表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/16

第16章 新しい生活

まお「あ、どうもー。まおでーす♪」

りお「りおでーす♪」

まお&りお「2人合わせて、根深草まお&りおでーす!」

まお「さて『フィフス・ロンドンを遠く離れて』いよいよ今回が最終章になります!」

りお「こうやってみると、結構長いよね〜」

まお「お付き合いいただいた方には本当に感謝申し上げます!」

りお「最近の若い人は長い文が読めないっていうからね〜」

まお「しーっ!『若い人は』なんて言わないの!あたし達の実年齢バレバレじゃん」

りお「そもそも、こういう作者が対話形式っていうのが…」

まお「はいはい、それ以上は言わない!」

りお「そ、それでは『フィフス・ロンドンを遠く離れて』最終章、」

まお「お楽しみください!」


翌朝。

「メラニー、元気でね。」

「大丈夫。きっと向こうでもいい友達ができるよ」

「そうだね、ありがとう…」

メラニーは両親に伴われて、別荘を後にした。

そしてあたしとマリコはというと…


「来たわよ。」

結局、アーウィンとドノヴァンのいるヤニック邸にお邪魔することになった。

「おう来てくれたのか。ま、ゆっくりしてくれていいんだからな」

コーヒーを持ってきてくれていたらしいアーウィンが言った。

「この前よりは割と片付いてるようね」

マリコが周りを見回しながら言った。

「そこは『割と』じゃなくて『見違える様に』と言って欲しかったな~」

「ええ~?これは『割と』でしょ、『見違える様に』とは言えないわね~」

ドノヴァンは相変わらずいじられキャラだ。

「どうせまたすぐ散らかすだろうから、あんまり意味はないと思うけど。」

アーウィンはそう言いつつも笑っているようだ……。

====

「ところでだ。僕たちもいつまでもこうやって他人に甘えて暮らしていていいと思ってるのか」

「…いや、思わない…かも?」

「じゃ、早速今日から始めるか」アーウィンの提案を受けて、全員が賛成する。

そこでまずは家の掃除と、食料の保存場所の確認だ。

それから、家事の分担を決めたりもした。

各自が家に入る前に一度、中に荷物を置きに行く。……アーウィンって結構整理整頓とかキッチリやるタイプなんだ。

「ふっ。僕は基本、やらないだけだけどな」アーウィンが胸を張って言う。

「ちょっと待った。アーウィンは自分の作業についてはマメなのに、なぜか自分の部屋をいつも汚くしてたよね。だからよく他の人が代わりに綺麗にしてたじゃんさ」ドノヴァンが口を挟む。……(ドノヴァンめ、余計なことを言うな。こういうのをいわゆるブーメランっていうんだよ絶対。)

アーウィンは口を尖らせたまま黙らせているようだった。

ちなみに、掃除は午前中いっぱいかかった。


====

ドリッテ・ゲルリッツ医療センター、ジェーンの病室。

「…あ…あたし…(はぁはぁ)…あたし…だけど(はぁっ、はぁ)…」

ジェーンの容体が急変……したのではなく、電話を片手に何か演技しているようだった。

「…事故で…大怪我をして…治療費が……(はぁっ、はぁっ、はぁはぁ)…」


「うーん。さすが迫真の演技だなぁ」

「しっ、向こうに聞こえるでしょ」

そこへアーウィンがジェーンの持っていた電話を持つと

「ああすみません、あなたのお嬢さんが(うんぬんかんぬん)これから緊急手術をいたしますのでその代金が必要になります。これから申し上げる口座に50万イーロ振り込んでいただけますか」


「これ、あたしが集中治療室にいるときにやっとけばよかったなぁ~背後で色々音がしてるから相手も本気にするだろうし」

「でもジェーンはその時ゲルミナ語しゃべれない(ドルメッチェ・ドルメンを食べてない)から残念ながら成立しないね。それに、部屋の中には先生か看護師か、誰かしらいるからそんな怪しいことできなかっただろうよ」

アーウィンは冷静な意見を述べた。

「うーんやっぱり駄目かぁ」

「それに、今こうして元気になってるから何とでも言えるけど、あの時はそんなことやれるような状態じゃなかっただろう?ひと言ふた事話すのすら本当に辛そうだったし」

「うん…それは確かに…」

「マリコから聞いたんだけど、熱が下がらなくてその場で緊急手術したって話じゃないか」

(いやあれは傷口をちょちょっといじってただけなんだけど(かなり痛かったけど)いつの間にそんなに話に尾ヒレが付いてたの…?)

