第2部7話 背中を預けて
「蒼真っ!!」
蒼真が立っている。
良かった、無事だ。と蓮はほっと胸を撫で下ろしたが、蓮の声は蒼真に聞こえていなかった。
蒼真が走り出し、神楽坂の剣と蒼真の剣が重なる。
—ガチンッ!
「うおぉぉぉっ!」
蒼真が叫びながら、押し込んでいく。
だが、それを神楽坂は軽くあしらう。
次の瞬閣、蒼真の背後で空を裂く音がする。
「ぐっ...!」
背中に鋭い痛みが走る。
蒼真はその場に膝をついた。
「くそ…っ!」
殺られると思った瞬間、神楽坂の刃は蓮に向かう。
ビュンッと空を割く音が聞こえる。
キィンッ!と蓮が神楽坂の刃を受ける。
「…カッコつけんな。お前は膝をつくような奴じゃねぇだろ」
神楽坂の刃を押し戻しながら蓮が呟く。
「お前は…この俺とタイマンはれる唯一の男だろーがよぉぉ!!」
叫びと共に神楽坂が後方へと吹き飛ばされる。
神楽坂は地面を削りながら体勢を整える。
「へぇ…一ノ瀬の令嬢は、2人と契約してるのね」
「神楽坂、命令よ。2人を片づけなさい」
不気味な笑みを浮かべて麗華が神楽坂へ命令を下す。
—瞬間。
鈍い、黒い光が麗華から神楽坂へと流れ込む。
「おおせのままに」
ニヤッと神楽坂が笑う。
一撃、二撃、三撃と神楽坂の刃が蓮に襲いかかる。
何とか、蓮は攻撃を避けている。
だが、全てを避けきることは出来ず血も流れている。
(こいつ…力も早さとさっきと段違いだ…!)
刃を交えても吹き飛ばされると思い、
蓮は避けるだけで精一杯で攻撃を仕掛ける事ができない。
自分も1度、陽葵の力を使っているからこそ分かる。
ーーー勝てない。
その一瞬。
蓮は吹き飛ばされたと思った。
が、飛ばない。
視線の先には神楽坂の刃に向けると交わるもう1本の刃。
蒼真だ。
そのまま蒼真は間髪入れずに神楽坂へ刃を振り切る。
後方へ吹き飛ぶ神楽坂。
すぐに追いかける蒼真は蓮に視線を一瞬向ける。
「ばーか」と「陽葵、来てる」とだけ告げた。
後方を見る、きらきらと輝く、黄金のヒカリに包まれた陽葵がいた。
前方を行く蒼真も同じ光に包まれている。
「終わりだ」
地面に膝をついている神楽坂へ冷たい視線を蒼真は向けた。
「…それはあなたです」
神楽坂は立ち上がり蒼真へと切りかかった。
だが、蒼真は神楽坂の攻撃をなんなくかわすと、そのまま神楽坂を切り裂いた。
ーードサッ…。
地面に倒れこんだ神楽坂。
「…なぜ…私が負ける?」
「1人じゃねぇからだよ」
「覚悟もなんもねぇお前なんか、俺たちに敵うわけねぇんだよ」
蒼真の言葉が終わると神楽坂は目を閉じ、動くことはなかった。
蓮が戦っている。
行かなきゃ…なのに体がいうことを聞かない。
立ち上がろうとすると骨が軋む。
「…くっそ…ッ、休んでる場合じゃねぇんだよっ!」
「蒼真」
無理やり立ち上がろうとすると、優しい声が耳元で聞こえた。
「陽葵…お前、なんで!危ないから戻れよ!」
下を向いていた顔をあげると、そこには強い眼をする陽葵がいる。
何かを決意したような眼だ。
「蓮にも戻れっていわれたよ。でもね…守られてるだけは嫌だよ」
その瞬間、陽葵からヒカリが溢れ、蒼真に流れ込んでいく。
「私も守る」
「蒼真も、蓮も」
流れ込んできたヒカリが体から痛みを取り去っていく。
ー動く。
体が軽い、痛みがない。
これなら、いける。
蒼真は立ち上がり、陽葵を見つめる。
陽葵は何も言わず、ただ頷いた。
蒼真も頷き返すと剣を握りしめ、蓮の元へと走り出した。
「…つまらないわ」
沈黙を貫いていた麗華が口を開き、羽織っていたコートを脱ぎ去る。
「あなたの覚悟が如何ほどのものか、見せて頂戴」
麗華の顔は月明かりに照らされながら、余裕の笑みを浮かべていた。




