大昔
昔々の物語。
幼いころから私は歴史書を友として生きてきた。
将来、王家に嫁ぐ予定だったので、歴史書はかつての政治のありようを記されたものだから、私が未来に采配を振るうための勉強だと思われていたのだろう。
だからありとあらゆる歴史書を私に両親は送ってくれた。
そんな私が覚えていた昔の話。
それは今から三百年ほど前のこと。当時二人の王子がいた。
王子は双子だった。それも最初の出産で出来た子供たち。
どちらが兄でどちらが弟なのか揉めに揉めた。
最初の子供が兄だという文献が見つかった後、もっと古い文献では後に生まれたほうが兄だという。
これが次男と三男だったらどんなに良かっただろう。
しかしこの国では基本長男が王位継承者となる。その長男に即位を阻む決定的な欠陥がない限りで。
そして二人の王子はそれぞれ優劣がつけがたく剣術も学問もどちらもほぼ同じだった。
どちらかが明らかに劣っているか、あるいは一分野だけでも少々優秀となればそれが決め手になったかもしれない。だが二人の王子は本当に全く同じだったのだ。
家臣たちは二手に分かれて争った。そしてその家臣たちの優劣で結局王位は決まった。そして敗北した皇子は国を追われた。
最後まで自分こそ王にふさわしいのだと、いつか王国を取り戻すと叫んでいたという。
双方の家臣団の権謀術数ぶりはなかなかに勉強になったなと思い出していた。
まあ、追い出された皇子は結構な数の家臣を連れてその家族もつれてその部下たちもつれて、まあかなりの大所帯だったらしい。
それだけの人員がいなくなって当時の王国は大丈夫だったのだろうかと心配になったものだ。
まあ、大丈夫だったからこそ今も王国は現存しているのだけれど。
どうしてこんな話を思い出すのかと言えば、現在戦争をしている国がその追放された皇子が建国した国だったからだったりする。
王国を追い出されてその後のたれ時な図に自らの王国を建国する。
同じだけの力量の二人の王子、この二人が数代おいて出てくれればありがたかったのかもしれないが。
そして国としての力量が出来上がってから何度もこの国に戦争を仕掛けてくるわけで、初代王の遺言はいまだにあの国の上層部にしっかりと刻み込まれているということか。
きっと彼らはあきらめない。
どれほどの犠牲を払おうと建国の王の無念を晴らすために王国に攻め込み続けてくるだろう。
望みがかなわない限り。
私は書き物をしていた手を止めた。
私は何を考えているのか。そう、私はただこれ以上の犠牲を出したくないだけ。そのための手段。
私は再びペンを執る。
私は誰も憎んでいない。ただ犠牲を出したくないのだ。




