パーティー解散、そして次は
「なぁによ、レスト君その顔は。水に入ればテンションくらい上がるわよ!」
どうやらこの人はリリスさんのようだ。
そう言いつつ、リリスさんはすごいいい笑顔で笑っている。
いやいや、テンションどころか人格まで変わってるんですけど……?
「リリっちは、水に入るとこうなるんだよね~」
「まぁ、体が乾くと戻るんだけどな」
なるほど、そういう事なのか……そういう事なのか?
まぁいいや、深く考えないことにしよう。
「さて、ペルシャ!」
「ひぅいっ!」
リリスさんがペルシャの方につかつかと歩いて顔を覗き込む。
「アンタ、明日は来なくてよし!」
「くくく、首ですか奥様!? それだけはご勘弁を!」
「明日はつったでしょうが!」
「あ痛ぁー!」
リリスさんがペルシャの頭に拳骨をかます。理不尽だ。痛そうだ。
「レスト君に責任とってもらって、《アムゼ》にでも行ってきな!」
「……ふへぇ?」
ペルシャが気の抜けた声を出す。
《遊星アムゼ》かー。いいなー。僕、行ったことないんだよね。
すごく小さな星だけど、星全体がテーマパークとして改造されてるらしい。
僕も連れてって欲し……ん?
「あの、リリスさん、責任とは?」
「レスト君のせいで、ペルシャが騒がしいんでしょ?
なら、レスト君の奢りでアムゼで発散してきなさいな」
「お、奥様ぁ……」
ペルシャが目を潤ませてリリスさんに縋る。
リリスさんは、口調がだんだん落ち着いてきた。
結構なスピードでテンション変わるんだね。
「うぅ、有難う御座いますぅ……」
「礼なんていいわよ。私を何だと思ってたのよ」
お礼は僕に欲しいんだけど。というかまだ了解してないけどね!
アムゼって確か、入場料けっこう高かったよね。
あ、これはもしかして実はリリスさんがこっそり出してくれるとか?
「あの、リリスさん?」
「何かしら、文句でも?」
いえ、ないです。そっかぁ、僕の奢りかぁ。
ふぅ、仕方ないか……エレキストーンの収入もあるし、
霊廟のお宝も換金まだだから大丈夫でしょ……
「……ペルシャの代わりにはナルをよろしくね……明日は営業日だし……
じゃあ……そういう事で……よろしく……」
あ、元に戻った。リリスさんがまた奥に引っ込んでいく。
いや、ナルの了解も得てないんですけど。リリスさーん!?
……気にしたら負けだ……何とかナルを説得するしかないな……
「いやー、リリっち発散したねえ~ご機嫌じゃん。
ルークにガルガル、お手柄お手柄」
「好戦的だからなぁリリスは。暴れるとそれだけでご機嫌になるな。
へ……そんなところに惚れたんだがな……」
モリスさんが顔を赤くしている。この人ドMなのかな?
触れないでおこう。それよりもだ。
「あの、モリスさん、そういえば換金をお願いしたいんですけど」
「お、そうか。見せてみな」
「ふふふふふ、レスト君見せてごらん見せてごらん?」
「ちょっと引っ付きすぎよ? ペルシャちゃん」
「あーまぁいつもの事だけど……ペルシャ、ちょっと離れてよ。
メニューがいじりにくいよ」
「い、いつもの事なの!?」
なんかフィオナがすごい驚いてるぞ。
リアさんはなんかにやにやしながら僕らを見てるし……まあいいか。
「手始めにこれなんですけど」
そう言いつつ、お宝を一つ取り出した。
1メートルほどの黒い杖で、先っぽに大きな宝石が付いてるやつだ。
宝石の台座にも、様々な宝石がちりばめてある。
「お、おぉ? こりゃあまたえらいものを持ってきたな……
今日の換金は無理だな、リリスと二人でじっくり鑑定しねえと」
「キレー! レスト君! これ頂戴!」
「い・や・だ・よ! 買えよ!」
「ンニャアー! ケチ!」
やはりというかなんというか、ものすごい価値のあるもののようだ。
でもなあ~
「あの、モリスさん」
「何だ?」
「あの、こんなのがまだまだあるんですけど……」
そう言いつつ、僕がメニューを開いて中身を見せる。
モリスさんは真剣な顔でそれを眺めていたが、すぐに止めた。
「こりゃあ、時間がかかるぞ……」
「そうなんですか?」
「そりゃあそうだ、こんなのがいくつもありゃあな……」
「え~モリりん頑張ってよ~私たちもいっぱい持ってるんだから~」
