私情警察7 ~前編~
カラン……
「やぁやぁ、マリさん。今日もお美しいっス!」
「あら、…圭介さん」
一人の男が入ってきた。オレの後輩、圭介だ。
圭介はカウンターにスッと座る。今日はマスクをしてご登場だ。
今回もA4サイズが入る封筒で持ってきている。
「マリさん!これ、いつものっス!」
「まぁ、ありがとう…お店を閉めたら読ませていただくわ」
「へ…ヘックショイ!」
「あら?圭介さん、風邪?」
「そうみたいっス」
「ああ、だからマスクしてたのか…体調管理は社会人の基本だぞぉ?圭介ぇ!?」
オレはイヤミったらしく言ってやった。
「面目ねぇっス…。先輩がうらやましいっス…。風邪とかひかなさそうで」
「そういえば、マモルさんが風邪をひいたところ…見たことがないわね…」
「まぁな、鍛えているからな!HAHAHA!」
「あ、そういえば…むかし健康診断でもお医者さんに言われてたっス。頭以外は悪いトコはないって…」
「聞こえてんぞ!コラ!」
マリにボソっと耳打ちしていたが、オレにはぜんぶ聞こえていた。
「はい、圭介さん。ハイビスカスとローズヒップのブレンドティーをどうぞ。疲労回復に効くから…ちょっと酸っぱいかも…」
「いただきます!そういえば、もう5年くらいっスね。このお店も…」
「そうねぇ、なんとかお店もまわっているわ…」
「リフォームはまだ心配ないとして…改築なら僕に言ってくださいね!」
圭介は赤いブレンドティーをぐぐっと飲み干した。
「ブレンドティーおいしかったっス!支払いはクレジットカードで!」
ピッとカードを通して、そうしてヤツは帰っていった。
オレは玄関に清めの塩をまいた。
そして滞りなく一日が過ぎた。
時刻は夕方。オレは店じまいの準備をする…。
そしてその晩のこと…
「ふふ、圭介さんのラブレター…とても興味深いわ」
「どれ…」
アイツが持ってきた資料に目をとおす。
今回もターゲットの情報がこと細かに記載されている。
犯人のそれぞれの生い立ちや人間関係。行動パターンとその時間など…。
とはいっても、オレが覚えるのは犯人の顔とそいつの出現場所の二つだ。
どうせ殺すんだ。たくさん覚えても意味はない。
…と思っていたら、今回の外道はボクシング経験者と記載があった。
…少し警戒する必要があるかな。
(まぁ、アマチュアなら楽勝だと思うが…。被害者は70代の女性か…)
今回のターゲットは悪徳リフォーム業者だ。悪徳リフォーム業者というのは、まず最初に無料点検といって家に強引に押し入る。そして「すぐに修理が必要だ」 と家主の不安を煽り、契約をせまる。初めの見積もりは安価でも、「追加工事が必要だ」などとなにかと理由を付け、価格を吊り上げていくのが一般的な手口と言われている。なりすましも一辺倒ではなく、ガス会社や電力会社の関係者、はたまた外壁塗装やバリアフリー工事、シロアリ駆除など多岐にわたる。悪質なものになると家主のスキを見て自分たちで家を壊したり、キズをつけたりするのもいるらしい。とんだクズ集団だ。
今回は老夫婦が被害にあったようだ。
(将来、うちも気を付けるか…)
そしてその日の夜、10時ごろ…。
コン…コン…コン…
店の裏口から一人の中年女性が入ってきた。