「あとミリータが言ってたんだけど、ジェーンは手術の時に『死にたくない』と叫んで暴れまくっていたらしいじゃん。それで麻酔しようとしたら今度は『ヨアヒム先生結婚してくれ』って叫び出して大変だったとか……。」

(うー、半分当たって半分ハズれてる…。)

「あ、俺も聞いたことある。ジェーンが『私はもう死ぬんだ!このまま死んじゃうんだ!』とわめいたら、ヨアヒム先生が『大丈夫だよ~』と笑顔で言い続けて、最後にヨアヒム先生に手を握られてなんか安心した顔して寝ちゃったって」

(ドノヴァン、何でそこは空気読んで乗っかってくるの…?)

「あはは……ま、まあ先生が手を握ってくれたのはよくありました…け…ど……」

ジェーンは顔を赤らめてしどろもどろになった。マリコもアーウィンもドノヴァンもそれを見てニヤついている。

「でもその時のヨアヒム先生も面白かったわよねぇ。『治療なんだから裸を見て何が悪い』みたいなこと言ってて」

と、マリコがその時のことを思い出して笑っていた。「へぇ、どんな状況?」

するとジェーンは俯き加減になってもじもじしながら小声で答え始めた。

「えっと……まず緊急手術ってのがちょっと大袈裟で…マリコが盛りすぎてるんだけど…」

「あ、そうなの?」

「その時にローブ脱がされちゃったっていうか前をバッと開けられちゃって」さらに恥ずかしくなったのか、ジェーンはさらに声を落とした。

「それで、お腹の傷をちょちょっといじられて、結構痛かったんだけど一瞬で終わったのよ。すぐにローブも元に戻してくれたんだけどね」

「へぇ~」

「で、『裸見たんだから結婚してくれ』ってジェーンが言い出して…」

と、マリコが説明した。

「そうだったんだ~」

「……もう、この話は終わりにしてよ~!」ジェーンは真っ赤になりながら訴えた。

「まあ、それだけ命が助かった価値がある、ってことなんだろうな。ヨアヒム先生には感謝してもしきれないよ」アーウィンは冷静に、そしてやや強引にまとめた。


♪ピロロン♪

その時、ドノヴァンの端末の通知音が鳴った。

「うわっ!本当に50万イーロが来た!」

先程のジェーンの詐欺芝居で、本当にお金が振り込まれたようだ。…っていうか、いつの間に口座作ったの?

「そこはアレのアレをアレしてピャッとやってダーっとやればね」

「さすがアーウィン!そうか。最近部屋にこもってパソコンカタカタいじってばっかりだったのはそれか!」

「…でもあのパソコン、ヤニックさんのというかヤニックさんの会社のなんでしょ?後で疑われたりしない?」

「もっちろん、そこはアクセス元を二重三重に隠してるよ。その分アクセスには時間がかかるけど」

「それに端末だってヨアヒム先生の病院から借りてるのに、いつの間にかそんな魔改造してるし!」

「いいだろ?おかげでみんな別行動してても連絡も取りやすかったじゃないか」

「う、うん、まあね…」ドノヴァンの言う通り、確かに便利ではあった。


そこへいきなりヨアヒム先生が入ってきた。噂をすればなんとやら。

「他の患者が『娘が大怪我して病院に運ばれた』とか慌てていたから何かと思えば…」

「え、えーと、な、なんのことでしょうか?」

あたしもみんなも、すっとぼけるしかなかった。

「『わかりました僕が代わりに払っておきますから安心してください』って言ってその場を収めたよ」

…え、先生が?

