第15章 さよならパーティ
翌朝、メラニーの別荘の前にはまた例によって黒服の男達が数人現れて、やがて1台の高級車を迎えた。
「ごめんねミリータ、マリコ。ゆっくりお話しできればよかったんだけど、パパもママも時間がないっていうから…」
メラニーは玄関で両親の車に乗り込み、そのままドリッテ・ゲルリッツ医療センターへヨアヒム医師の診察を受けに行く様だった。
「あーあ、行っちゃったわね」
あたしとマリコは走り去る高級車を窓越しに眺めていた。
「あたし達もジェーンのとこかアーウィンたちのとこに行く?」
「いいけど、なんか黒服の男にジロジロ見られながら出るのも気まずいわよね…」
「よし、じゃ裏窓から出よう!」
「余計不審者と間違われて狙撃でもされちゃったらどうするのよ!」
「…そ、そうね…」
「…それにしても、お金持ちの人って謎よねー。」
「メラニーの両親って……もしかしてマフィアの親分?」
「まさか~!」
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ヤニック邸。
元々ヤニック氏の会社の社員の保養施設も兼ねてあるので、
いろいろなものが備わっていた。
例えば、ちょっとしたトレーニングジムとか。
そこで体力を持て余しているドノヴァンが、サンドバッグを叩いたり筋トレをやってみたりしていた。
また、パソコン作業のできる部屋もあるので、アーウィンはパソコンに向かって何やらカタカタとやっている。
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ドリッテ・ゲルリッツ医療センターの診察室。
ヨアヒム医師がメラニーの診察をしていた。
「退院して2週間か…特に変わったことはないかい?夜は眠れてる?」
メラニーに退院してからの体調を聞いていく。
「はい。食事もちゃんと食べてます。それに夜も10時には寝ています。」
「それなら大丈夫だね。何かあったらすぐ連絡してくれれば良いから。」
「はい。ありがとうございます。」
「あのう、先生…」
メラニーの父親が口を挟んだ。
「そろそろ、メラニーを連れて帰りたいのですが、可能でしょうか?」
「そうですね。ただご自宅の主治医への引き継ぎなどもありますから、今すぐという訳にもいきませんが」
「……パパ、もう帰っちゃうの?」
話を聞いていたメラニーが不安そうな顔を見せた。「じゃあ、ミリータやマリコともさよならなんだ…」
「そうだな。仕方ないが…」
「ねえパパ!私ずっとここが良い!!」
メラニーが大きな声で言った。
「まあメラニー、落ち着いて。」ヨアヒム医師が優しく語りかけた。「さっき君のパパに説明した通りだよ。何も今すぐここを離れろなんて言ってない。色々な手続きがあるんだから、君はまだあの別荘で暮らしていて大丈夫だよ」
メラニーは泣き出していた。「…ミリータとマリコと過ごしていたのが、本当に楽しかったんだね。」ヨアヒムの言葉にメラニーは黙って頷いていた。そして、その涙は止まらずに流れ続けている。
「この子は…メラニーは病気のために学校にもほとんど通えませんでした……。だからミリータさんとマリコさんがお友達になってくれたのはすごく嬉しいです。寂しいけれど、2人ともは優しい人たちなので安心しています。」
母親が娘を慰めるようにして語った。
ヨアヒムは思った。
「私がもっと早くミリータとマリコに会わせることができたらよかったんですけどね。」
ヨアヒムが呟くようにいった。
「いえ、そんなことありません。おかげさまで、メラニーもとても元気になりましたし感謝しております。」
「では診察はこれで。どうぞお大事に。」
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「そうか…メラニー帰っちゃうんだ。」
「もともとメラニーが入院中にパパとママが付き添うために、ここの別荘建てた、って言ってたからなあ」
「ってことはさ、もうこの別荘要らなくなるってこと?」
「そうなるのかな」
「んじゃ、俺たちが貰えないかなあ?」
バコッ!
