将来の展望
再び砦に戻るため私たちは馬上にいた。来る時とは違ってそれほど飛ばしていない、せいぜい並足というところか。
「そういえば、エミアのお給料ってどこからきているの?」
そんなことをお嬢様が聞いてきた。
「お嬢様、今現在私は休職中でございます。お金は退職金という形で旦那様から二年分ほどいただいております」
そう本当のことを言ってみた。実際は旦那様雇用の形を維持してもよかったのだが状況を考えて元の職場との関係を一度切ったほうがいいと判断した。
「そんな、ではどうしてここに?」
「お嬢様、私はきちんとお嬢様の今後がはっきりするまではお嬢様の傍におるつもりです。そしてお嬢様の先行きが決まり、お嬢様の足場が固まったらお暇をいただきます」
お嬢様は今現在将来の見通しが全く立っていない状態だ。そんなお嬢様を見捨てるなんてできなかった。
旦那様にはそう話してお嬢様について行った。
旦那様としてもなけなしでお嬢様を一人で前線まで行かせることはさすがにできなかったのだろう。
いや、何で前線行きを阻止できなかったのか。
「とりあえず、この戦争が終わるまでは私の将来の見通しはないわね」
紅すら引いていないお嬢様は薄く笑う。
最近のお嬢様はちょっとだけ健康的になってきたかもしれない。
何しろコルセットを止めて毎日適度な運動もするようになったからだ。
重いドレスは足腰を鍛えるのにはいいが身動きがしずらいので体が硬くなる。
そして、動かず静止していることに筋力を使うのだ。
「私の行き先などまだ全然わからないわ。たぶん数日中に敵は進軍してくるでしょう。私が生き延びられるかすらわからないのに」
「それでも時が来れば行くべきところに行きつくものですわ」
私はそう言ってみた。
むろんそれができればいい方向に行ってほしいが。
「でもそうなったらエミアはどこに行くの?」
「ああ、嫁に行きます。この戦争が終わるまで式の予定が立たないのですよ。だって婚約者が軍人ですので」
「もしかして、私の知っている人?」
どうやらお嬢様は周囲の軍人の顔を思い浮かべているようだ。
実際はいない。近くにいるが合わないようにしている。すぐそばに婚約者がいるとほかの人に悪感情を抱かれるかもしれない。
戦地でわずかなそうした心の隙も命取りになる。
そうしたことを武人である祖父から聞いた。