「というわけでその50万イーロは僕のだからちゃんと返してもらうよ」

どうやら何から何までヨアヒム先生に手の内を見透かされていたらしい。

「な…なんなんだろう、この先生の掌の上で遊ばされている感じは……」ジェーンは思わず漏らした。

ヨアヒム先生はあたし達を見回すと言った。

「あのね、君たちはもうちょっと『真っ当に働く』ということをしなさい」

「は…はい」

あたし達5人は同時にうなずいて返事をした。

「それから君達は学校にも行きたまえ。まだ義務教育期間は終わっていないんだろう?」

「はぁ、それは考えていませんでした…」

学校かぁ。「あんまりいい思い出がないのよね~」

フィフス・ロンドンの臨時政府によって半ば強制的に学校に入れられたのはいいんだけど…

「ああ、ブルー・アーミーのことね」マリコが言った。

「あの3人が地球から転校してきたときはすごい盛り上がったんだよなぁ」ドノヴァンも懐かしげに言う。

「一体どうしたんだ?その地球から来たという3人組に何かされたのか?」ヨアヒム先生も興味を持ったようだ。

「…いや、何かされたんじゃなくて、何かしたんですよ…」アーウィンがちょっとバツが悪そうに言った。「ほう、興味深いな。話を聞かせてくれないか」

「その3人から…いや正確にはその3人のものじゃないのか…そのう…」

「どうしたドノヴァン、やけに歯切れが悪いな」

「盗んじゃったんですよ、アングローン・ゴールドを」マリコがため息混じりに言った。

「……………」

ヨアヒム先生はしばらく固まっていた。「な、なんだって?…え、ええと、こっちでも大々的にニュースになっていたな。アングローン・ゴールドが盗まれたという話は。あれは結局犯人が捕まらずに迷宮入りしたとも聞く。そ…それがまさか君たちが??」

「はい……」ドノヴァンはしょんぼりしている。

「さすがにこれは冗談じゃ済まないぞ」ヨアヒム先生の声は震えている。

「申し訳ありません!でもこれしか方法がなかったんです~!」アーウィンは泣きながら許しを乞うた。もちろん演技である。

「ふむ……」ヨアヒム先生はまだ考え込んでいる。

しばらくして先生は口を開いた。

「わかった。とにかく今はそれでよしとする」

とりあえずお咎めなしということになったようだ。「だが次はもっとうまくやることだ。泥棒稼業はバレたらそれまでだ。」

そうだ、そもそもこんなことしちゃいけないなんてことは言われなくてもわかっている。それでも他に手はなかったのだ。今までだって…。

「さて、僕は他の患者の診察があるからこれで失礼するよ。」

そういうとヨアヒム先生は病室から出ていった。

「なんか先生、怒るというより呆れてるみたいな感じだったわね」マリコが呟く。

「まあ、あたしたちのことも心配してくれてるみたいだけど」と、ジェーン。

「それはありえるかもって思ってるけど、やっぱり怖いものはあるかな」あたしは正直に言った。

「そもそも先生だって怪しいこと色々やってるじゃないか」ドノヴァンの言葉で全員笑ってしまった。

ひとしきり笑うと、「さて、次の作戦を練らなきゃねえ」アーウィンがベッドの上に胡座を組んで言った。「今度はもっと大金を狙うべきかも知れない」

「…その前にさぁ、やっぱりさっきの50万イーロはちゃんと先生に返しとこ…」あたしも真面目なこと考えてみたりした。

====

それから一週間ほどが経ち、ヨアヒム先生があたし達をジェーンの病室に呼び寄せて話した。

「学校の話なんだが」

「…はい?」

「この街にある全寮制の学校に通ってもらう。フィフス・ロンドンを始めとしたコスモウェルスからの難民のために作られた学校だから、環境や言語もコスモウェルスのものに合わせてある。まさか毎日チョコレートを食べて暮らすわけにもいかないだろう?それに全寮制だから住む場所の問題も解決だ」先生はそう言ってニッコリと笑った。

「ありがとうございます!」と、あたし達は声を合わせて頭を下げた。

「フィフス・ロンドンに戻った方がいいんじゃないかとも思ったんだが、君たちの話を聞く限り、向こうでいろいろやらかしているようだし…」

「はい……」あたし達はちょっとバツが悪い。

「とにかく、君たちがここにとどまるにしても、今後フィフス・ロンドンに戻るにしても、僕が手を回しておく」

……え!?あたし達は顔を見合わせた。

「どういう意味です、それ」ドノヴァンが再び質問をした。

「…君たち、このゲルミナ連邦の元首は誰か知ってるか?」ヨアヒム先生は逆に訊き返した。

「首相じゃないの、確か」と、マリコ。

「首相⁇え?知らない。」

「おい、馬鹿ドノヴァン、ちゃんと覚えとけよ」

アーウィンが端末を見せた。(あんたも慌てて検索したんじゃないかしら?)

