侍女の困惑
あの女が死んだ。あの憎むべき女が。
私はそれを聞いても嬉しくはなかった。
お嬢様が周囲にそうけしかけたと知ったときやはりお嬢様もあの女を憎んでいたのだとそう思った。
お嬢様が私に託した手紙。それが何なのかわかったのはすべてが終わった後だった。
お嬢様の姉君に当たる公爵夫人がすべての手はずを整えたと聞いた。
お嬢様付きといっても所詮は使用人に過ぎない私に詳しい情報など入ってこなかった。
ようやく私が情報を集めたのはすべてが終わった後のこと。
戦争は、我が国の敗北で終わった。しかし、我が国は新たな女王となる王女の婿に、かの国の王子を迎え入れる用意がある。
この話を聞いたとき私の頭は理解を拒んだ。
それでは何のための戦いだったのか。何のためにあの人は命を懸けた?
どうしてあの方はこのような真似をした?
私は喧騒に包まれた王宮を後にし、お嬢様の元に戻った。
砦ではお嬢様は忙しく立ち働いていた。私がいなくとも困っていた様子もない。
「おかえりなさい、どうやら首尾よく言ったようね」
「ええ、あの女は死んだそうです。もうすでに埋められてしまったそうですが、それがどこかは知りません」
「そう」
「貴女はそんなにあの女が憎かったのですか」
「いいえ」
お嬢様は困ったような顔をして微笑んだ。
「あの人のことは不思議と悪意を抱けないの。だから、結果的にあの人を死に追いやったことも残念だと思っているわ」
「どうして?」
「一刻も早く、戦争を終わらせる必要があったの。あのままではずるずると犠牲が増えるばかりよ。物資も薬も届かない状態ではね」
それもあの女の差し金だ。ここにお嬢様が送り込まれた後ここに送られる物資が著しく減少した。あの女が王太子に働きかけてそのようにしていたと王宮に行ってから知った。
それならばあの女の死は自業自得だ。
「犠牲は最小限に、それでたまたまあの人が犠牲になってしまったけれど、最小限でも犠牲は犠牲ね」
「自ら招いたとも言いますが」
お嬢様は寂しそうに笑う。
「王太子はまだ生きているそうですよ」
「もう終わったことよ」




