やってきました遊星アムゼ
結局帰った後にナルに話をして理解してもらえました。
説明が2分、お説教が30分超。
そしてもう一つ条件として、リューちゃんを連れていくこと。
ナルはリューちゃんとの度重なるコミュニケーションの結果として、
ある程度リューちゃんの言葉を解析したらしく、
聞けば『さいきん、ぱぱといっしょにいれなくてさみしい』そうな。
なんてこった。とんでもなく可愛い。
ちなみに『まま』はナルらしい。
それを語った時のナルの声はかつてないほど弾んでいた。
お互い親バカだなあ。
リューちゃんの言葉を理解できるまで、
どのようなコミュニケーションをしたのか聞いたけど、
その辺は語らなかった。頑なに。
どうせSちゃんねるかアリスちゃん絡みだろう。
ナルが船内装置を操作して作ったお手製の服で、
隕石龍の特徴である黄色い表皮と透き通った青色の羽を隠せば、
ペット用の小型の龍とそう変わらないので、問題はなさそうだ。
ただ一つ問題があるとすれば、材料は僕の服だってことくらいかな。はぁ。
急に決まった話だったので、ナルを連れてその日にまたリリモリへ。
ナルを二人に預けてまたミストラルへ踵を返す。
行ったり来たりと忙しいけれど、その甲斐あって
「うっわぁー!」
「なんか輝いてる! すごいなアムゼ!」
自動操縦にして少しお休みすると、次の日の早朝にはもうアムゼのそばに来ていた。
遠目から見ると常に明滅していて、巨大な宝石のようだ。
《遊星アムゼ》は小さな星だが、星全体がテーマパークになっている。
テーマパークと侮るなかれ、なかなかどうして技術の塊のような星なのだ。
人工太陽が常に快適な気温を保っている、天候も自由自在。
基本的には快晴だが、気分によって常に雨の降るエリアで物思いに耽ったり、
雪の降るエリアでいわゆるウィンタースポーツに興じたり、
嵐の吹き荒れる海で大航海ごっこなんてのもお手の物だ。
造るのに莫大な費用がかかったらしいけど、元を取り返すのに数年で済んだそうな。
本格的に楽しむのであれば長期滞在して星中を回るんだけど、
与えられた時間は一日。むむむ。
まぁ無難に楽園へ行きましょ。
確かランディングゾーンと楽園の間には、
自然公園エリアもあったから帰りはペルシャを背負って駆け抜けよう。
なぜそんなにおんぶにこだわるのかは分からないけど……まあいいや。
「レスト君レスト君! 降りていいって!」
「お、りょーかい」
「キュイッ!」
意外と早く着陸許可が下りた。やったね。
リューちゃんも、羽の部分まで計算されたナルお手製の服に身を包んで、準備万端だ。
ちなみに着せるのは僕とペルシャの二人がかりで、結構時間がかかった。
今はまだ体が小さいからいいけど、ちょっと対策が必要かなぁ。
それはそうと、この服は中々どうしていいセンスだ。
胸元に例の謎生物のアップリケが無ければ完璧だったんだけどね。
ここもウィローと同じく、離着陸に順番待ちがある。
大人気の星なのでほんとは何か月も前に予約した上で、
更に数時間順番待ちしないといけないんだけど、
リリスさんの伝手で、特別にねじ込んでもらえたそうな。
着陸許可が早かったのもそれがあるのかも。なんだかんだでツンデレな人だな。
まぁいい、着陸着陸。後ろがつかえてるから、もたもたすると迷惑になる。
ランディングゾーンに着陸後、
そこから相互転移装置でお目当ての場所にワープする。
「「おおおおーっ!」」
「キュッキュー!」
思わず声が出る。
それもそのはず。アムゼ最大のテーマパーク《楽園》
最寄りの転移装置からでも15分ほど歩くようだが、まず巨大なお城が目に入る。
お城は昼間でも分かるくらいにキラッキラだ。夜景はさぞかし見物だろなぁ。
昼間からボンボンと花火が打ちあがっていて随分と景気のいいことだ。
と、花火が止んで何やら放送が流れる。
何々……空絵師達のパフォーマンス……
「レスト君! 空絵師! すごいすっごい!」
「キュキュキュー!」
「痛い痛い、ちょっと待って……確かパンフレットに……あった!」
ペルシャがぴょんこぴょんこと跳ねながら、僕の腕をぐいぐい引っ張る。
テンションすごい高いけど、僕だってそうさ。それは仕方のないことですよ。
なんたって今日はたまたま、宇宙でも有数の空絵師達が集まって、
各々の技を披露してくれるらしい。
空絵師とはその名の通り、空に絵を描く人達だ。
まぁ空にでかでかと絵を描くわけで、公序良俗は弁えていることが大前提だけど、
後は空絵師協会に認められプロになるのに、
年齢、種族、性別、乗り物、服装、使用する塗料など大きな規制はなく、
規制をクリアすればもう何でもアリらしい。完全実力主義。
かなり狭き門らしく、プロになれればその収入はかなりのものになるそうだ。
「あ、あれ! あれ! ベルナちゃん! テレビで見た!」
黒ずくめのローブにとんがり帽子。ジェットブルームに乗って絵を描く、
空の魔女ベルナがまず空に舞った。
穂の部分から色とりどりの塗料が溢れ出して、
魔女らしく骸骨やらトカゲやら蜘蛛やらが、次々と空に描き出される。
抜けるような青空を背に、このおどろおどろしい雰囲気は凄い。
辺りからはキャーキャー悲鳴が。泣いてる子供もいるくらいだぞ。
と、ベルナが急降下したかと思うとそれらの絵が炎に包まれた。
「炎の王だ! カッコいいなぁ!」
お次は炎の精霊種で、自らの炎で空を埋め尽くす、
炎の王ガルダナッシュだ。
かなり力のある精霊種らしく、広範囲に色とりどりの炎が広がる。
ガルダナッシュの売りは力強いタッチもあるが、何よりも
「うわわわ! こっち来るけど!?」
炎を操ることで、ダイナミックに絵が動くのだ。
今、こっちに向かって巨大な炎の悪魔が大口を開けて迫ってくる!