「コンラート・ベーナー首相、だって。結構若い人だね」

ん?どこかで見たような……

コンラート・ベーナー…ベーナー…

--こんにちは。メラニー・ベーナーです。--

「あーーーーーー!」

「ま、まさかメラニーの…⁉︎」

「う…うううん…だったらメラニーの両親が留守がちだったの、なんだか納得した…」

「あ、あとさ、メラニーってやたらニュース番組ばっかり見てたじゃない?最初はなんか真面目な子なんだなーって思ってたけど……」

「ニュース見てたら首相のことは必ず出てくるからね…」

「ヨ、ヨアヒム先生、まさか首相の娘さんを手術してたなんて…」

あたし達はもう驚くしかなかった。そうか。両親が来る度に現れてた黒服の男たち、あれは首相付きのSPだったのか。

「まあそう言うことだ。だから何かあったら口を聞いておく。僕は首相にとっては娘を救ってくれた恩人だからな」

ヨアヒム先生はニヤリと笑った。

「すごいような…怖いような…」

「君たちはマーサ王女とも友達のように接していたというじゃないか。だったら首相の娘くらい簡単だろう?」

「ってことはさぁ、首相から法外な治療費を取ってたってことよね…」

「あたしの治療費、ゲルミナの首相が払っていたようなものなの…?」

「あ、あのう、それって政治スキャンダルとかになりませんよね…?」

「君たちがそこまで心配しなくてもいいだろう。」

狼狽えるあたし達に反して、ヨアヒム先生は冷静だった。

「僕が政財界にも繋がりを持っていることは承知だと思う」と続ける。

「ああ、なんかお金持ちのパーティとかありましたもんね」

例のマリコがドクターJになりすまして参加したあれだ。

「だから今回の話は秘密裏で済ませる。あ、メラニーのことも黙っていてくれ。安全上の理由から、首相は自分に娘がいることは公表していないんだ。」

「は、はあい…」

あたし達はヨアヒム先生のすごさに改めて驚きつつ、同時に身近で凄い権力を持った人の手助けを得たことで安心感を覚えた。

「それにしても君たちのいろいろな計画には正直驚かされたよ」

ヨアヒム医師はいつも通り淡々としていた。

「でも、どうしてそこまでしてあたし達に…?」

マリコはまだ理解できないようだった。勿論あたしもだけど。

「あぁ、それは…………」ヨアヒム先生は少し間を置いて、

「その方が面白いからだよ」

と、ニヤリと笑った。

「先生も、相当のワルですよね~」ジェーンが言った。

「まあ、否定はできない」

ヨアヒム医師は苦笑いしながら頭をかいていた。


====

「アーリッシュ先生、何だかあの子達の親みたいですよね」

看護師のアメリーが笑っていた。

「ははは……そんなつもりじゃなかったんだけどな」ヨアヒム医師はそう言うしかなかった。

ヨアヒム医師としてはジェーンやミリータ達を危険な目にあわせたくはなかったのだが……。むしろ彼らは想像を上回るほどの危機を乗り越えてきている。それならいっそこのまま彼らに活躍してもらう方がいいかもしれないと思った。今度彼らがどんなことを仕掛けてくるのか楽しみになってきてしまう程に、ヨアヒム医師の心の中に芽生えた"好奇心という名の小さな悪魔"はその勢いを増してきつつあった。無謀で向こう見ずなことをして怪我をするくらいならまだ構わないと思う反面、彼らが自分を頼ってくれることが嬉しかったりもする。

(子供を持つなんて考えたことも無かったけど、案外こういう気持ちなのかな?)

