第2部8話 守るために、全てを
麗華の周りを包み込む黒いヒカリがさらに濃くなる。
空気が張りつめていく。
蒼真と蓮は 剣を構えた。
そして、暖かいヒカリが2人を包み込んでいく。
「……行くぞ」
蓮が呟くと蒼真も同時に踏み込んでいく。
速い。光に包まれている2人の動きは陽葵の目では追えなかった。
だが、2人の攻撃を麗華は容易く受ける。
ドカァァンっ!
と衝撃音が響き渡り地面が砕けている。
「その程度?」
「弱いわね」
麗華は微笑み、右腕を振るう。
空気がピュッと裂け、蓮の頬から血が流れた。
そして、遅れて体に衝撃が走る。
「…がっ!」
2人の体はいつの間にか宙を舞い、地面に叩き着けられていた。
「…くそっ…おい、蒼真!大丈…」
蓮はすぐに起き上がり、蒼真へ目を向ける。
…蒼真が動かない。
「蒼真ぁ!!」
陽葵が蒼真へ駆け寄っていく。
蓮も蒼真の元へ走りたかった。
だが、行けば、陽葵が巻き込まれる。
「くそったれがぁぁぁ!!!」
蓮はまっすぐに麗華へ向かって刃を振り下ろしていく。
連撃を繰り出すが全て受けられている。
圧倒的なこの力の差はなんだ?
それでも諦めず、蓮は刃を振るう。
ピタっと麗華の手によって刃が捕まれ、動かない。
「それが限界?」
麗華の言葉が聞こえた瞬間、蓮の体は宙に浮いていた。
だが、蓮は体制を整え、受け身をとる。
蓮はすぐに立ち上がり、大きく深呼吸をし呼吸を整えた。
そして、再び麗華へ向かっていく
守りたいもののために蓮は剣を振りかざす。
—何が起きたのか、分からない。
衝撃と共に目の前が真っ暗になった。
俺…何してんだ…。
「蒼真ぁぁ!」
陽葵の声だ。
俺は少しだけ、目を開いて陽葵の顔を見た。
ああ…泣いてんじゃん。
目を開けたことに気が付いた陽葵がハッとする。
「蒼真っ…良かった…」
死んだと思われたんだ。
涙は溢れてるけど、ほっとした表情になった。
危ないのに…傍に来てくれたんだな。
これ以上、心配かけたくない。
「…泣き虫だなぁ…」
ぽつりと呟き、俺は動かない体を無理やり動かした。
指一本、動かすだけで全身に激痛が走る。
「ダメだよ!これ以上、戦ったりなんて…!」
陽葵が起き上がろうとする俺を必死に止めようとする。
そうだよ…これ以上、戦えば結果がどうであれ、俺は死ぬだろう。
でも、何もせずに蓮の戦いを見てるなんて出来ない。
それに、守りたい。
陽葵を。…蓮も。
—守る。
そのために俺は戦うんだ。
蓮が諦めていない。
俺がここで折れて、どうする。
「陽葵…もう一度、力を貸してくれ」
俺は片膝と腕を地面につけながら何とか体をおこした。
ああ…目が霞んでる…。
前がよく、見えねぇや。
「守るためだよ」
「俺は…死にに行くんじゃない」
説得力ねぇよなっと自分でも思う。
まともに動かない体。
乱れた呼吸。
それでも、蓮が戦ってる。
俺は陽葵を見つめた。
力強く「頼むっ」と言うと、陽葵からヒカリが溢れた。
ヒカリが俺を包み込んだ。
大きく息を吸い込み、吐き出す。
まだ、動ける。
限界を超えて守れるっていいもんだな…。
「…俺、陽葵が好きだ」
返事は聞かなかった。
一言だけ伝えて、俺は蓮の元へと向かった。
俺の守りたいもんは1つじゃなくなってたんだ。
「…ぐっ…」
もう何度目だろうか、吹き飛ばされるのは。
圧倒的なこの状況…打開するにはどうしたらいい?
その時だ。
俺の隣に蒼真が立っていた。
「…え…」
だが、その姿はボロボロだ。
体もふらついている。
立っているのも、やっとじゃないのか?
「おいっ、蒼真、なにやってんだよ!」
「…何って…あの生意気なお嬢様、ぶっ倒すに決まってんだろ」
ふふんっと蒼真は強がって見せた。
こいつ…なんで、ここまでするんだ?
陽葵を守りたい気持ちは分かる。
でも…死んじまったら元も子もねぇだろ!!
「ダメだっ!!お前は下がってろ!!」
「…うっせぇ。…一撃だ。一撃で終わらせる。俺らと陽葵の力で…」
—まずい…。
また目が霞んできた。
蓮も怪我をしているし、そうとうな消耗のはずだ。
チャンスは1回だけだ。
キラキラと暖かい光が俺と蓮を包んだ。
今までのヒカリとは比べ物にならないくらい、暖かい。
「…行くぜ」
呟くと、蓮と共に走り出した。
一瞬で麗華の懐に2人で踏み込む。
そして…2人同時に麗華の心臓に刃を突き刺した。
黒いヒカリが力を失くしていくのを感じた。
いや、陽葵の、俺たち3人のヒカリに飲み込まれていく。
同時に麗華の体が倒れていく。
麗華は目を見開いていたが、地面に倒れると目を細めた。
「…守るだなんて…くだらない…」
そう呟くと、麗華は目を閉じ、動くことはなかった。
ーーー終わった。
蓮はずっと続いていた緊張が溶けたのを感じ、その場に座り込んだ。
静かだ。
何も音がしない。
勝ったんだ。




