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恋愛請負人・鉄平完結編 ―最後の相手は女神様!? 異能バトル世界の恋愛ミッションに挑めー  作者: 炭酸水ひろみつ(旧 強炭酸)
三章 決戦の夏合宿

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第37話 待望の水着回、前半戦!?

 避暑地から一転、海水浴場へ。


 交通手段は、鷹志さんが手配してくれた貸切バスだった。


 窓の外では、山の緑が少しずつ遠ざかり、陽射しの色が濃くなっていく。

 潮の匂いはまだ届かないのに、車内の空気だけはもう夏休みそのものだった。


 バスの中では、凛が観光地の動画を流しながら、なぜかバスガイドごっこをしていた。


「それでは、本日バスガイドを務めさせていただきます、凛です」


 妙に板についている。


「長野県といえば、川中島の戦い。ここで信玄公と謙信公がバチバチにやり合ったところです」


「凛ちゃん博識ー!」


 翠鳥が素直に拍手する。


「ずっと話してる……会話のネタが尽きないの、すごい」


 未来まで感心していた。


 なんか、知ってる大恩人もバスガイドをしていた気がする。

 あの時は嬉しさ半分、嫉妬半分で、妙に複雑だった。


 ♢


 そして、海水浴場に到着。


 潮の匂い。

 焼けた砂の熱。

 波の音と、人の歓声。


 いかにも夏だった。


 海の家のロッカーを借りて、各自着替えタイム。

 男子チームは先に着替え、パラソルとシートで基地を設営する。


 白狼がスケッチブックにさらさらと書いた。


『なんか、ドキドキするな』


「……ああ」


 正直、分かる。


 迅先輩が腕を組み、妙に真剣な顔で言った。


「分かってると思うけど、女性の水着姿は大げさなくらい褒めろ。これは男としての礼儀だ」


「はい!!」


 勇が全力で返事をする。


「でも迅さんは、六秒待ってから褒めた方がいいです」


 確かに。

 褒めすぎてドン引きされるタイプだ。


「アンガーマネジメントかよ!!」


 いや、それはしゃあない。


 その時、女子更衣室側の扉が開いた。


「来たぞ!」


 ♢


 最初に現れたのは、白狼の妹、翠鳥だった。


 清楚系で露出少なめのワンピース水着。

 その上から薄手のパーカーを羽織り、つば広の麦わら帽子をかぶっている。


 白と淡い水色が、波打ち際の光によく似合っていた。

 小柄なのに、全体のバランスが綺麗で、普段より少し大人びて見える。


 一瞬、男子陣の呼吸が止まる。


「「「かわいーーー!!」」」


 勇が、砂浜に膝をつきそうな顔で呟いた。


「……生きててよかった」


 白狼が勇の背中をバンと叩く。


『いいから、はよ褒めろ』


 怖い。

 さすが兄。


 勇は慌てて翠鳥の前へ行く。


「す、すごく似合ってる。かわいい」


「ふ、ふーん。ありがと」


 翠鳥は顔を逸らした。

 でも、口元はちょっと緩んでいる。


 満更でもなさそうだぞ、勇。


 迅先輩が続こうとした。


「似合ってるぞ、みど――」


 その瞬間、翠鳥が防犯ブザーを構えた。


 迅先輩が静かに両手を上げる。


「まだ何もしてない」


 ♢


 次に現れたのは、勇の姉、未来。


 紺色のスポーティな競技用寄りのセパレート。

 その上にラッシュガードを羽織り、髪は高めにまとめている。


 かわいい、というより――強い。


 波打ち際に立った瞬間、海が訓練場に見えた。


「「「「かっこいいーー!!」」」」


 俺は白狼の背中をバンと叩いた。


 白狼は少し照れながら、スケッチブックに書く。


『最高。かっこいい上に、綺麗だなって』


 未来は真っ直ぐ白狼を見る。


「ありがとう、白狼」


 返しがイケメンすぎる。


 隣で翠鳥が「未来おねえ……さすが……」と流れ弾でキュンキュンしていた。

 勇がやれやれ顔で見守っている。


 迅先輩が恐る恐る口を開く。


「未来、似合――」


「五メートル以内に近寄らないで」


「はい」


 反射で従った。

 訓練されている。


 ♢


 続いて、絵馬先輩。


 レトロで大人っぽい、ワインレッドのハイウエスト水着。

 白いシャツをさらっと羽織り、サングラスまでかけている。


 映画女優だった。


 いや、正確には、映画女優が避暑地で写真集を撮っているみたいだった。


 立っているだけで構図が完成している。

 風でシャツの裾が揺れるだけで、周囲の空気が一段階おしゃれになる。


「「「「「ゴージャスーー!!」」」」」


 迅先輩が口を開く。


「絵馬――」


「消えなさい」


「はい」


 即死だった。


 白狼がスケッチブックを掲げる。


『絵馬先輩、綺麗です。作品みたいで』


 絵馬先輩は、ふっと表情をやわらげた。


「その褒め方は嬉しいわね」


 俺も素直に言う。


「絵馬先輩、めっちゃ似合ってます」


「ありがとう」


「それに……色々相談に乗ってもらって、ありがとうございました」


 自分と向き合うきっかけ。

 そこから始まって、魂を掴む力(ソウルセイヴ)まで辿り着いた。


 絵馬先輩は、少しだけ目を細める。


「いいのよ。巡り巡って、私も助けてもらったから」


 潮風が吹いた。

 少しだけ、胸があたたかくなった。


 ♢


 勇が俺の肩を叩いた。


「凛、来たよ」


 最後に現れたのは、凛だった。


 王道ヒロイン感のある白ベースのビキニ。

 白いレースのパレオ。

 その上に、水色のラッシュガードを羽織っている。


 派手ではない。

 むしろ清楚寄り。


 なのに、なぜか光って見えた。


 白と水色が、陽射しを受けてやわらかく反射する。

 潮風に髪が揺れるたび、どこか神秘的な雰囲気が漂う。


「「「「「「おおおーーー……」」」」」」


 全員、語彙を失った。


 迅先輩が何か言おうとした瞬間、未来と絵馬先輩に両側から潰された。


「」


 南無。


 俺は、凛を見て言った。


「凛、似合ってる!!」


 言葉が素直に出た。


「なんか……オーラあるよ!!」


 不思議と、知っている誰かを思い出す。

 でもそれ以上に、目の前の凛が本当に似合っていた。


 凛は少しだけ頬を赤くした。


「ありがとう。鉄平も……」


 そこで、凛の視線が止まった。


 俺の上半身。


 タンクトップ越しではない、素の胸筋。

 バキバキに割れた腹筋。

 自分で言うのもなんだが、筋トレの成果は出ている。


 凛の目が、すっと細くなる。


 そして。


「えっろ!!!」


「なんで!?」


 凛は防水ケースからスマホを取り出し、パシャパシャ撮り始めた。


「ちょ、凛!? 俺より凛の方がグラビアアイドルみたいな格好してるんだけど!?」


「それとこれとは別!!」


 別なのか!?


 白狼が肩を震わせて笑い崩れる。

 未来が慣れた手つきで背中をさすった。


「はいはい、白狼、呼吸して」


 迅先輩が小声で呟く。


「青春だなあ」


 翠鳥が防犯ブザーを掲げる。


「迅さんは黙っててください」


「はい」


 波の音が響く。

 潮風が肌を撫でる。

 焼けた砂の匂いと、日焼け止めの甘い匂い。


 悪魔との戦いなんて、本当にあったのかと思うくらい。


 平和な日常であった。

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