起死回生
テレメアからの報告を聞いて俺は頭を抱えた。テレメアはこちらの最高戦力だ。そのテレメアから向こうも魔法使いを用意したらしいという情報を得たと言われて途方に暮れるしかない。
「おかしいですね」
カタリナが首をかしげる。
「魔法使いの集落なんてあちらのほうにあったかしら」
魔法使いは人のいない場所に集落を作ってひっそりと暮らしている。この国では首都から西側の人里離れた標高の高い山にあるらしい。
普通の人間はまず近寄らない。なぜならその集落にたどり着く前に遭難するからだ。
それでも双方対等な取引として手を取り合っていることになっている。
「それに人にやすやすととらえられるような魔法使いにどんな戦力があるというのでしょうか」
カタリナが怪訝そうな顔をした。
「そうなのです、私もそれが気になりました。魔法使いが縄をかけられるような扱いを受けてそれに甘んじるなんてありえない」
二人の女の言い合いを俺はしばらく考え込んでいた。
「まさか人質でもとられているのか?」
「その人質も魔法使いですよ」
そもそも魔法使いという連中は普通の人間の視界のはるか向こう側を見通したり聞こえる範囲をはるかに超えた場所の声を聴いたりするという。そんな連中に不意打ちなんか聞くはずもない。
そして敵意を感じさせたら最後だ。圧倒的な物理力で粉砕される。
だからこそ魔法使いは取扱注意だ。
「あちらに我々が感知しない魔法使いの集落があったにせよ、そこから協力を呼びかけ取引を締結するには相当な時間がかかりますわね」
カタリナはそのまま考えこむ。
実際我々がテレメアの出身地である魔法使い集落との取引を締結するためかかった時間は約二十年だという。
最近は双方の理解というか経験則というかでコミュニケーションはとりやすくなったが当時は相当大変だったらしい。
もともとの常識が違いすぎたのが原因だが。
「そうなると計画はどうなります?」
カタリナはそう言って眉をしかめる。
向こう側にも魔法使いがいるなどと言ってしまえば士気に関わるが言わなければ被害が出た場合のことを考えれば。
「敵をなめるのも問題ですが。あっさり縄をかけられる弱い魔法使いだと伝えるしかないのでは」
カタリナの言葉にうなずく。
「そうするしかないか」
すでにもう止められないほど我々は追い詰められている。敵ではなく味方に。




