幻視
瞑想をしていたらずいぶんと時間がたってしまった。
顔にかかる長い髪を後ろに払う。
この砦にいる女たちはすべて長い髪をまとめて結い上げている。
すべてといってもほんの数人だが。私の髪は感覚器官も兼ねているのでそれをすることはできない。
生まれてこの方髪は一度も切ったことはない。
その長い髪は風邪もないのに揺れていた。
人には見えない魔法使いだけが知ることのできるそれを全身で見た。
長い髪はまるで重さがないようにうねり続ける。
そして、目的の場所が視界に映った。
鳥の目線で見えるその場所は山と山をつなげるような場所にあった。
道はある。だがそれは一度崩れればそこに橋でもかけない限り通行はできなくなるだろう。
そして、その向こうから懐かしい気配を感じた。
それは自分と同じ魔法使いの気配。
だけどその魔法使いは私の知っている気配ではない。魔法使いであることはわかる。
数人の魔法使いが縄でくくられて進んでいく。
チリチリと首にかけた首飾りが鳴った。そろそろ限界かもしれない。
力を分散させるために使っていたが粉々に砕けていく。
石が光を分散させながら砕けて落ちていくその姿はとても美しく見えた。
力を使いすぎたようだ。掃除は手でやろう。
この部屋には日用品を入れておく棚が部屋の隅に置いてある。
その中から箒と塵取りを出した。
こうした道具は自分たちもそして非魔法使いたちも普通に使う。だけどそれ以外ではいろいろと常識から違う。
箒を使い終わった後先ほど見た魔法使いのことをこの砦の責任者たちにどう話せばいいのか考えてみた。
我々魔法使いはこの国に忠誠を誓ったわけではない。ただの取引相手だ。
だがあの魔法使いたちはどうなのだろう。
紐でくくられていた。まるで家畜のように。
私はそしてほかの魔法使いたちもそのような扱いを受けたことはない。そしてそのような扱いを受けそうになったとしたら全力で抵抗する。
その結果どれだけ死のうがそれは自業自得というものだ。
だとしたらどうして彼らはそのような扱いを甘んじて受けているのだろう。
そして、魔法使いをあのように扱うすべを敵がもっているとしたら。
それはあの魔法使いたちを相手にするよりも厄介かもしれない。
純粋な力比べならばむしろ楽しみですらある。だがその背後にあるものを考えればどれほど警戒しても足りないかもしれない。




