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リリモリに帰ってきました

「あー! 疲れたー!」

「すまないなレスト。俺たちのせいで」

「え、あ、いやそんなつもりじゃ」

「でも、本当に助かったわ。リアさん、レスト君。ありがとう。いつか必ずお礼はするわ」


 そう言えばルークさんを助けに行くってのがもともとの目的だった。

 帰りは和気あいあいとしてたから忘れてたけど……

 フィオナに襲われたのがきっかけだったなあ。なんか懐かしい。

 さてと、ナルとリューちゃんには悪いけど、またお留守番してもらおう。


「じゃ、行ってくるよナル」

「今度は、連絡が遅くならないように」

「うぐ、気を付けるよ」

「キュー!」


 今度は遅くならないように気を付けよう……

 僕らは、リリモリこと『リリス&モリス』の最寄りの転移装置に飛んだ。

 5人で連れ立ってリリモリに入ろうとすると『本日定休日』の札が。

 しまった、いまいち時間間隔が狂ってるな……と思ってると

 ペルシャがこちらを見つけて、中から開けてくれた。


「おぅ、レストまた来たのか。そのお嬢ちゃんは……あん時のだな」

「おーすレスト君にリアさんお久ー」


 いつもの二人が出迎えてくれる。

 相変わらず、リリスさんは奥に引っ込んでいるようだ。


「で、見たことねえ奴が二人いるが……まぁいい。

 かいつまんで説明してくれや」


 割愛するけど、フィオナと出会った時のこと、

 リアさんと3人でグランディルに行ったこと、

 シャンガルに殺されかけたこと、

 色々あって、お宝と共に帰ってきたこと、

 たっぷり時間をかけて話した。


「むうー」


 話が終わった後、ペルシャがご機嫌斜めだ。

 フィオナやらシャンガルやらに襲われたこともあるみたいだけど、何より


「一番にペルシャをおんぶして走ってって言ったでしょ!」

「一番にとは言ってないよ!」

「あの、なんかごめんねぺルちゃん」

「フィオちゃんは別に気にしなくても……」


 いやいや、気にするよそんなにむくれてちゃ。


 フィオナが僕に背負われてスプリントブーツの速さを体感した様子を、

 すごく楽しそうに話すものだから……

 ただし、約束はしたけど一番に、とは言ってない!

 でもこれは約束を早めに果たさないとご機嫌斜めのままだなぁ。


「分かったよ……今度自然公園にでも行こう。そこでおんぶしてあげるから」

「むー……」


 あぁもう、拗ねると長引くからなあペルシャ。

 何とかならないかなあ。


「また……騒がしいわね……今日は休みでしょ……?」

「ひ、奥様!」


 おぉ、出ましたリリスさん。

 

「また……騒いでるのね……ペルシャ……? 沈む……?」

「も、申し訳ありません! それだけは!」

「なんだか……多いわね……あら、アリん娘……久しぶりね」

「やっほ~う、リリっち」

「この……アンドロイドは……」

「我はシャンガルだ。リアに負けて今は従っている」

「アリん娘に……負けた……」


 リリスさんが、少し考え込む。


「あなた……アリん娘……リアと真正面から……やりあったわけ……?」

「そうだ、それがどうかしたか」

「バカねえ……そいつ、蟻の亜人よ……? 力勝負で……勝とうとしない事ね……」

「にっへっへ~」


 リアさんはなんだか自慢げだ。

 そうか、蟻の……蟻は力が凄く強いらしいからなあ。

 

「しかし……我の獲物はこの太刀のみだ。

 それに身体強化された機械の身で打ち負けた。言い訳無用だ」

「そ、なら……いいけれど……それはそうとペルシャ……?」

「はいぃ!」

「私……作業に集中したいから……静かにしてなさいって……言ったわよね……」

「ひぅ……」


 ペルシャの耳がぺたんと垂れる。

 骨の髄までリリスさんの怖さが染み渡ってる感じだな……

 リアさん、何とか……あ、ダメだ口笛を吹きながら目を逸らしてる。

 口笛吹けてないけど。


「待つのだ、御婦人」

「は、はい、これには訳があるんです」

「あんまり怒んないでやってくれ」


 おぉ、意外にもシャンガルがペルシャをかばった。子供好きだしなぁ。

 後に続いてフィオナとルークさんもペルシャをかばった。

 原因の一端は僕にもあるんだけど。

 

「訳なんか……知らないわ……静かにしろと言って……しなかっただけよ……」

「そう頭ごなしに怒るものではない」

「まぁ二人とも、落ち着けや」

「あなたは……黙ってて……?」

「お、おぅ」


 モリスさん撃沈。完全に尻に敷かれてますね。


「リリっち~まぁ聞いてあげなよ~」

「……はぁ、分かったわよ……どうせまたレスト君絡みでしょ……?」

「また、ってなんですかリリスさん……」

「いっつも……レスト君が来ると……騒がしいのよね……」


 そうだったのか……いつも騒がしいなぁとは思っていたけど……

 まぁいい、せっかくの弁明のチャンスだ。

 僕とフィオナから、リリスさんに理由を説明した。


「あによそれ……一番に、って約束したわけでなし……やっぱりお仕置きだわ……」


 結論、ダメでした。ですよねー。

 リリスさんがゆらりとペルシャに歩み寄る。

 ペルシャはもう頭を抱えてうずくまっている。

 そんなに恐ろしいことが起こるのか……?