ヨアヒム医師は思いに耽りながら書類にサインをしていた。それはミリータ達5人の学校への編入申請書だった。

「ふう…休憩がてら気晴らしに外へ出かけてくるよ。フィリップ、マヌエル、あとは任せた。」

「はい。どうぞごゆっくり。」


「やあヨアヒム君」

ヤニック氏がヨアヒム医師を出迎えるかのように、出口に立っていた。

「ああヤニックさん。お会いしようと思っていたところでしたよ」

「そう来ると思っていた。例の件だろう?」

「はい。セカンダリー・スクールの手配や手続き、ありがとうございます」

「気にしないでくれ、私の方も慈善事業の一環としてやらせてもらっているからね」

「しかしヤニックさんには本当に驚かされます。まさか難民向けの学校をポンと建ててしまうとは…」

「まあ、コスモウェルスからの難民は何もあの子たちに始まったことじゃなかったから、いずれはやろうと思っていたことには変わりない。それに、あの子達を変に特別扱いしないという点からもいいんじゃないかと」

「そうですね。」

2人はそれから雑談を交えつつ、中庭に出ていった。

====

「あ、ヨアヒム先生だ」

「ヤニックのおっさんもいるじゃん」

あたし達はジェーンを連れて中庭を散歩していたところだった。

「やあ君達」ヨアヒム先生が声を掛けた。

「退院する前にいろいろ見ておこうかなって思って」

と、ジェーン。

「そうか。それはいいね。」

「まだなんだか信じられないんですよね…こうして歩けるようになってるのが」

「そうだな…」

「全くだよなぁ。」

あたし達は初めてヨアヒム先生に連れられて、ジェーンと再会した時のことを思い出していた。集中治療室に横たわっているジェーンを見て、本当に助かるのかと不安にもなったんだっけ。でもこうして元気に話してる姿を見てると、やっぱり安心する。

