私情警察4 ~前編~
カラン……
「やぁやぁ、マリさん。今日もお美しいっス!」
「まぁ、どうも…圭介さん」
一人の男が入ってきた。オレの後輩、圭介だ。
オレは裏にいたが…声でわかってしまう…。
たぶん、気配でわかる。ドアの開け方でわかる。
「マリさん!これ、いつものっス!」
「あらあら、今回は花柄の封筒? これって…」
「今回も深い意味はねぇっス!でも好みの花を知りたいっス!」
「そうね、…サクラ、フリージア、赤いバラ…胡蝶蘭かしら…」
「フリージアっていろんな色があっていいスよね? 了解っス!」
「圭介、オレの好きな花はn…」
「あ、そういうのいいんで!」
(コ、コイツ……! 客のまえだから怒れないのをいいことに……!)
今回もA4サイズが入る封筒で持ってきている。厚みは…うすめかな。
「マリさんへの想いを文章にしたら…こんなになったっス!」
「まぁ、ありがとう…お店を閉めたら読ませていただくわ」
「すいません、マリさん。客足の件はまだ調査中で…」
「圭介さん。そんなに考えなくていいわ。時間があるときで…」
「はいっス! じゃ、僕は勤務中なんで」
「圭介、コーヒー淹れておいたぞ!飲め!そして金を払え!」
「僕はマリさんの淹れたコーヒーしか飲まねぇっス!そんじゃ!」
いちいち癇に障るヤローだ!!
あんのやろう…ここが銃社会だったら、ハチの巣にしてやるのに…!
ヤツは帰っていった。
オレは玄関に清めの塩をまいた。
そして滞りなく一日が過ぎた。 時刻は夕方。オレは店じまいの準備をする…。
そしてその晩のこと…
「ふふ、圭介さんのラブレター…とても興味深いわ」
「どれ…」
オレはアイツが持ってきた資料に目をとおす。
う~む、今回の資料も実に読みやすい。
今回のターゲットの情報がこと細かに記載されている。
小学校で習う漢字にもルビがふってある。オレに対しての配慮だろう…。
(……………小学校で習う漢字くらい読めるっつーの!)
オレは資料に目をとおした。
犯人のそれぞれの生い立ちや人間関係。行動パターンとその時間など…。
今回のターゲットは自慢の愛車でドライブするのが趣味らしい。
(被害者は70代の男性。…なるほど、ひき逃げか…)
クルマの塗装などから轢き逃げ犯はすぐ捕まるものだが…
こいつは運がよかったのかもな。
だが、すぐに後悔させてやる…。法で裁かれた方がよかったとな…!
ま、オレのターゲットになる時点で他にも余罪はたくさんあると思うが…。
お経のようにぶつぶつ言いながら、オレは資料をぜんぶ読んだ。
また、いつものように怒りで、資料の端を少々しわくちゃにしてしまった。
そしてその日の夜、10時ごろ…。
コン…コン…コン…
店の裏口から一人の老婆が入ってきた。




