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第13章 フェイク・ニュース

ツヴァイテ・ザールブリュッケン総合病院。

ヨアヒム医師には院内の特別室のひとつをあてがわれていた。万が一の事態にすぐに対応できるようにというのはもちろん、外部の人間との接触を避けるためでもあった。


--ヨアヒム先生。僕からもひとつ提案があるのですが--


アーウィンからメッセージが入っていた。ヨアヒム医師はさらにメッセージを読み進めると、クスッと苦笑いを浮かべた。そしてすぐに


--レーデル先生。夜分に失礼いたします。明日、バウゼ氏とプーシュマン氏を呼んでいただけますか--


と、メッセージを送った。バウゼ氏とプーシュマン氏は、表向きでは患者の家族を装っているが、実はトビアス・Mの事務所の社長とマネージャーである。

====

「社長、マネージャー、これを見ていただけますか」

ヨアヒム医師はモニターに映像を映し出した。

「…こ、これはどういうことだ?」

「これで、より秘密裏にマーリング氏の治療を続けることができます」

「おお……」

「しかしこれはどうやって?」

「詳しい説明は今は避けますが、私の信頼できる筋が製作したものなので、ご安心を。この映像はお二人にお渡ししておきます。自由に使っていただいて構いません。」

「わかりました。早速明日、いや今日からでも」

「はい」

====

あたしとマリコは数日ぶりにメラニーの別荘に戻ってきた。

「ごめんねメラニー。」

「やっぱりご両親と一緒のところに、赤の他人のあたし達がいるのも気まずくってさあ…」

「いいの、気にしないで。私の方こそ気遣いできなくてごめんなさい」

「そうだ。ママがケーキを買っておいてくれたの。ミリータとマリコの分まで」

「うわあ!」

「食べよう食べよう!」

「パパとママは昨日で帰っちゃったけど、またすぐに来ると思う。退院してからの経過を今度先生に診てもらうから。そしたら、パパとママに会ってくれる?」

「そうね、ケーキのお礼も言わないとだし」


その時、テレビのニュース番組には、病院のベッドから手を振る青年の映像が流れていた。その青年は…


「みなさん、トビアス・Mです。沢山の人に心配をかけて申し訳ありません。今はまだこのように入院中ですが、活動再開まで待っていてください。」


他にも「病室のソファーでくつろぐトビアス・M」や、「窓から手を振るトビアス・M」の写真が公開されていた。

「…活動休止期間中にこのように映像や写真が公開されたことで、ファンは『元気そうでよかった!』『焦らずゆっくり治してください』などと喜びのコメントを寄せております。」

と、アナウンサーが伝えていた。


……が、もちろん、これはみんなアーウィンの変装なのだ。


「映像が一番苦労したよ。僕が話すだけだと声も違うし、何よりもゲルミナ語の発音がネイティブじゃない。だから実際のトビアス・Mの声を色々なところから集めて合成をして…」

「うー、わかったわかった。」

そんな感じで、アーウィンが蘊蓄を傾けていたのを思い出した。


映像には続きがあった。

「…あともうひとつ。病院関係者の皆さんは非常に僕に良くしていただいています。おかげで回復も早くなりそうです。だから、病院に迷惑をかけるようなことは決してしないでください。これは僕、トビアス・Mからの心からのお願いです」


「へぇ、ちゃんと締めるところは締めてるのね」

「まあ、どこまで抑止力あるかはわからないけど、そこは影響力あるスターだからね」

アーウィンとドノヴァンも、ジェーンの病室で一緒にそのニュースを見ていた。

 

アーウィンは、こうして作った映像や写真をヨアヒム先生に送り、これでトビアス・Mの消息を偽装できないかと提案したのだった。

斯くしてヨアヒム先生からトビアス・Mのマネージャーにこの映像が渡り、公式発表として広まったというわけ。


「ところでアーウィン、いい加減その変装取ったらどうだ?」

「いや取るけどさ、その前に」

アーウィンは窓際に立って何やらポーズをとってみた。

「…もしかしたら誰か嗅ぎつけたやつが盗撮してるかもしれないだろ?」

「え?ちょっとー、ここはあたしの部屋なんだから盗撮は困るっ!」


「それはそうと…」

変装を脱ぎ始めたアーウィンを尻目に、ドノヴァンは端末のメッセンジャーを見つめていた。

--ただいま不在にしています--

「ヨアヒム先生、今日はずっと自動応答モードだな」

「…もしかしたら、始まってるのかもしれないな」

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