表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒泥の魔術師  作者: 11時11分
アヴァロン島占拠事件 ~親友に恋し、初恋を愛す~
106/141

第94話:繋がり

 私、珈 琲李(かみかざりはいり)の目の前に突如として現れた謎の三つ編み黒髪の女性の見据える。

 彼女もまた不敵に笑いながら、私の方をジロジロ見る。


「お姉ちゃん、美人だね。わたし、美人のお姉ちゃん欲しかったんだ」


「あなた、誰?」


 纏っている雰囲気から魔法使いなのは分かるけど、それ以外の情報が皆無過ぎる。


「ああ、わたしったらお姉ちゃんの妹になるのに名前を名乗っていなかったわ」


 彼女は綺麗なカーテシーをしながら名乗る。


「わたしはアシュリー・ヘイル。九言衆の一人よ」


 アシュリー・ヘイル、あの……アシュリー・ヘイル!?

 侯爵級魔法使い一族全員を10年間傀儡にした上で殺害した偽装家族事件の犯人。

 収監されているはずなのに、何でこの場所に……

 でも、やっと分かった。

 私をお姉ちゃんにさせたがる行動の意味が。

 確か昔、読んだ調書にはアシュリーは家族に対して異常レベルの執着を持っていると記述されていたはず。

 その経緯は覚えていないが、家族となった以上は彼女も傷付けはしないはずだし、今、魔法使いと戦えば私は間違いなく負ける。

 家族になれば、アシュリーが他の九言衆からも守ってくれるはず、私の仕事は九言衆に潜り込み、魔法が使えない現状の理由と解除する方法を知ること。


「分かったわ。あなたの家族になってあげる」


 アシュリーは嬉しそうな表情を見せる。


「わぁい、やった! 嬉しい、この島に来てからほんと良いことばかりだ」


 そうアシュリーは私に近づいてくる。

 私は殺人犯が近づいて来る事に若干、恐怖しながらも受け入れる。


「思っていた通り。お姉さん、良い匂いする……コーヒーの匂い?」


 アシュリーは顔を近づけ、私の匂いを嗅ぐ。


「ちょ、ちょっと嗅がないでよ」


 一瞬だが、私は恥ずかしさからアシュリーへの警戒を解いてしまった。


「イタッ……え?」


 一瞬でアシュリーは私の首筋を血が出るほど鋭く爪で引っ掻いた。

 そして傷から流れる()()()()()()


「ごちそうさま、お姉ちゃん」


 そう言いながらまた血を一滴指に取り、距離を取った。


「何をしているの?」


 私は慌てて、傷口を抑える。


「え……お姉ちゃんを家族にするための儀式だよ」


 儀式、魔法による契約を行おうとしている!?


「儀式なんてしなくても、あなたのお姉ちゃんになるから!」


 契約なんて結ばれたら情報収集も裏工作も出来なくなる。


「お姉ちゃんさ、口約束って信じられると思う? 信じられないよね。それに、お姉ちゃんは弓のお姉ちゃんと象のお兄ちゃんを殺したから敵だよね、敵ならなおさら信じる訳にいかないよ」


 弓のお姉ちゃん、象のお兄ちゃん……あの二人か。

 あの二人の様子はどこかおかしかった、もしかしてあの紋章がアシュリーの家族の証明であり、精神作用もあるのかもしれない。

 こうなったら、何があってもアシュリーの家族になるべきではない。

 死力を尽くして抗うしかない。


「珈琲魔術、『甘香』——エスプレッソ、濃縮」


 エスプレッソを飲み、短時間最大強化された瞬発力でアシュリーに近づく。

 私の血を奪ったってことはあれが魔法を行使するのに必要な依代、あれを取り返すか破棄すれば良い。


「抵抗するの? 良いよ。家族ってのは思春期とか反抗期を乗り越えてこそ、家族と言えるからね。それに最初は抵抗があった方が家族仲も深まるし」


 アシュリーは圧倒的な魔力で強化された身体能力で軽やかに距離を取るが、油断からか動きは遅く、最大強化された私の瞬発力には及ばない。

 余裕で私は、アシュリーに迫りきる。

 そしてアシュリーの指にある血液を捨てさせようとアシュリーの腕を掴もうとするが、逆に私の手が掴まれる。


「でも、いけないな。お姉ちゃんが妹に暴力わ」


 魔力で強化されているからか、見た目以上の力で握られ手の骨が軋む


「『香淹』ッ!」


 珈李の手元に生まれたコーヒーから生まれた香りが、アシュリーを包み込むがアシュリーの警戒心が途絶えることはなかった。


「ダメだよ、遠くから見ていたからその戦術は聞かないよ、お姉ちゃん」


 姉を諭す妹のように言うアシュリーを私は鼻で笑う。


「分かっているわよ、これは香りを隠すためよ……『影滴(えいてき)』」


 一瞬だった、いつの間にか地面に溢していたコーヒーが細長い槍へと転じ、アシュリーの肩を突き刺す。


「くっ……ぅ」


 肩の痛みに腕と手が震え、私の血が指から地面に溢れ落ちる。

 私は念の為、血の上にコーヒーを被せながら説明する。


「影滴のコーヒーは通常から匂いが濃厚なのに、攻撃の瞬間はもっと濃厚な匂いになるからここまでやらないと不意打ちとして成立しないけど、成立すれば魔法使い相手でも傷を与えられる」


 アシュリーは肩を抑えながらも表情は余裕そうで、その笑みを深めた。


「フフ、お姉ちゃんがバカで良かった。どうして? わたしが勿体ぶってすぐにお姉ちゃんを家族にしなかったと思う? しなかったんじゃなくて、もう家族だったからできなかったからだよ」


「な!」


 そこで私は気付く。

 首に付けられた傷から血色の線が胸の心臓部分に集まっている事に。


「わたしの血縁魔法の『血族(フォルスキン)』は対象の血を摂取すれば、その対象を血縁に、家族に出来るの。5分後に体の支配権を、10分後に精神の支配権をわたしが得て、お姉ちゃんのことを完全完璧なわたしのお姉ちゃんにしてあげる」


 10分がタイムリミット。

 10分以内にアシュリーを殺さなければ、私の最悪な敗北が決定する。

 それだけは全力で阻止しなければならない。


「未来のお姉ちゃん、お姉ちゃんはなんて言うの?」


 私は精神を落ち着かせためのコーヒーを飲み終えると答える。


「珈 琲李。魔件局の捜査官よ」


 観光街:大通り

 珈 琲李vsアシュリー・ヘイル

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