勝利に酔う者どうでもいいもの
後半はテレメア視点です。
視線だけで殺せそうな、そんな目をした将兵たちをしり目についに我らは王都を目指す。
馬上より見下され屈辱に小刻みに震えていた。どれほど憎しみの目を向けようとあれらはすでに我らの支配下にある。その事実が小気味よい。
王都では、私に玉座を約束してくれる花嫁が待っているからだ。
廃嫡された王太子の妹。その夫として私はかの地の王となる。
我らの先祖が幾たびも目指してついにたどり着けなかったその場所に我々は進んでいく。
我らの信じる女神の巫女よ。その命と引き換えにかの王家の断絶をもたらした約束の巫女。
幾度となくささげた生贄たちの血をもってこの地に召喚されし巫女。彼女の犠牲は決して忘れない。
かの巫女の呪縛の力はあちらにもこちらにも同様に影響する。そのためこの凱旋で天に返さねばならなかった。しかしあちらがすでに天に返したという。
どのような手段をとったのかは不明だがこちらの手間を省いてくれたのはまことにありがたい。
揺れる木々も空も、あちらと変わらないはずなのになぜかとても美しく見える。
ついにすべてが手に入る。長年の悲願はついに果たされるのだ。
こみあげてくる笑いを掌に隠す。我らこそこの地の新たな支配者だ。
私が捕らえることで解放された遠い血の同胞。
彼らは切れ切れにかの地で起こったことを話してくれた。
あの国では奇妙な神を祀っていたのだという。その神の名を彼らは知らない。その名は秘されているから。
その神は生贄を要求するようだ。生贄を捧げることで願いをかなえてくれるという。
その国の神官は魔法使いではないが。魔法使いのようにふるまうことがある。物理的な力は持たないのだけれど精神支配のようなことができるらしい。
かの地の同胞は一部は奴隷として扱われ、一部は人質として捕らわれている。
まず、それらを開放しなければならない。
しかし、その神官の力とやらを実際に確かめなければ他の同胞を救うことはできない。
「まず、作戦を練りましょう」
そう言うと彼らはどこか怯えたような顔をした。
神官とやらがよほど恐ろしいのかもしれない。
「彼らは今、勝った。勝利に酔いしれているときこそ我らの付け目になるわ」
やるなら今だ。今、こちらの同胞が神殿を破壊すればいい。
テレメアはにたりと笑う。
魔法使いの新しい血脈がつながる。
魔法使いの寿命がまた少しだけ伸びる。それにその神殿の輩は生かしておけない。我が国にももう少しで手を伸ばそうとするだろう。
「こちらで、こういう言葉を学びました」
テレメアはそう言って笑う。
「先手必勝というのですよ」
今がいい機会。さっさと消えてもらおう。この国に忠誠はない。だからこちらで勝手に動く。テレメアはさっそくすべての同胞にそれを知らせに向かった。




