つかの間の勝利
そして、情報を抜くため生き残っていた幹部クラスと思われる者たちを捕らえさせた。
結構な数の敵兵が陥没した場所でそのまま谷底に落ち込んでいった。
そして、原形をとどめないほど焼け焦げた遺体。
生き残った敵兵は少なかった。しかしその少ない敵兵も捕虜として養うほどの食糧状況はよくない。だから死んでもらうことにした。
「始末しろ」
端的にそう言ってからテレメアの様子を見た。
テレメアは倒れている二人の男を見ていた。
おそらくその男たちは魔法使いだ。着ている極端に縫製の少ない服。首から下げた色とりどりの首飾りそして男たちの頬にきざまれた稲妻のような入れ墨。
そのすべてが魔法使いだと語っている。
テレメアはそのまま空中を走ってその男たちのもとに進んだ。
「おい、危ないぞ」
何とか勝ったとしても相手は魔法使いだ。消して油断していい相手ではない。
しかしテレメアの動きはいっそ無造作といってもいいほどだった。
一人の額から流れる一筋の血。それを指先で掬い取って軽く舐めた。
「彼らに一体何をしたのですか」
生き残っているおそらく幹部級と思われる格好をした相手に詰め寄った。
「いったいどうしたんだ?」
「血から薬物の味がしました」
テレメアは厳しい目で相手を見据えている。
「わかるもんなのか?」
あんな微量の血で薬物に侵されているかなんて普通はわからない、少なくとも俺では無理だ。
「そうでもしなければ、魔法使いなど使いこなせるか」
「だから、私に力負けしたんですよ」
テレメアは呆れたように言った。
「閣下、貴方は弓矢をできますよね」
「当然だろう、軍人の必須科目だぞ」
「大量のお酒を飲んだ後に的に当てる自信はおありですか?」
「無理だな。集中力がもたない」
「そういうことです。そちらの言うとおりにするための薬物は魔法を使うための集中力を削ってしまったんですよ」
テレメアの言葉に相手の顔から表情がすっぽりと抜け落ちた。
「つまり、そのくするを使ったせいで役立たずになったということか?」
「そういうことです」
呆れたという顔だ。テレメアはそれなりにこちらで仕事を受けることが多いのでこちらの事情にも詳しい。それなりにかみ砕いた説明もできる。
「それじゃ、魔法使いを兵器として使うことはできない」
俺はちょっと相手がかわいそうになった。
「それでも、我々が勝つ。神がお応えになったのだ」
「神?」
何言っているんだこいつ。ああ、目の焦点が合っていない。
「神は我らの勝利のために使者を与えてくださった。必ずや我らは勝つ」
頭が痛い。こいつを尋問しても得られるものはないかもしれない。
俺たちが何とか砦に戻ったとき周囲は騒然としていた。
文官がその場にへたり込んでいる。
「王宮が終戦宣告を、我が国の負けです」
うつろにそう呟いた。




