魔法使い?
大きな張り出した枝の上に魔法使いが止まっている。
文字通りつま先立ちになって枝の上にいるのだ。
俺たちが布陣を展開している場所。はっきり言って俺たちの仕事はおとりだ。本当の主戦力は木の枝に止まっている。
枝が大きく張り出してたっぷりと繁っている木なのでその姿は遠目からは見えないだろう。
その枝はどう考えてもたとえ細身の女としても人の体重を支え切れるほど太くない。にもかかわらず女はその枝の上に立っている。
「なんでそんなところに立っているんだ」
そう聞けばその言葉は以外にも俺が納得できるものだった。
「攻撃を味方に充てないためです」
なるほど、兵士より高い位置から魔法を放てば見方が巻き込まれる可能性は低い。
兵士に埋もれた状態では周囲にいる兵士たちが邪魔になる。
だから兵士たちより高い位置に立つ。なるほど納得だ、こうなれば重力を無視しているぐらいは見なかったことにしよう。
「では、まいります」
テレメアは唇を固く結んだ。
長い髪が逆立った。たっぷりとした衣装が風もないのに波打っている。首飾りもテレメアの顔の周りで踊る。
両の手を合わせた状態から徐々に開いていきその中心に拳ほどの光が瞬いている。
光を前方に押し出した。
これから始まるのは戦いではない。
ただの一方的な虐殺。
不安定な断崖近く。そこに魔法使いの魔力が撃ち込まれる。
太陽が地上に落ちた。
目をやられそうになってとっさに顔を覆う。
光が弱まった時期を見計らって顔から手をのけた。
そして、予想とは全く違う光景が広がっていた。
光を受け止めているそれはあちら側の魔法使いだろう。
光の帯のようなものがテレメアの放った光を搦めとり封じ込めようとしている。
「まずい」
俺はとっさに全軍に進撃を命じそうになった。
しかし次の瞬間光の帯が大きく広がりそのまま敵軍を包んでいく。
「え?」
轟音と絶叫。そして何かが崩れていく音。
「どうやら、勝手に暴走して自滅したようですね」
テレメアは肩をすくめた。