「おい!グーで殴るなグーで!」
「ドノヴァン、お前ほんっっっとにバカだな!」
「お菓子かなんかあげるんじゃないんだからさあ~」
「へーいへい、すみませんねぇ。」
「謝る気ゼロだろうが。」
「だいたい、いくらすると思ってるのよ~」
「10億くらいなんじゃないの?」
「10億!?一戸建て一軒分じゃん!!!金持ち怖ぇ~!!」
「まあ、どうするかはメラニーのご両親次第だし僕たちがどうこう言っても仕方ないよ。それより…メラニーのさよならパーティでも計画した方がいいんじゃ?」
「それだ!」
「でもさあ…」
「ん?」
「ジェーンはどうしよう?」全員に沈黙が流れる。
「……それは俺も考えてなかったわ。」
「このままだとジェーンだけ仲間ハズレになっちゃうよ」」
「……そうだね…」
再び全員が考え込む。
するとアーウィンが口を開いた。
「外出許可もらえないのかな?」
「そうか、それでいけるかも!」
「よし決まりね。早速先生のとこ行ってみましょ」
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「ジェーンの外出許可?」
ヨアヒム先生は困惑していた。
「実はですね……メラニーがもうすぐ両親の家に戻るので、さよならパーティをやろうかと」
「ああ、そういうことか」
あたしの説明にヨアヒム先生も納得した。
「ただ、ジェーンも歩けるようになったとはいえ、あの別荘まで歩いて行くのはまだ無理があるからな…。車椅子は用意しておこう」
「はい、あたし達の誰かが押してあげればいいですよね?」
「そうだな。」
「良かった〜!これでみんな一緒にパーティできるね」
こうして、あたし達はメラニーのためのさよならパーティーの準備を進めることになった。
そして数日後、まず最初にジェーンを迎えに行く。
「あれ?ジェーン。その服どうしたの?」
ジェーンは白いワンピースを着ていた。
「患者用のローブだと味気ないだろうってヨアヒム先生が買ってくれて…」
「え~、いいなあ!」
「可愛いぞ!!」
「似合ってる……。うん……」
皆一斉に褒めた。
メラニーには勉強部屋で待ってもらっている。その間にあたし達は料理を準備したり、リビングを飾りつけたりしていた。
「そういえば、ジェーンはメラニーに会うの初めてだったんだよね」
「うん。そう言われてみれば…」
「病院の中で会って…ないかやっぱり。」
「そうだね。メラニーが退院した頃はまだジェーンも集中治療室にいただろうし」
そうこうしているうちに、パーティの準備は整った。
「うわあ…」
リビングに入ってきたメラニーは顔を輝かせた。
「それじゃ始めようか」
ドノヴァンが促した。
「それでは、メラニーの新しい門出を祝って…乾杯っ」
「カンパーイ」「いえーいっ」
「あ、えーとメラニーさん…どうもはじめまして」
ジェーンもメラニーと顔をあわせると、改めて挨拶をした。
「はじめまして。ミリータとマリコも『大怪我で入院してるお友達のお見舞いに行ってくる』ってよく言ってたから、話は聞いてます。」
「へぇーそうなんですねぇ~…ってミリータ、マリコ!なんか変なこと言わなかった?」
いきなりジェーンがこっちに話を振ってきて、あたしもビックリした。
「いや?いつも通り楽しい話しかしていなかったと思うわよ」
「どう変なことを言えばいいっていうのよ」
「あるでしょう⁉︎例えば、ほら、好きな人がいるとかいないとかいうアレ!まあいいわよ別に……。」
なぜか途中で勝手に諦められた。そのやりとりを聞いて、メラニーはクスクスと笑っていた。
ジェーンもヨアヒム先生という共通の話題があるからか、メラニーとだいぶ打ち解けてきたようだ。
こうしてしばらくパーティが続いた後、マリコが切り出した。
「それじゃそろそろお開きにしましょうか」
「ミリータ、マリコ、本当にありがとう」
メラニーが感謝の言葉を述べた。あたしも続ける。「ううん、お互い様だよ!」
「おーい。それじゃ片付けるぞ」
「あら、ドノヴァンが進んでそんなこと言うなんて」
「な、何だよ!俺だってそれぐらいできるぜ!?」
「おいおい、喧嘩すんなって……」
そんな感じでワイワイ騒ぎながら、あたしたちはパーティの後始末や片付けを始めた。
「そうだ、あまり遅いと病院の人心配しちゃうよ」
「そうよね」
ということで、今度はジェーンを医療センターに見送ることにした。
「なんか申し訳ないような恥ずかしいような…今日の主役はメラニーさんなのに」
車椅子に乗ったジェーンは照れていた。
「いいんですよ。ジェーンさんともいろんなお話できて楽しかったです。ありがとう」
メラニーは優しく微笑んだ。
あたし達はさらに楽しくおしゃべりしながら医療センターへ歩いていった。
「…もしかしてさ」
車椅子を押していたあたしに、ジェーンが話しかけた。
「ヨアヒム先生に治してもらった人、みんないい人になってるんじゃないかな」
「うん。あたし、なんかそういうのわかる気がする」
そうしてジェーンも無事に医療センターに送り届け、ドノヴァンとアーウィンはヤニック邸に帰って行き、その日は過ぎていった。
まお「あ、どうもー。まおでーす♪」
りお「りおでーす♪」
まお&りお「2人合わせて、根深草まお&りおでーす!」
まお「今回もいかがでしたか?」
りお「ちょっとしんみりする展開だったかなー、なんて思ったりしましたが」
まお「ちなみにこの章なんですが、『AIのべりすと文学賞』に出品した時とちょっと中身を変えております」
りお「そうそう。さよならパーティの場所、最初はドリッテ・ゲルリッツ医療センターの中庭でやってたんですよね」
まお「ヨアヒム先生が料理を披露したりと意外な一面もあって、あれはあれで捨てがたかったんだけどね〜」
りお「どっちがいいかは…あなた次第!」
まお「ちょっとちょっと、セキル○ーグじゃないんだから」
りお「あとでボツエピソードも何らかの形で公開しようかな?」
まお「うーん…まあそれはそういう機会があったら…」
りお「ということで!次回はいよいよ最終章です」
まお&りお「どうぞ、お楽しみに!」




