能力『影身』。影に入り込む能力。影が繋がった場合には影間の移動は可能だが影状態で日向の移動は不可能。運転以外はほぼ緋雫の影に潜んでいる。
影に物を置いておく事も可能で自身の影と緋雫の影、車の影には日本刀や銃の他、武器の他にも様々な物を備えている。
影の容量は無限。しかし生物を影に招き入れる事は不可能。影の面積は出し入れに影響しない。
ハイネ
本名 灰土 祢音。
能力『煙毒』。透明な煙を発して相手の身体を侵す。本来テロを起こせる程の能力故に『虹』の一角の庇護下にあったが、その一角と緋雫が事を構えると組も無傷では済まない為に見限られた。




