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第29話 春祭りと妖精の輪

 春祭りの当日、馬に似ている水色の精霊フリルールドが、馬車を連れて迎えに来てくれた。

 

「王宮は遠いが、宜しく頼むよ」

 

 レルシュトの言葉に、フリルールドは、笑みの気配を浮かべた。

 

「問題ありません。今日は、飛ばしますよ!」

 

「フリルールドさん、宜しくお願いします」

 

 ディルナはぺこりと頭を下げた。

 

「任せてください。春祭り、楽しみですね。とても素敵なドレス姿ですよ」

 

 かなり派手なドレス姿が、ちょっと落ち着かないのだが、褒めて貰えてディルナは嬉しく思った。

 

「ありがとうございます。だいぶ緊張してます」

 

「オレも緊張してるにゃ」

 

 ザージュは、黒猫の姿のままで馬車に乗り、王宮が近くなったら正装になる予定らしい。

 

「では、出かけようか」

 

 慣れないドレス姿だったが、不思議と、ドレスにも助けられる感じで、ディルナは馬車へと乗り込んで、正装が麗しいレルシュトの隣に座った。青い色の花々と、白いレースがタップリ飾られているヘッドドレスも邪魔にはならなかった。

 ザージュは、向かいの席で、丸くなっている。

 

 しっかりと扉が閉まると、馬車は直ぐに宙を飛んで走り出した。この前は、途中から真っ直ぐの道へと降りたのだが、今回は、ずっと宙を飛んでいるような気がする。

 

「あれ? 道の上のほうを飛んでますね」

 

「飛ばす、と言っていたからな。速度を出すには、地面より、浮かんでいた方が良い」

 

 あっという間に、見知った場所は通り過ぎて、建物の少ない所や、森が見えるような所を、どんどんと超えて行く。

 透明な窓の外の景色は、凄い速さで移ろって、でも、その中に、春らしい色合いの森が見えたりもしていた。

 

「ザージュ、そろそろ正装にするよ」

 

 寝そべっていたザージュは、シャキッと座った姿勢になると同時、レルシュトと同じような衣装を着付けさせられていた。

 

 

 

 王宮についたようで馬車は停まった。正装のザージュは、ちょっと緊張気味だ。

 

「フリルールドも愉しんでくるように」

 

 レルシュトの言葉に、フリルールドは嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「有難き幸せ」

 

 フリルールドは、一瞬で変身して、めかし込んだ人に似た青白い姿で優雅な礼をとっていた。


「帰りもちゃんと送りますからね、飲み過ぎないようにしますよ」

 

 フリルールドは、笑みを深めて囁き、レルシュトは頷いた。変身したフリルールドは、一旦、どこかに馬車を置きに行く様子で、馬車と並んで歩いて行った。

 

 王宮の門の前で馬車から降りたのだが、門の周囲のに、着飾った見慣れない姿の妖精や精霊たちが、楽しそうに、たむろしている。

 王宮の庭へと入る前から、既に祭りは始まっているのかもしれない。

 

 

 巨大な門を潜り、王宮の庭へと入って行くと、大庭園のずっと奥に王宮らしき立派な建物が見えている。かなり遠い感じだ。

 

 庭園の真ん中辺りの上空に、浮かび上がっている二つの豪華な衣装の姿が、何故か非常にハッキリと見えている。

 

「妖精王と王妃だ」

 

 傍らで、ディルナと同じように上空を見上げながら、レルシュトが笑み含みに囁いた。

 丁度、良い時に着いたようだ、と、更に呟いている。

 

「皆の者、今日は心ゆくまで春の祭典を堪能していってくれ」

 

「ご馳走も、沢山用意しましたのよ。味わってくださいね」

 

 妖精王と王妃は、上空で喋っているのだが、ごく間近で、対面で語ってくれているように声は聞こえてきていた。

 言葉の後には、どこからか音楽が流れてきた。

 ゆったりとした曲に合わせて、妖精王と王妃は、上空で踊り始めている。

 

「ディルナもザージュも、踊りに行くといい」

 

「ボク、踊れませんよ? それに、レルシュト様は、踊らないのですか?」

 

 ディルナは心配そうに口にする。

 

「大丈夫だ。王宮の庭には、沢山、妖精の輪が用意されているから、その輪に入れば、自然に踊りだす」

 

 我が輩も、しっかり踊るぞ、と、レルシュトは黒猫の顔に、にんまりと笑みを浮かべた。

 

「そうなんですか! びっくりです。でも、それなら安心ですね」

 

「ただ、曲の調子には気をつけるのだよ。あんまり速度の速い曲だと、激しい踊りになって、目が回ってしまう」

 

「うわぁ、そうなったら、どうすれば?」

 

「曲が速くなりそうな時は、すぐに輪から外に出るのがいいだろう」

 

 ディルナたちは、露店の賑わいを眺めながら、既に、沢山の妖精たちが踊っている場所へと辿たどり着いた。

 妖精の輪、というのは、沢山の花々が撒かれて円状に線を作っている感じだ。

 小さい円、大きい円、広大な絨毯のような緑の草地の庭園に、見渡す限り、といった感じで花の円が作られている。

 

「じゃあ、踊ってみます」

 

 割合、ゆっくりとした曲が流れているので、ディルナは手頃そうな妖精の輪へと足を踏み入れた。

 と、たんに身体は少し草地から浮かび上がって、くるりと回ったり、手足も身体も優雅な動きで曲に合わせて踊りだす。

 

「わぁ、ホントに踊り出した!」

 

 レルシュトとザージュも、同じ輪の中に入ってくる。

 羽根を出さないまま、レルシュトとザージュはディルナよりも高く舞い上がって、くるくると踊り出したが、ディルナと違って、宙返りしたり、横向きに倒れて回ったり、紅葉(こうよう)を見に行った時のように、躍動的な動きで踊っている。

 

「レルシュト様、ザージュ様、凄いです~!」

 

 ドレスの裾をふわふわと、綺麗に舞わせながら、ディルナは感嘆した声を届けた。ディルナも、腕をひらひらさせながら、仰け反ったり、と、かなり激しい動きをしているが、少し浮いているので、足も楽だったし、不思議とヘッドドレスが取れそうになったりもしない。

 

「ディルナも、とても素敵に踊っているよ」

 

 レルシュトの声が響き、ザージュの楽しそうな笑い声が響いてきた。

 少し曲の速度が上がり、レルシュトとザージュは、空中で、くるくると回っている。

 ディルナは慌てて、妖精の輪の外へと飛び出した。

 

 


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