「待てと言っておろう、御婦人」

「まだ……文句あるの……?」

「どうしてもというのであれば、我を倒してからにしろ」

「俺もな」


 シャンガルとルークさんが立ちはだかる。なんだこれ……

 どんなシチュエーションだよ。悪役から市民を守る正義の味方的な?


「ちょ、ちょっと待って下さい。原因は僕にもあるんですから」

「まぁまぁ、レストは黙って見てな?」


 ルークさんが僕にウインクする。かぁーっこいいーっ!

 完全に正義の味方ですね!


「…………」


 リリスさんがしばらく考え込む。しばし静寂。

 そして、ようやく口を開いた。


「フィオナって……言ったかしら……? このケンカ……私、買うわよ……?」

「え、は、はい」


 まさかの宣言。屈強な男とロボットと2対1でケンカを買いますか……

 フィオナも気圧されて思わず返事をした感じだ。

 当のシャンガルとルークさんは若干怯んでる。

 あ、これはああ言っとけば引き下がるだろって思ってたのかな?


「リアも……構わないわね……?」

「えっとぉ……」


 リアさんがなんだか気まずそうな感じで言葉を濁す。

 しばらく考えこんだ後、リアさんの出した答えは……?


「……出来るだけ、手加減してね~?」


 目線を泳がせながらそう答えた。

 あー、これはいけない。

 何か恐ろしいことが起こりそうですね。


「努力……するわ……」

「おいおい、ホントにおうゎっ!」


 リリスさんが何やら取り出してボタンを押すと、

 急にシャンガルとルークさんが床に沈んだ。

 いや、よく見ると床に穴が出来ている。

 穴を覗き込むと、澄んだ水がどこまでも広がっているようだ。


「ぶはっ!」

「な、何なのだこれは!」


 ルークさんとシャンガルが穴から顔を出してくる。

 

「楽しみ……ましょうか……?」


 いつの間にかリリスさんは、髪の毛を後ろでひっつめていた。

 初めてリリスさんの顔をまともに見たけど……正直美人だ。

 服も脱ぎ捨てていて、下着……ではなくどうやら水着。けどかなり際どい。

 下手な下着より色っぽいぞ……目の遣りどころに困る。

 殺意のみで満たされた、まさに鮫ですって瞳がなければ完璧なんだけど……

 ルークさんとシャンガルの間から中に飛び込むと、

 二人が急に水の中に引きずり込まれた。


「モリりん、どうする~?」

「気が済みゃ出てくるさ」

「怖い……ペルシャお水怖い……」

「あ、あの……兄さんは?」

「……ま、死にゃしないだろ……多分……」

「え、ちょっとモリスさん!? リアさん! 兄さんを助けて!」

「ごめんね~ちょっと無理かな~」


 大人たちはなんかもう諦めた様子だ。

 そんな騒ぎを傍目に僕はペルシャの背中をさすってやっているが、

 一向に震えが収まる様子がない。トラウマになってるのか……


 あれは四次元収納装置の応用だな。空間を収納しているようだ。

 なるほど、水に満たされた空間を収納して、

 あそこにかわいそうな獲物を引きずり込むのか。

 そうか、沈めるってこういう事か……

 そうして1分ほど経った。


「ぶぉへっ!」

「に、兄さん!」


 まず、ルークさんが中から投げ出されてきた。

 息はあるみたいだけど……ひくひくと痙攣している。

 おぉ……全身擦り傷とあざだらけだ……恐ろしい……

 仕方ないので、傷が出来ている所に医療ジェルを塗っていく。

 シャンガルは……? と中を覗き込むと、まだ虐められていた。

 うわーまた手足が取れてる……リリスさん素手だよね……?

 リリスさんのあまりの速さに、上から見てる僕ですら目で追うのがやっとだ。

 当のシャンガルは何をされてるかわからないだろうなぁ……


「ぐぉおっ!」

「あぁ~せっかく直したのに~」


 5分ほどで今度はシャンガルが出てきた

 またしても両手両足がない。むごい。

 処刑完了まで二人合わせて10分も掛かりませんでしたね……

 と、次々に水の中からシャンガルのパーツが出てくる。

 そして最後に


「ぷっはぁ!」


 シャンガルの太刀を持ったリリスさんが飛び出してきた。

 すごい勢いで飛び出してきて、天井近くまで飛んだ。

 そして空中で一回転して、見事な着地。


「ま、こんなものよ!」


 ご苦労様ですリリ……

 あれ、リリスさんじゃない!?

 いや、リリスさん!?

 ……誰この人!?


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