安全だと分かっててもこえー! 大迫力だ!
「キュキュー!」
「どうし……おぉ! 龍騎士! すごいなぁ……本物だ……」
悪魔の額に穴が開いて掻き消えた。
悪魔を突き抜けて現れたのは、凄まじいスピードと軌道で空を駆ける龍と、
その背に乗る甲冑に身を包んだ騎士。
相棒の風龍と共に空を駆け、スピードは誰にも負けない、
龍騎士アニエラだ!
甲冑に身を包みつつもその筆? 捌きは正確無比。
青やら緑やら、爽やかな色をベースに様々な龍の絵が描かれていく。
その他にも、ベルナのライバルと言われる双子の魔導士、
専用のジェットブーツで空を舞う天の踊り子
史上最年少、小さな王子……
凄い凄い! 高名な式典とかでも技を披露するような超一流が勢ぞろいだ!
中でも一番盛り上がったのが……
「で、出た!」
「バルウェルト様ー!」
「おいおいマジかよ!」
「うっそ!? 気が乗らなきゃ王族の依頼も断るって話だぞ!?」
辺りから驚きの声が次々と上がる。
それもそのはず。圧倒的人気、神出鬼没、最高の技を持つアンドロイド。
それが空の支配者バルウェルト。
これは……パンフレットにも載ってない!大サプライズだ!
お決まりの山高帽にロングコートという衣装で、腕組みをして空に佇んでいる。
彼はそこに佇んでいるだけなのに、空一面が闇に覆われていく。
かと思ったのもつかの間、あっという間に大きな満月が輝く満天の星空が出来上がった。
見とれていると、空にでかでかと宇宙語で『ようこそ楽園へ』
と文字が浮かび、次の瞬間には闇が晴れて元の青空が広がっていた。
宇宙語って何って? 宇宙連邦政府の作った宇宙共通言語! 宇宙中の必修科目! 以上!
その説明よりも早く入場手続きを……
あら、ペルシャ? ぼけーっとしてる。
「はぁー…………」
「大丈夫? ペルシャ?」
「へぁ!? あ、うん!」
まぁ気持ちは分かる。時間にして1時間ほどだったけどあっという間だった。
興奮のあまり飛び立とうとするリューちゃんが居なければ、
僕だってペルシャのように余韻に浸ってしまうだろう。
というか気づいてよかった……リューちゃん既に2mほど浮いてたもんね。
「キュイキュイ!」
リューちゃんが急かしてくる。分かってますよ。
ていうか君のせいで大分注目されたんだよ?
うーむ……まぁいいや! オッケーオッケー! リューちゃんだし!
「ほら、ペルシャ行くよ!」
「わわ、レスト君!?」
「キュイーッ!」
あれこれ考える時間が惜しい! まずは入場だ!
ペルシャの手を引いて、リューちゃんを小脇に抱え、受付へダーッシュ!到着!
「お1人様150ルインになりまぁす。後は……ペットちゃんですねぇ。
では失礼してチェックを……あら、あらら?
えーっと……あぁ、あなた達の事ねぇ?少々お待ちくださぁい」
ん、何やら止められた。係員の人が奥に引っ込んでしまったぞ。
しばし待機……うーむあえて料金表は見ないようにしてたけど、
150ルイン……聞き間違いではないよね。なかなか強気の料金設定じゃないか。
ふふ……しかし今の僕の懐事情はすっごく潤っているので問題ないのだ。
なんて自己満足に浸っていると、係員の人が戻ってきた。
「奥へどうぞぉ」
受付の横の扉が開いた。奥へ続いているようだ。
よく分からないけどリリスさんの計らいかな?
やった! ただで入れてもらえちゃうのか!?
「あ、ペットちゃんも入れて360ルインなので、先にお支払いお願いしまぁす」
そんなに甘くはなかった。ですよねー。