「ここから見て向こう側が救急搬送口。ジェーンは最初あそこに運ばれてきたんだ。」

ヨアヒム先生も当時の様子を振り返っていた。「治療した僕本人が言うのも変な話だが、あそこに心肺停止状態で運び込まれてから、よくここまで回復したと思うよ」

「うわあ…」

「で、あの窓のさらに奥の方に、手術室と集中治療室がある」

「ちょっと前まで、ジェーンはあそこにいたんだよなあ…」と、アーウィン。

「なんかもう遠い昔のことのような気がするね。」

マリコはしみじみと呟くように言う。

「今にして考えてみると、ほんとあっという間だったもんな。」と、ドノヴァン。

「いや、ジェーン本人にしてみたら大変な毎日だったろう。」と、ヨアヒム先生。

「確かに……。」と、あたし。「私達にとってはたったの数日でも、ジェーンからしたら一年くらいに感じられてもおかしくないですよね。」

「…うん。特に最初の頃はみんなと会えるのかもわからなかったから…」と、ジェーン。

「そういえばそうだよな。僕もジェーンはもう死んじゃったんだ、なんて諦めかけてたし」と、アーウィン。

「だからあの時『ジェーンはどこかで生きてる』って信じてて良かったよ」と、ドノヴァン。

ジェーンはもう一度、集中治療室のあるあたりを見つめて

「…今あそこにいる人たちも、あたしみたいに元気になるといいなあ」

と、呟いた。

「それは先生にも頑張ってもらわないと」と、マリコ。

「確かにそれは言えてるね」

ヨアヒム先生が照れ笑いをした。そしてみんなで大笑いした。

「じゃあそろそろ行こうか」

と、あたし達はジェーンの部屋に戻ろうとした。とその時、ジェーンがヨアヒム先生の方を振り返った。

「あー先生、あたしにはいつご馳走してくれるんですか?もうすぐ退院できるし、何食べても大丈夫って言ってたじゃないですか」

「…そ、そうだったなジェーン…」

やっぱりジェーンは自分抜きであたし達がヨアヒム先生にご馳走されたこと、まだ根に持ってたらしい。

ヨアヒム先生はあの時、あたし達がジェーンと同じ仲間だと言うことも知らなかったし、何よりもジェーンは集中治療室にいたから、仕方ないとは思うんだけどね~。

「わかった。それなら明日の昼ごろにでも」

「やった!」と、喜んだのはなぜかドノヴァン。

「いや、あくまでも招待するのはジェーンだけだよ」

「ちぇーっ…」

「僕たちはヨアヒム先生と初めて会った時に散々ご馳走になっただろ?だからだよ。」

アーウィンの説明で、ドノヴァンも納得した。

「しょうがないなー。じゃ、俺たちは俺たちでどっか行こうぜ」

「そうね、資金もたっぷりあるし~」

そう言うマリコの手にあったもの、それはヨアヒム先生のお財布だった。

「!いつの間に‼︎」

ヨアヒム先生は今までにないほどに狼狽えた表情を見せていた。

さり気なくマリコはいつぞやのリベンジを果たしていたのだ。そう。あたし達がヨアヒム先生と出会ったのは、マリコがヨアヒム先生の財布をスリ取ろうとしたことがきっかけだったっけ。

「君達って本当、悪いことをしている自覚はあるのかい?」

「ありまーす!」

あたし達はあっけらかんと返答した。

「と、とにかくそれを返しなさい!」

ドリッテ・ゲルリッツ医療センターの中庭で、ヨアヒム先生とあたし達の追いかけっこが始まった。

「はっはっは。本当に元気のいい子達だなあ」

「ヤニックさん!見てないで何とかしてくださいよ!」

「うわー、この免許証の写真、顔が凶悪すぎ!」

アーウィンとドノヴァンは既に財布の中身まで物色している。

「こら!そんなところまで見るんじゃない!」

そんなヨアヒム先生の顔は、どこか笑ってもいるようだった。

「こっちですよー、あははは」

「待て!」

「おーいこっちにパス!」

「はいよー」

「こらーー!」


あまり後先のことを考えずに、このドリッテ・ゲルリッツにやってきたあたし達だけど、ヨアヒム先生との出会いがなかったら、あたし達の運命も間違いなく大きく変わっていたことだろう。ジェーンの事もあるし、ヨアヒム先生にはいくら感謝してもし足りないくらいだと思う。これから何かの形で恩返ししていきたいな。