「えと、私と、のびちゃってるけど兄さんもレスト君と同じくらい持ってます」
そう言いつつ、リアさんとフィオナがメニューを開く。
流石のモリスさんも、大口を開けて固まっていた。
「ニャアー! みんなズルいズルい! ペルシャも欲しかった!」
「あーはいはい、明日好きなだけ遊んでいいから」
「そうだった!」
「ホントに……またリリスさんに怒られるよ?」
「ぴっ!」
効くなあ、リリスさん。これから騒がしいときはリリスさんの名前を出せば……
いや流石に可哀想だな。まぁとっておきくらいにしておこう。
「お前ら……どこでそんなに手に入れたんだ?」
「我の故郷だ。悪いが場所は教えられんな」
「……そうか、いつかそこに連れてってもらいたいもんだが……
まぁいい、素性の明かせない宝なんてよくあるこった。
どっかから盗んできたわけでもねえんだろ? ならこれ以上は聞かねえよ」
流石モリスさん、話が分かる。
さてさてモリスさん、本題ですよ。
「で、モリり~ん。換金にどれくらいかかるの~?」
「あー、悪いが換金は無理だ」
「なぁ~んで? 拗ねた? 仲間外れにされてモリりん拗ねた~?」
「違ぇよ! そんな大量の宝、しかも殆どが値打ちもんだろうよ。
流石にうちにも手持ちがねえな」
「えぇ……じゃあどうすれば……」
困ったぞ……まさに宝の持ち腐れだ。
「そう落ち込むな。持ち込めるところは紹介してやっから」
「そうなんですか?」
「おうよ、この星にある《ラインハルト大博物館》
あそこなら買い取ってくれるだろうよ。
お前らみたいに、宝はあるが事情があって出所が明かせないってのも、
条件さえ飲めば、引き取ってくれる」
「あ、なぁ~るほど~忘れてた~にへへ」
「条件ってなんですか?」
「館長はえらく口が堅いが、知的好奇心の塊でな。
そのお宝を手に入れた場所に、館長とそのお供を連れていくって条件だ。
で、理由に納得してもらえたら買い取ってもらって展示される」
そういう条件か。なら……
自然とシャンガルに視線が集まる。
「……ふむ」
「いいよね? ガルガル~?」
リアさんがブレードを2本展開させる。
手足のないシャンガルにさらに追い打ちですか……?
「得物を出すな! そうだな、リアが信用できる人物であればよかろう」
「あ~大丈夫大丈夫、館長とは知り合いだから~」
「あれ、そうなんですか?」
「そーそー、ハル爺ちゃんだよ~」
ハル爺ちゃん……? ハル爺ちゃん、ハル爺ちゃん……
あ!
「常連さんの!?」
「そそ、ハル爺ちゃんが館長なんだよ~凄いよねえ~」
「そうか、ハルってラインハルトって事か……」
意外な人が知り合いだった。
なるほど、あの人なら信用できそうだ。
「とにかく、後で話は通しておいてやるよ」
「私からも言っとくよ~。じゃあみんな、今日は帰ろっか~」
こうして僕らはリリモリを後にした。
フィオナは何とかルークさんを叩き起こした後、
2人ですぐにでも換金できるような価値の低い、
それでも一般的に言えば十分な価値があるんだけど……
それを換金していった。当面はこれでしのげるようだ。
とりあえずは、ここでパーティーは解散だ。
短いような長いような不思議な時間だった。
リアさんとシャンガルは《ブラックアップル》へ。
ルークさんは出来たお金で色々買い物をして、船をアップグレードするらしい。
フィオナはというと、リアさんの強さやらなんやらに感銘を受けたらしく、
しばらく《ブラックアップル》でバイトしつつ、お稽古もつけてもらうらしい。
で、僕はと言うと明日も早いのでミストラルに帰ってる訳だけど、
「んっふっふ」
「なんでついてきてるのさ……」
なんかペルシャがついてきました。
「今日はミストラルにお泊りしま~す」
「えぇ……そんな勝手に……」
「大丈夫! パパにもママにも、ついでにナルちゃんにも連絡済だから!」
そう言いつつペルシャが僕に携帯端末の画面を見せてくる。
流石にこういう時は手が早い。ナルにも連絡済なのは有難い。
何々、ナルからの返信は……『理由は後でマスターからたっぷり聞きます』
…………そっかぁ。うん、考えても仕方ないよね……




