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開港場、怪異往来につき  作者: 古潭兄弟
第02章 壺は空になる
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終幕 初めての客

それから、数日が過ぎた。


二人は新しい家へ移り、いつ頼みが来てもよいようにしていた。


だが、客はまだ一人も来なかった。


そんな昼下がり、戸口の外から小さな足音が聞こえた。


ぺた、ぺた、と近づいてくる。


宗吉が顔を上げると、開いた戸の脇から小さな頭が覗いた。


「あ」


後追い小僧だった。


後追い小僧は宗吉を見つけると、ためらいもなく中へ入ってきた。


「お前、どうしたんだ」


後追い小僧は宗吉の前まで来て、見上げた。


「ねずみはきょうもげんき」


「そうか」


「ねこにたべられたけどげんき」


宗吉は目を瞬いた。


「食べられたのにか?」


後追い小僧は、こくりと頷いた。


何を言っているのか、やはりよく分からない。


それでも元気だと言うのだから、元気なのだろう。


後追い小僧が宗吉の膝元へ寄ってくる。


宗吉はかがみ込み、その小さな背中を上から下へゆっくり撫でた。


後追い小僧は気持ちよさそうに目を細めた。


「ずいぶん可愛がるんですね」


弥一が言った。


宗吉は後追い小僧の背中を撫でながら、弥一を見る。


「向こうから懐いてきたんだ。邪険にもできねえだろ」


「俺には、そんなに優しくしてくれないでしょう」


「お前は子供じゃねえだろ」


「そういう問題ですかね」


弥一は笑っている。


けれど、どことなく面白くなさそうだった。


「何だよ」


「別に」


「なんでそんな顔してんだよ」


「なんでもないですって」


後追い小僧が弥一を見上げた。


「ねこおこってる」


宗吉は吹き出した。


「ほら。こいつにも分かるんじゃねえか」


「怒ってませんよ」


弥一は否定したが、目は後追い小僧へ向いたままだった。


後追い小僧は宗吉にもう一度背中を撫でてもらうと、満足したらしい。


来たときと同じように、ぺたぺたと外へ出ていった。


仕事の客ではない。


ただ遊びに来ただけだった。


その日の夕方。


今度は、戸を叩く音がした。


宗吉が戸を開ける。


立っていたのは、飯屋の滝だった。


「滝さん?」


滝は宗吉と、その後ろにいる弥一を交互に見た。


「変なものなら、あんたたちに頼めっていう噂を聞いてね」


宗吉は弥一を見る。


弥一も宗吉を見て、笑った。


宗吉は客用の場所を示した。


「とりあえず、入ってくれ」


滝が初めて、客のために用意された場所へ腰を下ろす。


宗吉は真っ白な帳面を引き寄せた。


二人の仕事に、最初の客がやってきた。


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