↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冷遇された奇跡の調香師は、氷の辺境伯に溺愛される ~私をゴミのように捨てた実家は、聖なる香水が作れなくなって没落したようです~  作者: kanatoka


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/8

奇跡の浄化と、実家のパニック

数日間の馬車の旅を経て、私はアスラン辺境伯領へと到着しました。

しかし、馬車の窓から外の景色を覗き見た瞬間、私は思わず息を呑みます。


「これが……魔障気……。いや、流石にディストピアすぎでは?」


かつては豊かだったという最北の地は、どす黒い紫色の霧――魔障気にガッツリ覆われ、草木は例外なく枯れ果てていました。領民の方々も完全に生気を失い、ゴホゴホと激しく咳き込んでいます。完全に限界集落のそれです。

そして何より痛々しかったのは、領地の中央にそびえ立つ、アスラン領の守り神である『聖なる大樹』でした。大樹はすっかり黒く変色し、今にも枯れ落ちそうなほどに衰弱しています。これ、完全に世界樹がバッドステータス受けてる時の見た目じゃん。


「すまない、エレナ。見せるような景色ではないのだが……これが今の我が領の現実(リアル)だ」


ギルバート様が、悔しそうに拳をギリィと握りしめます。

悲痛なイケメンを見て、私のなかの職人魂が着火しました。私は首を横に振り、馬車の扉を勢いよく開けて外へ飛び出しました。


「いいえ、ギルバート様。私に、やらせてください。ぶっちゃけ、このために私はここへ転職してきたのですから」


私は実家から唯一持ってきた、母の形見である「すり鉢(初期装備)」を取り出しました。そこに、道中でギルバート様が過保護なくらい集めてくれたアスラン領特有の薬草を投入します。

実家では「ただの雑草(笑)」と切り捨てられていたこの植物。ですが、絶妙な黄金比率で調合し、私の魔力をほんの少しだけ通してバフをかければ――。

すり鉢から、パチパチと黄金の光の粒が弾け、周囲に凛とした清涼な香りが広がり始めました。何これ、セルフCGエフェクト?


「お待たせしました。――いってらっしゃい!」


私は完成した『特製調香水』を、枯れかけた聖なる大樹の根元へと、そっと振りかけました。

その瞬間。

爆発的な、まばゆいばかりの緑と黄金の光が、大樹から天へと向かって突き抜けたのです。まぶしっ! 画面エフェクト強すぎ!

地響きと共に、黒く変色していた大樹の幹が、一瞬で瑞々しい大樹の肌へと戻っていきます。それどころか、みるみるうちに鮮やかな緑の葉が超高速で茂り、見たこともないほど巨大な、美しい大樹へと生まれ変わったのです。

大樹から放たれた光の波は、波紋のように領内全域へと広がっていきました。

土地を覆っていたどす黒い魔障気は、その光に触れた瞬間、嘘みたいに一瞬で霧散していきます。


「な……っ!? 障気が、消えていく……!? ナウシカかよ!」


「おい、体が軽いぞ! 咳が止まった! 健康最高ーー!!」


領民たちが、驚愕の声をあげて次々と立ち上がります。

ギルバート様や、周囲にいた辺境伯領の騎士たちも、あまりのチート光景に顎が外れそうなほど目を見開いていました。ワイ、何かまたやっちゃいました?


「……信じられん。聖女や高位魔術師が何十人がかりでも傷一つつけられなかった呪いを、たった一瓶の香水で、一瞬で完全に浄化して見せるなど……」


ギルバート様は震える手で大樹に触れ、それから私を、壊れ物を扱うような優しい手つきでガバッと抱きしめました。ちょっと待って、領民の目の前ですよ!?


「エレナ。お前はやはり、我が領の、いや、俺の奇跡の女神だ。……絶対に、誰にも渡さない(クソデカ感情)」


耳元で囁かれる低音ボイスの熱い言葉に、私の顔面は再び限界突破して真っ赤に染まるのでした。

◇◇◇

一方その頃。王都のボルドー伯爵家では、文字通りの地獄絵図(メシウマ展開)が広がっていました。


「そんなはずはないわ! なんで! なんで良い匂いがしないのよぉおおお!! 」


ガシャーーーン!!と、高級なガラス瓶が床に叩きつけられ、派手な音が響きます。

調香室の中で、妹のリリアが髪を振り乱し、完全に狂った顔で叫んでいました。

床に散らばっているのは、どす黒く濁り、まるでドブ川のような悪臭を放つ謎の産業廃棄物です。


「リリア! 一体どういうことだ! ヴィンセント公爵家への納品は今日なのだぞ!?」


父親のボルドー伯爵が、血相を変えて調香室に飛び込んできました。


リリアは涙目で父親にしがみつきます。


「お、お父様! おかしいのよ! いつも通り、調香室にあったベースの液体に私の魔力を混ぜたのに、急に泡を吹いて腐っちゃったの! 他の材料を使っても、全部泥水みたいになっちゃうのよぉ!」


「何だと……!? 貴様、天才調香師(笑)ではなかったのか!」


「私にだってわからないわよ! いつもお姉様が用意してた液体を使えば、簡単にできたのに!」


その言葉に、ボルドー伯爵はハッと目を見開きました。

冷酷な現実(答え合わせ)が、脳裏をよぎります。


「まさか……あのベースの液体は、すべてエレナが調合していたのか……? リリア、お前はただ小瓶に移し替えて、ドヤ顔をしていただけなのか!?」


「な、何よ! 私の『聖なる魔力』が一番凄いに決まってるじゃない! お姉様なんて、ただ薬草を潰してただけの陰キャ無能よ! なのに、なんでよぉ!」


リリアが狂乱する中、最悪のタイミングで、ドタドタと足音が響きました。

現れたのは、元婚約者のセドリックです。その顔は完全に真っ青、ライフゼロって感じです。


「ボルドー伯爵! リリア! 聖なる香水はまだか!? 先ほどヴィンセント公爵閣下から直電があった! 閣下の奥方の呪いが悪化し、今すぐ香水を持ってこなければ、ボルドー家も我が公爵家も、国家反逆罪で一発アウトだと……っ!」


「「え……」」


ボルドー伯爵とリリアの動きが、完全に止まりました。フリーズです。

エレナという『本物のガチ天才』をゴミのように使い捨てた結果、実家が手に入れたのは、栄華ではなく、破滅への片道特急券だったのです。乙。


「エレナ……エレナはどこだ! あいつを今すぐ拉致してでも連れ戻せぇえええ!」


ボルドー伯爵の絶叫が、虚しく屋敷に響き渡っていました。もちろん、そのエレナが今、世界で最も恐ろしい『氷の辺境伯』の腕の中で、お姫様抱っこ以上の極上溺愛バフを受けているなど、彼らは知る由もありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。