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110:神父とブラック任務

■休暇はどこへ《POV:ソフィア》


 ずらりと並んだモニター画面。

 その前に立つ捜査員たちは皆、険しい顔でモニターに映る防犯カメラの映像へと視線を釘付けにしていた。


 ここは県警本部の一室。

 張り詰めた空気が肌に刺さるようだ。


 捜査員たちは地下駐車場で大量の自動車を破壊した男たちと、謎の外国人女性を見つけるため、事件現場周辺の防犯カメラの映像を丹念に確認している。


 ソフィアは部屋の片隅に腰を下ろし、弁当の容器を片付けながら、その光景をじっと見つめていた。

 椅子の背もたれに寄りかかると、声を荒げる鏑木警部の姿が目に入った。


「いいか! 奴らは絶対にこの街に潜んでる!」

 鏑木警部が机を”ドン”と拳で叩いた。

 ソフィアは思わず飛び上がる。


「どんな手を使っても構わん!必ずこのバイクの二人組を見つけ出して、連れてこい!」

 怒鳴り声が部屋中に響く。捜査員たちの動きが一瞬止まり、全員が彼の方に注目した。


「特にハンドル握ってる野郎だ! こいつは西港西海岸で血の雨を降らせたとんでもねえ凶悪犯だ! 絶対にしょっぴいて、法廷でそのツケを払わせてやるんだ!」

 鏑木警部が”バンバン”とホワイトボードを叩いて檄を飛ばす。


「ひぃぃ……」

 ソフィアは思わず身を縮めた。


(怖すぎる…… 早くホテルに戻ってテレビを見たいのに。そもそもアニメの聖地巡礼のために来たはずなのに、休暇はどこへ行ったのよ?)

 ソフィアは横目でボルギ神父を睨むが――

 神父は彼女の不満など一切気づかないまま、険しい顔でモニターを凝視している。

 しばらくして、ふいに立ち上がり、ソフィアの隣に腰を下ろした。


「ソフィア」

「はっ、はいっ!」

「飯は食ったか?」

「はい、いま食べ終わりました」


(や、やばい。神父様、機嫌が悪そう…… こんな時に『休みたい』なんて言ったら絶対ダメ! もしそんなこと、シスター・シャーリーに知られたら…… ひっ、ひぃぃぃぃ!!)


「ソフィア、確かなんだろうな? 高原鈴は、例の妖気を出していなかったんだな?」

 ボルギ神父の視線が真剣だ。

 ソフィアは小さく息を整え、こくりと頷いた。


「はい、神父様。高原鈴さんの周囲には、妖気の色は見えませんでした」

 ボルギ神父は短く息を吐き、再びモニターへ視線を戻す。

 そして、画面の一点を指し示しながら言った。


「では、あの映像に映っている女はどうなんだ、ソフィア?」

 モニターには駐車場に立つ白人女性の姿が映し出されていた。


「神父様、ご存じかと思いますが、映像では妖気の色は見えません。あの女性、何か不審な点でもあったんですか?」

 ボルギ神父は腕を組み、険しい表情で画面を睨む。


「あの自販機の丸い穴を見ただろ? 俺はどうしても、この女性の仕業だとしか思えないんだ」

 ソフィアはその言葉に少し驚き、目を見開く。


「ど、どうやってですか?」

「それはまだわからない。だが、こんな奇妙なことは初めてだ。ヴァンパイアを相手にするのも初めてだし、しかもそれが悪魔と同じ時期、同じ場所に現れたなんて、俺の知る限り記録にも残ってない。加えて、バイクに乗ってモノを吹き飛ばすような奴まで現れやがった。正直、完全にお手上げだ」


(ボルギ神父がこんなに弱気なの、初めて見たわ…… けど私だって困っているのよ。無休で無給なんて労働条件が悪すぎるぅぅ。漫画で読んだことあるけど、確か日本には児童相談所があるはずよね? ここに相談すれば…… でもなんて相談すればいいの? “悪魔退治で毎日神父に連れ回されてます”なんて相談しても、無宗教の日本人に信じてもらえるわけないじゃない。うううぅ)


 頭を抱えていると、不意にボルギ神父が覗き込んできた。

 やたらといい笑顔だ。


「ソフィア、安心しろ。手掛かりさえ掴めれば、必ず俺が何とかしてやる。だから」

「だ、だから?」


「お前は何が何でも悪魔を見つけて来い」

「えぇっ!?」

 ボルギ神父のニヤリとした顔に、嫌な予感しかしない。


「そうすればシスター・シャーリーに、お前の活躍は漏れること無くすべてを伝えておいてやる。すべてをな、俺の言葉で」

 こ、この男…… もしサボったり、結果が出なかったら、全部シスター・シャーリーに伝える気だ。


「でも、どうやって」

「そうだな、まずは吸血鬼の下僕を名乗った、爆裂のあっくんとかいうふざけた男が最初に姿を現した西港西海岸を探してこい。護衛はつけてやる、安心しろ。がははは!」


「うううぅう…… わかりました。必ず結果を出します」

 ソフィアは死んだ魚のような目で答えた。


「いいか、ソフィア。日が沈むまでに帰ってこい。わかったか」

(……一応は、私のことを心配してるんだ。ボルギ神父)

 ソフィアはボルギ神父の目を見て頷く。


「よし、期待してるぞ。俺は信じている」

「はい、必ず期待にお応えします」

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