「はいよ、ジェーン!」

あたし達でパスしあったお財布はジェーンに渡された。

「はい、先生どうぞ」

そうしてお財布はヨアヒム先生の手に戻った…が、

「だから、お札を抜き取るんじゃないお札を!」

「あー、バレちゃいました?あはははは」

「いや先生、こんな大金を現金で持ってるのは危険ですよ。だから僕たちが預かっ」

「何を言うか!」

「あははははははは」

あたし達 5人とヨアヒム先生との鬼ごっこは、まだまだしばらく続きそうだ。


さあて、あたし達、これからもこのドリッテ・ゲルリッツで大暴れしちゃおうかな。


--終劇--

ミリータ「さて『アングローン底辺団シリーズ』第3作目・『フィフス・ロンドンから遠く離れて』いかがでしたか?」

ジェーン「もう、今回のあたしったらほとんど病院で寝てるだけで面白くない!」

ドノヴァン「俺だって自慢の怪力の出番がなかったんだぞ」

ミリータ「いやいや、病院の前で不審者締め上げたりとかしてたじゃない」

アーウィン「持ち味は十分に出してたと思うぞ」

ドノヴァン「いーや、俺は納得がいかないぞ!美女やイケメンに変身して活躍していた奴に俺の悲しみがわかってたまるか!」

マリコ「でも、結局『ドルメッチェ・ドルメン』ってなんだったのかしらね……?」

アーウィン「ああ。それは僕にもわからないけど……」

ジェーン「作者の手抜きなんじゃなーいの?」

ミリータ「ちょっと、その言い方はないでしょう? 作者さんに失礼よ」

ドノヴァン「そうだよそうだよ。今度は病院送りじゃ済まない扱い受けるかもしれないぞ」

ジェーン「え……そんな…。い、いきなり殺されるのとかは嫌よ!」

ミリータ「殺されはしないと思うけど、きっとじわじわと…」

ジェーン「いやああああ!」

マリコ「そ、そろそろ次回予告行きましょうか」

アーウィン「そうだね」

ドノヴァン「次回!『アングローン底辺団』Part4」

マリコ「タイトルは『セブンス・ニューヨークへ行きたいか!罰ゲームは怖くないか⁉︎』」

ドノヴァン「超絶イケメンマッチョの俺・ドノヴァンが悪党どもをバッタバッタと薙ぎ倒すぜ!」

アーウィン「ちょーっと待った。いくらなんでもそれはないだろ」

ジェーン「すいません間違えました~。次回タイトルは『やる気全開!デリシャスパーティ』です。キュートなあたし・ジェーンがゴージャスに決めるわよ♪お楽しみに!」

ドノヴァン「おい!勝手にタイトルと内容変えるなって!」

アーウィン「それに、微妙にキャラ変わってない?」

マリコ「どうしよう。もしかしてヨアヒム先生に手術されておかしくなっちゃったのかしら?」

ミリータ「え、えーとそれでは映像スタート!」


(シーン切り替え)


~次回予告~

♪テレッテー♪

ドリッテ・ゲルリッツで平和な日々を過ごすあたし達。

そこに新たな脅威が訪れる。

暗黒時空から突如現れた謎の少年はあたし達に何をもたらすのか?

フィフス・ロンドンへ再び舞い戻ったあたし達は、そこでとんでもない光景を見る事になる。

次回・『アングローン底辺団』Part4『絶叫!13日の金曜日のおとぎばなし』お楽しみに!

マリコ「みんなで力を合わせれば怖いものなしよ♪」

(シーン切り替わり)


アーウィン「…本当にこれでいいのか…?」


==


まお「あ、どうもー。まおでーす♪」

りお「りおでーす♪」

まお&りお「2人合わせて、根深草まお&りおでーす!」

まお「さて、今回のストーリーはいかがでしたか?」

りお「実は、『ミリータ達が言葉も通じない異国に密航する』『途中でジェーンがはぐれる』『ジェーンは瀕死の重傷を負う』『ドルメッチェ・ドルメンという謎のアイテム』くらいしか考えついてなかったんですよねー(汗)」

まお「それがよくここまでまとまりましたなぁと我ながら感心しております。」

りお「いや、まとまってないのと違うの?」

まお「えっ?」

りお「なんかさあ、ヨアヒム先生が目立ちすぎなんじゃないの?」

まお「あ…あははははぁ。書いているうちに思いのほかキャラが立ちすぎちゃいまして~」

りお「お陰で主人公のミリータの影がうっっすくなってるじゃないの!」

まお「あ~、なんならヨアヒム先生はヨアヒム先生でスピンオフ書こうか?」

りお「解決になってない!」

まお「でもさぁ、病院の場面とかちゃんと表現しようと思って医学書サイトとか病院の治療に関する案内とか色々ハマり込むように見ちゃったのよ。今って『何ちゃら警察』とかうるさいじゃない?」

りお「まぁ、医学漫画の超レジェンドオブレジェンド『ブ○ック・ジ○ック』だってかなり医療関係者のツッコミが激しくて流石の手○治虫大先生もブチ切れたっていうからねぇ」

まお「そんなわけで『ジェーンが病院に運ばれる』ってシーンにしても、どんな事をされるのかなーとか、どんな風に手術とかするのかなーとかいろいろ調べたら余計いろいろと書き込むようになっちゃって…」

りお「……っていうかさあ、これって結局ははるか未来の話なんだし、その割にはすっごいアナログなことしかやってないように見えるんじゃない?」

まお「あ…言われてみると確かに…で、でもなんとかまとめようと頑張ったんだから、そこは認めて!」

りお「はぁ……。もういいや。じゃ、最後に宣伝よろしくね」

まお「はい。ということで次回は『セブンス・ニューヨークへ行きたいか!罰ゲームは怖くないか!?』だよ。ミリータ達5人の運命はいかに!?」

りお「…え?本当にそのタイトルで行くの?」

まお「うん。そうだけど」

りお「……」

まお「……」

りお「ダメだこいつ早く何とかしないと……」

まお「え、えーっと。それではみなさんまた次回お会いしましょー!」

りお「ばいばーい♪」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